記憶のなかの旋律を、もう一度ピアノへ ── 小瀬村晶、3年ぶりのソロ・ピアノ作品『Solo Piano』を発表

©︎Yusuke Abe

映画、ドラマ、アニメ、ゲーム ── さまざまな物語に寄り添い、静かに人々の記憶へと入り込んできた旋律が、たった一台のピアノへと還っていく。

作曲家/ピアニストの小瀬村晶が、ニュー・アルバム『Solo Piano』を2026年10月30日にデッカ・レコードよりリリースする。全編を新たに録音したソロ・ピアノ作品としては、2023年の『SEASONS』以来、約3年ぶりとなる。

アルバムの発表にあわせ、先行シングル第1弾「春夜、雨を喜ぶ – メインテーマ」の配信もスタート。8月21日21時にはビジュアライザーがプレミア公開される。

一台のアップライト・ピアノで、自らの音楽史を辿る

『Solo Piano』というタイトルが示す通り、本作で鳴らされるのは一台のアップライト・ピアノのみ。

収録されるのは、映画『ラーゲリより愛を込めて』『朝が来る』『少年と犬』、ドラマ『中学聖日記』、アニメ『ハニーレモンソーダ』『青のオーケストラ』など、小瀬村がこれまで音楽を手掛けてきた数々の作品から選ばれた楽曲の再解釈を中心とする全15曲。そこに新曲を交えながら、自身が特に思い入れを持つ旋律を、現在の感覚でもう一度ピアノへと立ち返らせている。

興味深いのは、本作が単なる「代表曲のピアノ・ヴァージョン」ではないことだ。映画やドラマという物語から一度離れ、装飾やアンサンブルを削ぎ落としたとき、その旋律には何が残るのか。あるいは、時間を経た作曲家自身は、かつて生み出した音楽を今どのように弾くのか。

過去の作品を“再演”するというより、自身の過去と現在をピアノによって結び直す。『Solo Piano』には、そんな静かな試みが流れている。

『中学聖日記』の旋律から始まる、15篇の記憶

その入口として選ばれたのが、先行シングル「春夜、雨を喜ぶ – メインテーマ」。TBS系ドラマ『中学聖日記』のために書かれた楽曲であり、アルバムのオープニングも飾る。

続いて同作から「ふたり、同じ景色 – 晶のテーマ」、映画『ラーゲリより愛を込めて』のメインテーマ、『朝が来る』の「Hikari ~ Satoko and Kiyokazu」、『ハニーレモンソーダ』のメインテーマ、『少年と犬』の「ふたりの約束 ~ 和正と美羽のテーマ」など、小瀬村のキャリアを辿るように楽曲が並ぶ。

後半には「Snowdrop」「Elegy」「Lament」「Mimosa, Spring Tenderness」「Angel’s Tears」「イマジン」といった楽曲も収録される。

スクリーンの向こう側にあった音楽が、ピアノだけの姿になることで、今度は聴き手自身の記憶と結びついていく。映像のために生まれた音楽が、その物語から自由になり、別の風景を描き始める ── そこも本作の大きな魅力になりそうだ。

映画、アニメ、ファッション ── 境界を越えてきた作曲家

1985年東京生まれの小瀬村晶は、2007年にソロ・アルバム『It’s On Everything』を発表し、自身のレーベル〈Schole Records〉を設立。その後、ソロ作品を発表する一方、映画、テレビドラマ、アニメ、ゲーム、舞台、CMなど、さまざまな領域で音楽を手掛けてきた。

河瀨直美監督『朝が来る』、瀬々敬久監督『ラーゲリより愛を込めて』『少年と犬』をはじめ、海外ドラマ『Love Is__』、Nintendo Switch用ゲーム『ジャックジャンヌ』、アニメ『ハニーレモンソーダ』『青のオーケストラ』、ドラマ『中学聖日記』など、その仕事は極めて幅広い。

さらにSK-II STUDIOのドキュメンタリー作品やTAKAHIROMIYASHITATheSoloist.のコレクション・ランウェイ、LA MER、LAND ROVER、L’OCCITANEなどにも楽曲を提供。スティーヴン・スピルバーグ監督『フェイブルマンズ』の米国版予告編に楽曲が使用されるなど、日本という枠を越えてその音楽は広がり続けている。

Pitchforkをはじめ海外メディアからも評価され、ジャイルス・ピーターソン、M83、デヴェンドラ・バンハートらから支持を集めてきたことも、小瀬村という音楽家の特異な立ち位置を物語っている。

世界へ広がった先で、再び最小単位の音楽へ

2022年には名門デッカ・レコードと契約し、『SEASONS』をワールドリリース。2025年にはデヴェンドラ・バンハートや畠山美由紀ら7人のヴォーカリストを迎えた『MIRAI』を発表し、2026年にはサウンド・エンジニアの井口寛とのコラボレーション作品『Reach For NAGA』をリリースするなど、その創作は近年さらに多方向へと広がっている。

だからこそ、その先で生まれた作品が『Solo Piano』であることは象徴的だ。

多数のヴォーカリストとの共演でもなく、映像とのコラボレーションでもなく、複雑なプロダクションでもない。一人の音楽家と、一台のアップライト・ピアノ。キャリアを重ね、音楽が世界へ広がれば広がるほど、その中心にあるものを確かめるように、再び最小単位の表現へと戻っていく。

『Solo Piano』で聴こえてくるのは、静けさそのものではない。その静けさの奥に蓄積された映画の風景、登場人物たちの感情、過ぎ去った季節、そして作曲家自身の時間だ。かつて誰かの物語のために生まれた旋律が、今度は小瀬村晶自身の15篇の記憶として鳴り始める。

小瀬村晶『Solo Piano』
2026年10月30日(金)リリース
デッカ・レコード
180g重量盤LP/全15曲

公式HP: https://akirakosemura.com/

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