
静けさには、こんなにも豊かな響きがある。
元・幾何学模様(Kikagaku Moyo)のTomo Katsuradaと、オランダを拠点に活動する音楽家であり、レーベル〈Melody As Truth〉主宰、さらにアンビエント・ユニットGaussian Curveのメンバーとしても知られるJonny Nash。両者による初の共作アルバム『At The Emerald Pool』のリリースを記念したジャパンツアーが、10月1日から4日にかけて開催される。
東京、鎌倉、そして長野へ ── それぞれ異なる歴史と音響を持つ空間を巡る4日間は、アルバムの世界をそのまま立ち上げるような、特別な音楽体験となりそうだ。
10年の友情が結晶化した、美しい音の対話
『At The Emerald Pool』は、約10年にわたる友情と互いへの深い敬意、そして約1年間に及ぶライブ活動の積み重ねから生まれた作品だ。
2024年、Tomo KatsuradaのソロEP『Dream Of The Egg』へのJonny Nashの参加をきっかけに、本格的な共同制作がスタート。その後、教会や寺院、劇場、コンサートホール、野外フェスティバルなど様々な場所で共演を重ねながら、ふたりだけの音楽言語を育んできた。
制作期間はわずか3日間。しかし、その短い時間の中で録音された10曲には、即興性と緻密な構成、そして演奏者同士の信頼関係が濃密に封じ込められている。
ギターが境界を失う瞬間
本作の中心にあるのは、二本のギターによる親密な対話だ。
柔らかなディレイをまとったフィンガーピッキングは幾重にも重なり合い、いつしか「どちらが弾いているのか」がわからなくなるほど自然に溶け合っていく。
そこへチェロや歌声が控えめに寄り添い、アンビエント、アシッド・フォーク、ミニマル、室内楽といった要素が境界なく交差していく。
ジャンルを横断するというよりも、最初からジャンルという概念が存在しなかったかのような、透明で開かれた音世界。静寂そのものを演奏しているかのような感覚は、ふたりだからこそ到達できた境地と言えるだろう。
会場そのものが”楽器”になるツアー
今回のツアーで選ばれた会場も実に象徴的だ。
東京・野口晴哉記念音楽室、早稲田奉仕園スコットホール、鎌倉・覚園寺 ── いずれも長い歴史と豊かな響きを宿した空間ばかり。
さらに最終日には、長野・五光牧場で開催される野外フェスティバル〈EACH STORY -THE CAMP- 2026〉への出演も決定している。
劇場、教会、寺院、そして森へ。
音楽は空間ごとに呼吸を変え、その場だけの残響を生み出していく。ライブというよりも、場所と音が互いを照らし合うインスタレーションに近い体験になるはずだ。

『At The Emerald Pool』という、終わりのない第一章
アルバム『At The Emerald Pool』は、ふたりの音楽的対話の”完成形”ではない。むしろ、これから続いていく長い旅の第一章として存在している。
希望を秘めたメロディ、慎ましく広がる余白、そして人と人との交わりからしか生まれない温度。それらは10曲を通して静かに息づき、聴き手を深い没入へと誘う。
近年、アンビエントやフォーク、ミニマル・ミュージックが世界中で再評価されるなか、本作はそのどれにも属さない、新しい”親密さ”を提示している。
音が消える、その瞬間まで耳を澄ませて
このツアーは、派手な演出や大音量で圧倒するライブではない。
一本のギターが鳴り、もう一本が応え、その余韻が会場の壁や天井、木々や石畳に溶け込んでいく。その一音一音を慈しむような時間こそが、『At The Emerald Pool』の本質である。
音楽室、教会、寺院、そして森。
それぞれの場所でしか生まれない響きとともに、Jonny NashとTomo Katsuradaは、同じ楽曲を毎晩違う風景へと変えていく。静寂のなかにこそ無限の豊かさが宿ることを、この4日間は静かに教えてくれるだろう。

Artist: Tomo Katsurada and Jonny Nash
Title: At The Emerald Pool
Label: PLANCHA / Melody As Truth / Future Days Radio
Cat#: ARTPL-264
Format: CD
※日本独自CD化
※解説付き予定
Release Date: 2026.07.02
Price(CD): 2,200 yen + tax
