“告白”は誰に向けられるのか ── Frances Chang、実験的ポップの新たな到達点『been thinking bout confession』を発表

ブルックリンを拠点に活動するミュージシャン/プロデューサー、Frances Changが、サード・アルバム『been thinking bout confession』を8月21日にリリースする。発表元は、先鋭的なアーティストを数多く輩出してきたRVNG Intl.。アルバムからの先行シングル「Is affect real?」も公開され、Changと映像作家のJoohee Parkが共同制作したミュージックビデオも話題を呼んでいる。

100年前のベビーグランドピアノを起点に生み出された本作は、DIY精神に根差した親密さと、映画音楽のような壮大なスケールを併せ持つ。実験的ポップという言葉だけでは捉えきれない、極めて個人的でありながら普遍的な作品だ。

デジタルと現実、その狭間にある感情の地図

『been thinking bout confession』を貫くテーマは、タイトルにもある“告白”だ。しかしそれは誰かに向けて罪を告白する行為ではない。

本作で語られるのは、自分自身に向けられた問いかけであり、長く避け続けてきた感情との対話である。

デジタルとフィジカル、記憶と録音、現実と幻想。その境界線を曖昧にしながら、Changは自己の奥深くにある不確かな領域を音として描き出していく。アルバムを聴いていると、まるで一本の映画を観ているような感覚に包まれる。壮大なオーケストレーションと耳元で囁くようなヴォーカルが交差し、楽曲は物語の“場面”として連なっていく。

BjörkとBurt Bacharachを結ぶ、不思議なポップの重力

Changの音楽を語るうえで興味深いのは、その影響源の幅広さだ。

彼女のサウンドには、Björkを思わせる異世界的な美しさや、Broadcastのレトロフューチャーな感覚が漂う。一方で、メロディの核にはChet Baker、Dionne Warwick、Burt Bacharachといったクラシックなソングライターたちの影響も息づいている。

本作ではギター中心だった従来の制作スタイルから離れ、全11曲の大半をピアノで作曲。さらに古いコンプレッサーやチューブプリアンプ、スプリングリバーブといったアナログ機材を用いながら、現代的なデジタル音響と融合させている。その結果生まれたのは、過去と未来が同時に存在するような不思議な音世界だ。

「Is affect real?」が映し出す疎外とユーモア

先行シングル「Is affect real?」は、本作の世界観を象徴する楽曲と言える。

〈Sometimes I want to wear / a head of light blonde hair〉という印象的な一節から始まるこの曲は、疎外感や自己認識をテーマにしながらも、どこかユーモラスで遊び心に満ちている。予測不能な展開を見せながら、アメリカ社会のなかで“物語の主人公になれない感覚”を鋭く見つめていく。

公開されたミュージックビデオもまた、映画的なアプローチで制作された。Changは「長編映画のワンシーンのような作品にしたかった」と語り、監督のJoohee Parkとともに、迷子になったような感覚と暗闇を受け入れることで得られる強さを映像化している。

ベッドルームから映画館へ ── Frances Changという才能

シカゴで移民の両親のもとに生まれたChangは、パンクやエモ、ポスト・ハードコアのアンダーグラウンドシーンで活動した後、ソロアーティストとして独自の表現を追求してきた。

2022年の『support your local nihilist』、2024年の『Psychedelic Anxiety』を経て、本作ではその探求がさらに深い領域へ到達している。映画音楽家としても活動する彼女は、音楽を単なる楽曲としてではなく、“物語を体験する空間”として捉えているようだ。

『been thinking bout confession』は、実験的ポップでありながら、どこまでも人間的なアルバムである。不安と希望、現実と幻想、そのどちらにも完全には属さない場所から響く声は、現代を生きる私たち自身の内面を静かに照らし出す。

それは告白であり、独白であり、そして音による成長映画なのだ。

Artist: Frances Chang
Title: been thinking bout confession

Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-263
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.08.21
Price(CD): 2,200 yen + tax

※日本独自CD化
※解説・歌詞・対訳付き予定

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