即興のように作曲し、作曲されたように即興する ── 田中鮎美、ECMから5年ぶりの新作『ウィンドフラワー』を8月21日にリリース

「即興のように聴こえる音楽を作曲したい。そして、書かれたように聴こえる音楽を即興で演奏したい」 ── 田中鮎美のその言葉は、この新作アルバムのすべてを語っている。ノルウェー在住の日本人ピアニスト・作曲家、田中鮎美が、トーマス・モーガン(ベース)、トーマス・ストレーネン(ドラムス)との新トリオで制作したECM第2作『ウィンドフラワー』を8月21日にリリースする。

アネモネが象徴するもの——美しさの儚さを音に刻む

アルバムタイトルの「ウィンドフラワー」は、アネモネの英名だ。多くの文化において美の儚さを象徴し、その瞬間を捉えることの必要性を示唆する花。その名を冠したこのアルバムは、自由なバラード調を軸に、8曲の即興的に作曲された楽曲と先行公開曲「ラ・ソース」の自由なアレンジで構成されている。輝きに満ちながら、どこか消えてしまいそうな ── そういう瞬間の連続が、9曲を通じて美しく記録されている。

2024年9月、オスロの「ナショナル・ジャズ・シーン・ヴィクトリア」で初めて顔を合わせたこの3人の化学反応は、その場で即座に明らかになった。ECMのプロデューサー、マンフレート・アイヒャーはその可能性をすぐに見抜き、南フランスのステュディオ・ラ・ビュイソンヌでの録音を提案。2025年5月に収録が行われた。

三者三様の声が、ひとつの空間を形づくる

トーマス・モーガンは2008年にジョン・アバークロンビー・カルテットの一員としてECMデビューを飾り、菊地雅章のトリオ作品『サンライズ』ではポール・モチアンとも共演している。ヤコブ・ブロ、ビル・フリゼール、クレイグ・テイボーン、ジョヴァンニ・グイディとの継続的な協働が示す通り、あらゆる即興の場の本質を見極め、それを静かに支えながら独自の声も響かせる ── チャーリー・ヘイデンやゲイリー・ピーコックの系譜を引くベーシストだ。収録曲「ツリー・オブ・スターズ」では、ピアノの優しくきらめくフレージングの中にメロディックなベースラインを織り交ぜるモーガンの手腕が、アルバムのハイライトのひとつとして光る。

トーマス・ストレーネンはECMとの関係を2005年のパリッシュ(ボボ・ステンソンらと)から築き、ジョン・サーマンとの『Words Unspoken』(2024年)、クリス・ポッターやクレイグ・テイボーンらとの『Relations』など、即興の地平を常に押し広げてきたノルウェーの名ドラマーだ。アルバムのタイトル曲では、峻厳なドラム・パターンが音楽の展開とともに新たなダイナミックな空間を切り開いていく。

ヤマハ教室からオスロへ、固有の旅が生んだ音楽

田中鮎美の音楽的軌跡は独自だ。3歳からヤマハ音楽教室でエレクトーンを学び、ジュニアコンクールで優勝。ピアノへ転向後、北欧音楽への強い引力を感じ、2011年にオスロのノルウェー国立音楽院のジャズ・即興音楽科へ進んだ。そこで生前のミシャ・アルペリンに師事し、ジャズ表現への「北欧的」なアプローチを探求し始めた。2021年のECMデビュー作『スベイクアス・サイレンス——水響く——』は英国の音楽誌『The Wire』に「一音一音を大切にしている。一つとして感じられない音はない」と評され、国際的な評価を確立した。

今回の新作は、前作のトリオとは異なるメンバーによる全く新しい語り口だ。室内楽とジャズ、東洋・西洋・北欧の感性が溶け合う場所で、抽象的かつ叙情的なアイデアが3人の間を自由に行き来する。

ヨーロッパ・ツアー、そして来日も

アルバムリリース後、トリオはヨーロッパ・ツアーへ。ベルゲン(9/11)、オイステセ(9/12)、トゥール(9/16)、ケルン(9/23)、メヘレン(9/24)、ジュネーブ(9/25)と主要都市を巡り、来日公演も予定されている。

田中鮎美『ウィンドフラワー』
Ayumi Tanaka, Thomas Morgan, Thomas Strønen / Windflower
2026年8月21日(金)リリース SHM-CD UCCE-1222 ¥3,300(税込)

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