記憶は溶け、音だけが残る──Lusine、原点回帰となるニュー・アルバム『Melting Days』を発表

アンビエントと実験電子音楽、その原風景へ

エレクトロニック・ミュージックの静かなる革新者、LusineことJeff McIlwainが、約3年ぶりとなるニュー・アルバム『Melting Days』を8月21日にGhostly Internationalよりリリースする。国内盤CDはPLANCHAから日本独自仕様で発売される。

2024年には約11年ぶりの来日公演で日本のファンを魅了したLusine。本作は通算10枚目となるスタジオ・アルバムであり、20年以上にわたり探究してきたアンビエント、IDM、テクノ、実験音楽を改めて見つめ直した、キャリアの重要な転換点ともいえる作品だ。

アルバムの発表にあわせ、先行シングル「Pendulum」も公開されている。

喪失と再生を描く、10篇の音響詩

『Melting Days』のテーマは、記憶、喪失、変化、そして再生。

全10曲は明確なストーリーを語るわけではない。しかし、それぞれが静かに呼応し合いながら、一つの長い旅のような時間を描いていく。

Lusineは制作についてこう語る。

「悲しみの中にいると、以前の人生が霧の向こうへ消えていくように感じる。でも同時に、アイデアを妥協しなくてもいいという意味では、自分を少し自由にしてくれた。」

感情を直接語るのではなく、音の質感や反復するメロディ、ゆっくりと変化していくリズムによって心の揺らぎを表現する。そのアプローチこそ、Lusineというアーティストを唯一無二の存在にしてきた理由でもある。

『Language Barrier』を継ぐ、新たな代表作

本作は、2007年に発表されたアンビエントの名盤『Language Barrier』とも比較されている。

Ghostly InternationalのレーベルメイトであるLoraine Jamesが「史上もっとも好きなアンビエント・アルバム」と称したこの作品は、現在でも多くのプロデューサーに影響を与え続けている。

しかし『Melting Days』は単なる原点回帰ではない。

初期Aphex TwinやSeefeelを思わせる有機的なリズム感、そしてSusumu Yokota『Sakura』やMountainsから受けた影響を溶け合わせながら、現代だからこそ到達できる新しいアンビエント像を提示している。

ここでいうアンビエントとは、背景で流れる環境音楽ではない。

リズムが息づき、質感が動き続け、聴き手の感情を静かに揺さぶる”前景としてのアンビエント”だ。

音は絶えず前へ進み続ける

アルバムの中心に位置する先行シングル「Pendulum」は、本作を象徴する一曲でもある。

霞んだシンセがゆっくりと立ち上がり、ストリングス、フルート、ノイズが幾重にも重なりながら、美しいクライマックスへと向かっていく。

Lusineはこう話す。

「自分はビートのある世界から来た人間だから、曲をその場に留めておくことができない。常に勢いを積み重ねていきたいんだ。」

静寂の中にも確かな推進力がある。

その感覚はアルバム全体を貫いており、アンビエントでありながら、どこまでも”動き続ける音楽”として成立している。

20年以上、静かに進化し続ける電子音楽家

2000年代初頭から第一線で活動するLusineは、IDM、テクノ、アンビエント、実験音楽という複数のジャンルを横断しながらも、一度として流行を追いかけることはなかった。

『Sensorimotor』『A Certain Distance』『Long Light』ではよりメロディックでソングライクな表現へと歩みを進め、本作『Melting Days』では再びミニマルな音響世界へ帰還する。

だが、それは過去へ戻ることではない。

積み重ねてきた経験と喪失、そして人生そのものを抱えた上で、新しい景色へ歩き出すための一枚なのだ。

『Melting Days』は、美しいアンビエント作品というだけではない。

変わり続ける人生を受け入れ、それでも前へ進もうとする意志を静かに映し出した、Lusineというアーティストの現在地を刻む傑作となりそうだ。

Artist: Lusine
Title: Melting Days

Label: PLANCHA / Ghostly International
Cat#: ARTPL-266
Format: CD

※日本独自CD化
※解説付き予定

Release Date: 2026.08.21
Price(CD): 2,200 yen + tax

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