
生成AI、脳とマシンの接続、ポスト・ヒューマン。かつてSFの中に存在していた未来は、いま現実として私たちの目の前に現れ始めている。そんな時代に、現代思想界の異端児スラヴォイ・ジジェクが新たに投げ込むのは、“人間とは何か”という根源的な問いだ。
6月20日、株式会社 誠信書房より刊行される『接続された脳とヘーゲル:シンギュラリティにおける主体性の行方』は、AI時代における主体性と無意識をめぐる、極めてラディカルな思考実験である。
“接続された脳”の先にあるもの
本書でジジェクは、精神分析家ジャック・ラカンの理論を背景に据えつつ、ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル哲学を軸として、AIやシンギュラリティを再考する。
もし脳とデジタルマシンが直接接続されたとき、人間の“主体”はどう変容するのか。欲望や無意識はどこへ向かうのか。
ジジェクはこの問いを、映画、小説、哲学、さらにはブラックユーモアまで横断しながら執拗に掘り下げていく。
テック楽観主義に潜む“新しい黙示録”
本書には、シリコンバレー的な未来礼賛への強烈な違和感が通底している。経済思想家斎藤幸平が推薦文で語るように、ジジェクはシンギュラリティを“進歩の到達点”としてではなく、新たな黙示録として読み解こうとする。
AIによって効率化される社会。
アルゴリズムによって管理される欲望。
そして、人間性そのものが商品化されていく世界。
本書は、それらを単なるテクノロジー論ではなく、“資本主義の深層構造”として暴き出していく。
難解なのにスリリング――ジジェク哲学の真骨頂
ジジェクといえば、難解さと過剰さで知られる思想家だ。だが本書では、哲学的議論の中に映画や文学、猥雑なジョークが混ざり合い、異様な熱量を生み出している。
章題には「デジタル警察国家」「グノーシス的転回」「デジタル・アポカリプス論」といった不穏な言葉が並び、読み進めるごとに現代そのものが巨大なSF神話として立ち上がってくる。
“人間以後”を考えるための必読書
『接続された脳とヘーゲル』は、単なるAI批評ではない。
それは、人間の無意識、欲望、自由、そして主体性が、テクノロジーによってどのように再構成されていくのかを問う書物だ。
AIが文章を書き、音楽を生成し、映像を作る時代。
“創造する主体”とは誰なのか。
その問いに真正面から切り込む本書は、デジタル社会を生きるすべての人にとって、極めてスリリングな読書体験になるだろう。
■書籍情報

接続された脳とヘーゲル
シンギュラリティにおける主体性の行方
スラヴォイ・ジジェク 著
池松辰男 /佐藤 愛 /高橋一行/野尻英一/原 和之 訳
書店発売日 2026/06/20
ISBN 978-4-414-12055-4
定価 3,520円(税込)
誠信書房HP:
https://www.seishinshobo.co.jp/book/b10168836.html
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