人生そのものが、夢のようなものだった ── アンソニー・ホプキンス、88歳にしてDecca Classicsより作曲家デビュー

俳優として60年以上、世界の舞台に立ち続けてきたサー・アンソニー・ホプキンスには、ずっと抱えてきた秘密があった。誰もが知るあの声、あの眼光の裏側に、ひとりの作曲家が息をひそめていた。Decca Classicsとの専属契約のもと、初のオーケストラ・アルバム『Life Is A Dream』が8月21日にリリースされる。指揮はグスターボ・ドゥダメル、演奏はフィルハーモニア管弦楽団——これ以上ない布陣での、遅すぎた、しかし必然の作曲家デビューだ。

最初の夢は、音楽だった

ウェールズのポート・タルボットに生まれたホプキンスは、4歳でピアノを始め、数年後にはベートーヴェンやショパンを弾きこなしていた。6歳頃には即興演奏を始め、10代には地元の演劇作品のための楽曲を書いていた。俳優という天職に就いた後もその衝動は消えることなく、何十年ものあいだ、彼は誰にも見せずに書き続けていた。

「音楽は、私にとって最初の憧れであり、最初の夢でした。私は人生を通してずっと作曲を続けてきました」 ── 本人のその言葉が、このアルバムの重量を物語る。

マリブの自宅でピアノを弾くアンソニー・ホプキンス

ウェールズの草原、祖父の記憶、最愛の妻へ

『Life Is A Dream』は、技巧を誇示するアルバムではない。それは家族への思い、故郷ウェールズの風景、そして人生をともに歩んできた人々への音楽による回想録だ。先行シングル《Bracken Road》は、南ウェールズ・マーガムで過ごした幼少期の記憶を出発点に、ハリー・ジェイムスやジャッキー・グリーソンのブルース的感触とエルガーへのオマージュを織り交ぜながら、温かく郷愁に満ちた音楽世界を描き出す。

《My Fatherland》はウェールズの伝統的な旋律と生まれ故郷への愛着が息づく作品で、「私のささやかな原点に敬意を捧げる作品です。私はパン職人だった父の息子なのです」という言葉とともに収録されている。最愛の妻に捧げた《Stella Aria》、姪に捧げた《Tara》——どの作品にも、著名な俳優ではなく、ひとりの人間の感情がそのまま流れ込んでいる。

ドゥダメルが語る「稀な芸術家」の音楽

グスターボ・ドゥダメルはホプキンスの音楽をこう語る。「彼は物語を語る人の心と詩人の直感をもって作曲に向き合い、極めて個人的でありながら、誰の心にも響く音楽世界を生み出しています」。フィルハーモニア管弦楽団に加え、ピアニストのセルジオ・ティエンポ、チェリストのグレゴリオ・ニエト、バッハ合唱団、ウィンチェスター大聖堂の少年聖歌隊が参加したこの録音は、ホプキンスの音楽を可能な限りの豊かさで包み込んでいる。

なお、CDおよびアナログ盤の売上の一部は、困難な状況にあるベネズエラの人々を支援するため、国連開発計画(UNDP)へ寄付される。

60年を超えた先にある、もうひとつの顔

2025年1月、サウジアラビアで開催された「リヤド・シーズン」でのガラ・コンサートで、ホプキンスは初めて作曲家として世界の聴衆と向き合った。そして今回のDecca Classicsデビューは、その扉をさらに大きく開く。総フォロワー1,000万人を超えるSNSでは、ピアノ演奏や絵画を通じて新世代のファンを獲得し続ける彼にとって、このアルバムはもうひとつの自己紹介状でもある。

「私の人生そのものが夢のようなものです」 ── その言葉がアルバムタイトルになったとき、88年間の物語がようやく音楽という形で世界に届けられる。

アンソニー・ホプキンス『Life Is A Dream』
2026年8月21日(金)CD&デジタルリリース
2026年10月30日(金)アナログ盤リリース
指揮:グスターボ・ドゥダメル/演奏:フィルハーモニア管弦楽団ほか

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