
世界中のダンスフロアで確かな存在感を築いてきたオランダのプロデューサー、クリス・ステューシーが、待望のデビューアルバム『Lost, Found & Forgotten…』をリリースした。自身のレーベルUp The Stussから放たれる本作は、19曲にわたるスケールで彼の“過去・現在・感覚”を横断する、キャリア初の包括的なステートメントだ。
“凧”が導く、自由と均衡のメタファー
本作のコンセプトを貫くのは「凧」というイメージ。空を自由に舞いながらも、常に地上と繋がっているその姿は、Stussyの音楽観そのものを象徴している。感情や想像力に制限を設けず、しかしグルーヴと構築美に根ざす ── そのバランス感覚が、アルバム全体に一貫した軸を与えている。
失われた断片が蘇る「Lost」
アルバムの幕開けを飾る「Lost」パートは、これまで形にならずに眠っていた楽曲群に新たな命を吹き込んだ章。過去の断片が再構築され、現在の視点で完成されたトラックとして蘇る。
Elena Moroderをフィーチャーした「Moonlight」のエモーショナルな導入から、「Darkness」の推進力あるビートへと続く流れは、抑制ではなく“衝動”を優先した創作のエネルギーに満ちている。
創造が連鎖する瞬間「Found」
「Found」では、コラボレーションを通じて生まれる化学反応がテーマとなる。KUČKA、Jessica Moore、Leanna Louise、Tropicsら多彩なアーティストが参加し、音楽はより色彩豊かに拡張されていく。
「Wide Awake」や「Believe in yourself」といった楽曲は、メロディとグルーヴがしなやかに絡み合い、開かれた創造性のピークを体現している。
静かに響く余韻「Forgotten」
最終章「Forgotten」は、いわば“ディガーのための領域”。派手さを抑えた楽曲群が、時間とともにその価値を滲ませていく。
「Set sail on another ship」の催眠的な展開や、「It feels natural」の穏やかなエンディングは、フォーカスの外側にある美しさを丁寧にすくい上げる。即効性ではなく持続性 ── その魅力が静かに際立つパートだ。
現実と幻想のあいだで
『Lost, Found & Forgotten…』は、現実と非現実の境界を曖昧にする作品でもある。視点を引いたり寄せたりすることで、音楽は具体的な体験でありながら、どこか夢のような感覚も帯びる。
それは単なるデビューアルバムではない。
過去と現在、衝動と意志、そのすべてを俯瞰した“自己の地図”であり、聴き手を新たな場所へと導くための航路でもある。
ダンスフロアで培われた感覚と、内省的な物語性。その両方を抱えながら、クリス・ステューシーは次のフェーズへと踏み出した。

Buy/Stream: Chris Stussy – Lost, Found & Forgotten…
https://chris-stussy.lnk.to/lostfoundforgotten
