
トルコにルーツを持ち、現在はスコットランド・グラスゴーを拠点に活動する作曲家/ソングライター、Isik Kuralが、ニュー・アルバム『Motorcycles and Cherry Wind』を2026年10月30日にRVNG Intl.よりリリースする。日本盤CDは同日、PLANCHAから発売予定。発表に合わせて、アルバムの世界観を象徴するファースト・シングル「Winter Sun」と、そのミュージックビデオも公開された。
アンビエント、フォーク、フィールド・レコーディング、そして民間伝承──。ジャンルを超えた繊細な音世界を紡いできたKuralが、今作で辿り着いたのは、旅と記憶を静かに結び直す、牧歌的で詩情あふれるサウンドスケープだった。
遺跡、風、鳥の声──世界を歩いて集めた“音の地図”
『Motorcycles and Cherry Wind』は、単なるアルバムではない。旅先で出会った風景や匂い、環境音、そして記憶の断片を丹念に編み上げた、一冊の「音の旅行記」とも呼べる作品だ。
マラケシュの市場、イスタンブールの乗合バス「ドルムシュ」、古代リュキアの海辺、スコットランド・ブリッジ・オブ・アランで録音した鳥のさえずり──。Kuralは世界各地で採取したフィールド・レコーディングを、自身の創作アーカイブとして長年蓄積してきた。それらは時間を経ることで新たな意味を帯び、ピアノ、ナイロン弦ギター、木管楽器、弦楽器と静かに溶け合い、現実と夢の境界を曖昧にする豊かな音像へと昇華されている。
「Winter Sun」が描く、冬の朝の恋
先行公開された「Winter Sun」は、本作の美学をもっとも端的に表した一曲だ。
幻想的なピアノとヴァイオリンがゆっくりと重なり合い、その上をKuralの穏やかなハミングが漂う。夜明け前の静けさを思わせる導入から、少しずつ景色が色づいていくようなアレンジは、まるで冬の街を歩く恋人たちのワンシーンを眺めているかのよう。
言葉にならない感情を、柔らかな光や冷たい空気の質感で描くこの楽曲は、最後の一音が消えたあとも、静かな余韻だけを心に残していく。
公開されたミュージックビデオは、映像作家Barnaby Omarが監督を担当。Kuralと同じくグラスゴーを舞台に撮影され、新しい恋がもたらす希望と不安、その繊細な揺らぎを、美しい映像美で表現している。
世界各地の音楽家が紡ぐ、一つの風景
本作には9人のミュージシャンが参加している。
ブラジル、アルゼンチン、イタリア、スペイン、北マケドニア、ドイツ、トルコ、イングランド──それぞれ異なる文化圏で育った演奏家たちがグラスゴーに集い、一枚のアルバムを完成させた。
クラリネット、フルート、バス・クラリネット、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ。それぞれの音色は国境を越えながらも決して自己主張しすぎず、ひとつの穏やかな風景画を描くように重なり合う。その響きは、まるで古い民話が何世代にもわたって語り継がれるような普遍性を宿している。
「旅」は場所ではなく、感覚の記憶になる
10代でナイロン弦ギターを手にしたKuralは、偶然耳にした会話や街角の音を歌詞へ取り込みながら創作を始めた。その後、マイアミ大学で音楽を学び、ニューヨークを経てグラスゴーへ移住。フィールド・レコーディングやサウンドデザインを取り入れた独自の作風を確立し、『in february』『Moon in Gemini』などを通じて、アンビエント・フォークの新たな表現を切り拓いてきた。
そして4作目となる『Motorcycles and Cherry Wind』では、その探究心はさらに遠くまで広がっている。
彼が描こうとしているのは、観光地の記録ではない。旅先で肌に触れた空気、足元の土の匂い、午後の光、鳥の鳴き声、誰かの会話──時間が経つほど輪郭を増していく「感覚の記憶」そのものだ。
過去と未来をつなぐ、静かな傑作
『Motorcycles and Cherry Wind』には、懐かしさがある。しかし、それは特定の時代を振り返るノスタルジーではない。
誰もが心のどこかで知っているような風景。まだ訪れたことのない場所なのに、なぜか帰ってきたような安心感。その不思議な感覚を、Isik Kuralはアンビエント・ポップという形で静かに結晶化させた。
音楽は時に時間を超え、土地を超え、人の記憶をつなぐ媒体になる。
『Motorcycles and Cherry Wind』は、そのことを優しく、そして美しく思い出させてくれる一枚になりそうだ。

Artist: Isik Kural
Title: Motorcycles and Cherry Wind Out
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-268
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.10.30
Price(CD): 2,200 yen + tax
※日本盤ボーナス・トラック2曲収録
※解説・歌詞・対訳付き予定
