
ポップ、ロック、エレクトロ、ボカロ、ジャズ ── 。一つのジャンルに収まりきらない音楽を、目まぐるしいスピードで混ぜ合わせながら鳴らす4人組・パキルカ。そんな彼らが主催する2会場サーキットイベント『パキフェス vol.2』が、8月18日、渋谷Milkyway&Star loungeにて開催された。
2006年生まれ、平均年齢19歳という若さながら、ジャンルに縛られない唯一無二のサウンドと、観客を巻き込みながら「演奏者と観客が一体となって“パキる”」ライブを武器に活動するパキルカ。この日、彼らが作り出した「パキフェス」という空間には、パキルカを含む計12組のアーティストが集結した。
今回はその中から、物品販売、Yuva、ミロク、Viewtrade、BonSim、Blue rose paradigm、そしてパキルカの7組のライブを振り返る。
物品販売 ── 不器用な愛を、音に乗せて ──
16:30、Shibuya Milky Wayのトップバッターを務めたのは、仙台発の4ピースロックバンド・物品販売。Dr.さとはるの力強いドラムが鳴り響くなか、Vo.はいへいが「物品販売です。よろしくお願いします。」と告げ、「町内会」が始まった。
彼らの一音一音には鋭さがある。それでいて、その隙間を埋めるのはVo.はいへいのどこか力の抜けた歌声だ。爆音の中に柔らかな声が乗ることで、単純な激しさでは終わらない独特の余白が生まれている。切迫感のある演奏と、脱力した歌声。一見すると相反する二つの要素が、物品販売の音楽の中では不思議なほど自然に共存していた。2曲目「タム責任」では、Vo.はいへいの「いけるか、Shibuya Milky Way!!」を合図に、フロアから次々と拳が上がる。Ba.にいつまとGt.晃史郎もお立ち台へ立ち、ステージ上の動きも一段と激しくなっていき、観客を〈こんなもんか〉と言っているかのように煽っていく。そしてそのまま「非・家族」へ。Vo.はいへいが「止まらねぇぞ、物品販売は!!」と叫ぶと、彼らの波に飲み込まれまいと、観客も声を上げ、拳を掲げて応えていく。その反応を受けて、ステージ上の4人もさらに前へ出ていく。トップバッターとは思えない勢いで、会場の空気が一気に動き始めた。

MCでは、パキフェスへの出演が決まった経緯について語った。フェスが開催されると知った頃から「誘って」と言い続けていたものの、「2年連続で出るのはちょっと……」と言われていたそう。それでも、約1ヶ月前に突然電話で出演の誘いを受けたという。
そんな経緯を少し茶化すように話しながらも、言葉の端々から伝わってくるのは、主催であるパキルカへの確かな想いだった。思えば、彼らの愛の伝え方はいつだって少し不器用だ。真正面から「好き」と伝えるのではなく、冗談や皮肉に包みながら、それでも隠しきれないほどの愛を滲ませる。そんな彼ららしさは、歌詞だけでなく、MCからも確かに伝わってきた。
そしてMCの最後、告げられたのは彼らのツーマンライブ開催の解禁だった。パキルカへの想いを少し不器用に語った彼らが、今度は私たちに向けて、次に会うための場所を差し出す。「また会いたい」と言葉にする代わりに、彼らが選んだのは、次に会う約束を作ることだった。
その直後に披露されたのは、新曲「モーマンタイ」。イントロが鳴った瞬間からクラップが起こり、初めて聴く観客も自然と身体を動かしていく。まだ知られていない曲でありながら、すでにライブの中に居場所を作っている。新曲を「聴かせる」のではなく、その場で一緒に育てていくような初披露だった。

そして最後に披露されたのは、「マングローブの水死体」。最後まで観客を置いていかないように音を鳴らし続け、ステージを駆け抜けた。冗談を交わし、次に会う約束をし、音を通して観客と向き合う。その一つひとつに、彼らなりの不器用な愛が滲んでいた。
セットリスト
- 町内会
- タム責任
- 非・家族
- ツーツー屋
- モーマンタイ
- マングローブの水死体
Yuva ── 1年前に見ていた景色を、今年はステージから ──
2025年結成、東京を拠点に活動する4ピースロックバンド・Yuva。専門学校での出会いをきっかけに結成された4人のライブが、18:00、渋谷Star Loungeのステージに立った。

Dr.ようたの「パキルカ呼んでくれてありがとう」と感謝を込めた言葉に続き、Vo.かのんが「よろしく」と告げる。オープニングナンバーは“トキメキジャンキー”。
まず目を引いたのは、かのんの表情だった。力強く、まっすぐに伸びる歌声とは対照的に、演奏中の表情は驚くほど無邪気だ。何度も見せる笑顔に、時折覗く妖美な雰囲気。可愛らしさと格好良さ、そのどちらか一方に収まることのない表情の豊かさが、ステージ上で強い存在感を放っていた。
そして、Dr.ようたの「ワンツー」の掛け声とともに、Gt.かずまとBa.いつきも音を重ねていく。“ラストフライト”では、ギターとベースが絡み合い、重心の低いグルーヴを生み出す。その重たいリフに身体を持っていかれるように、フロアには自然と首を振る観客の姿が広がっていった。
4人のキラーチューン“潜伏”へと続くと、ベースソロが響き渡る頃には、手拍子も重なっていく。音の展開に呼応するように、フロアの反応も次第に大きくなり、演奏と観客の間に自然なやり取りが生まれていた。

そんなステージの途中、かのんが「改めてYuvaです!」と無邪気に笑い、「楽しくなっちゃった」とこぼす。先ほどまで力強い歌声でフロアを圧倒していた人物とは思えないほど、飾らない笑顔だった。そして、ここで語られたのが、このフェスとの過去だった。1年前、4人は客席からこのステージを見ていた。「自分たちも出たい」と思っていたという。その言葉を聞いた瞬間、それまで見ていた4人の姿が少し違って見えた。昨年は客席から見上げていたステージに、今年は自分たちが立っている。「出たい」と思った場所に、実際に立つ。その間にどんな道のりがあったのか、そのすべてを知ることはできない。それでも、1年前には客席にいた4人が、今はステージの上から観客を見ている。その事実だけで、この日のライブには特別な意味が生まれていた。
その後は「平行線」「サヨナラオレンジ」と続く。ここで印象に残ったのは、派手な演奏だけではなく、楽曲の中に置かれた「間」だった。ふっと息を吸う瞬間。次の言葉へ移るまでのわずかな沈黙。音が途切れることで、かえって歌声が際立つ場面がある。その静けさを挟むからこそ、次に放たれる一音がより強く残る。

そして最後の1曲、「慟哭の空」。「私たちの今日のやり方、私たちなりのやり方。どうか皆さんの心に少しでも残りますように」そう語ったかのんの言葉通り、4人は最後まで自分たちのやり方でステージを走り切った。曲が終わると、フロアへ向かって「Thank you」と一言。4人で深く頭を下げる。1年前には客席から見ていた景色を、今はステージから見つめている。その景色を手に入れた4人が、この日鳴らした6曲。それは、昨年「出たい」と思った場所で、自分たちの音楽を届けるための時間だった。
セットリスト
1. トキメキジャンキー
2. ラストフライト
3. 潜伏
4. 平行線
5. サヨナラオレンジ
6. 慟哭の空
ミロク ── 音楽とともに異世界を駆け、次のページへ ──
18:30、Shibuya Milky Wayにてミロクのステージが幕を開けた。「異世界RPGポップバンド」を掲げる彼らのライブは、演奏が始まる前からすでに始まっている。まず会場に踏切の音が響き、続いて電車が走り出す。その音が消えると、「はじめてのグリモワール お買い上げ有難う御座います」というSEが流れた。日常の風景を思わせる音から、少しずつ見慣れない場所へと連れていかれる。そして一曲目、“でうす えくす まきな”が始まった。

Vo.柿内ロッコウの「ミロク、かかってこい」という声を合図に、空気が一変する。歌が始まると、先ほどまで流れていたSEの言葉が、今度はライブの中で意味を持ち始める。ただ曲を聴くのではなく、目の前で次々と展開されていくものを追いかけるように、ステージへ引き込まれていった。
「飛べるか東京!」という柿内の声を合図に、“RESPAAAAEN”“裏路地ヨコチョー”へ。ステージを深い緑の照明が包み込み、まるで異世界の森の中に迷い込んだかのよう。〈なんだこの高揚感は〉と思わず呟きそうになったほどだ。そして「今からでかい声出せますか、東京!」という呼びかけに、フロアから声が返される。“ゲノゲノゲ”では観客もフレーズを重ね、会場いっぱいに歌声が響いた。ステージから投げかけられる言葉に観客が応え、その反応を受けてまた次の展開へ進んでいく。そんなワクワクのど真ん中にいるような感覚に、身体までそわそわと浮き立ってくる。


その後のMCではパキルカと出会った時のことを振り返り、その繋がりからパキルカのカバー“MISSION!!”を披露。異世界を舞台にしたミロクのライブの中へ、彼ら自身のこれまでの出会いが組み込まれていく。フィクションのように作り込まれた世界観の中に、4人が実際に歩んできた時間が混ざることで、ミロクの物語にもう一つの輪郭が加わった。
後半は“オンボロとファジー”、“シンパサイザ!!”と続く。とにかく観客を楽しませる。そしてただ見せるだけではなく、一緒に音楽を作り、一緒にその世界にいるような管区へと引き込んでいく。その4人の徹底ぶりには、どこか狂気すら感じるほどだ。恐ろしく楽しい。
そんな熱狂の中、柿内が「ギリギリできました、東京。関西からだと6時間くらい」と話す。異世界を駆け回っていた4人の口から出てきたのは、関西から東京まで6時間という、ごく現実的な話だった。壮大な世界観の裏側には、実際に6時間をかけてこの場所までやってきた4人がいる。その現実が一瞬顔を出したことで、それまで見ていた異世界が、ほんの少しだけ現実と繋がった。

そしてラストナンバー“セカイの端をみにいこう”へ。“エンドロール”という歌詞が、言葉が、物語の終わりを思わせる一方、その先にはまだ「セカイ」がある。異世界への入り口から始まり、景色を変え、出会いを重ねながら進んできたこの日のステージ。その最後に示されたのは、終着点ではなく、その先へ続く道だった。
SEで手渡された「グリモワール」から始まった物語は、ここで一度幕を閉じる。しかし、それは完結を意味しない。今日のライブが1冊の本の1ページだとするなら、次に開かれるページには一体どんな景色が待っているのか。ミロクが次にどんな世界へ向かうのか。その続きを、楽しみに待ちたい。
セットリスト
- でうす えくす まきな
- RESPAAAAEN
- 裏路地ヨコチョー
- ゲノゲノゲ
- オンボロとファジー
- シンパサイザ!!
- セカイの端をみにいこう
Viewtrade ── 自由の先で、ワクワクする景色を ──
京都発の4人組バンド・Viewtrade(ビュートレード)。「ポップでキャッチー、でも普通じゃない音楽」を掲げ、自由な発想とメンバーそれぞれの強い個性を武器に、独自の音楽を追求する彼らが、渋谷Milky Wayのステージに登場した。
19:30、重低音がフロアを揺らした。暗闇の中で鳴り始めた音に続き、Gt.ササキソラがお立ち台へ。身体を揺らしながらギターを鳴らす姿は、まるで「いけんのか!!」と観客を煽るように前のめりだ。さらにステージ前方から伸びる光線が演奏に合わせて暗闇を切り取り、音と光が重なりながら目の前の景色を塗り替えていく。

いつものライブハウスにいるはずなのに、少しずつ現実から離れていくような感覚。無数の光の中を音に導かれて進んでいくステージは、宇宙を漂っているようでもあり、ゲームの新しいステージを開いたようでもある。「次は何が起こるんだろう」。そんな予測できない楽しさが、最初の一音からライブハウス全体を包んでいた。
“遮二無二アイキャッチ”、“禁断シンフォニー”と、最初からフルスロットルで駆け抜けていく。Gt.ササキソラは身体を揺らしながら何気なくフロアへ目を向け、その一瞬さえも印象に残る。気づけば、演奏だけでなく彼の動きまで追っていた。
さらに、Ba.ぱんだは演奏そのものを楽しむように身体を揺らし、ステージ上からフロアへ楽しさを伝播させていく。対してDr.文哉は、力強いビートで全体のグルーヴを支え、3人が自由に動き回るための土台を作る。そして、そのすべてをVo.池田リンの歌声が束ねていく。4人とも強い個性を持ちながら、それぞれが好きなように動いた先で一つの音楽になっていく。そのバランスが、Viewtradeのライブを面白くしているのだろう。


MCで池田は、「こうやったらいいみたいなお作法はあるけど、人をいつだってワクワクさせるのは自由で新しいもので」と語った。
その言葉のあとに再び鳴らされたのは、“コトノハガマタ”、“センリツ特急”。疾走感あふれる演奏が一気にフロアを駆け抜ける。身体を揺らすだけでは収まらないほどの勢いが空間を満たし、音が近づいてくるというよりこちらに走ってくるような感覚だった。そして、気づけば最後の曲“諸行無常とキミとボク”へ。それまでの楽曲とは、明らかに空気が違った。これまでのViewtradeの音楽は、前から迫ってくるようだった。次々と展開されるステージに押されるように引き込まれ、その先で何が起こるのかと、息をつかせない。しかし、“諸行無常とキミとボク”が始まると、その勢いの先に広がっていたのは、優しく、明るい景色だった。これまで前から迫ってきていた音が、そのまま止まることなく突き進み、気づけばこちらまで包み込んでいる。まるで太陽の光の中へ飛び込んだような、あたたかな感覚だった。最後まで前へ進み続ける。けれど、その先に待っているのは置いていかれるような景色ではない。4人が鳴らす音は、最後にはフロアごと包み込みながら、ライブを締めくくった。

自由であること、新しいものを生み出すこと。それは、ただ好きなように振る舞えばいいというほど簡単なことではない。それでも、自分たちが面白いと思う方向へ進み続けた先で、人をワクワクさせる景色を生み出す。『ポップでキャッチー、でも普通じゃない音楽』。この言葉の意味を、Viewtradeは音で、光で、そして何よりこの日のライブそのもので見せてくれた。最後の音が鳴り終わったあとも、フロアにはまだ、次のステージへ進んでいけそうな高揚感が残っていた。
セットリスト
- タロット・プロット
- 遮二無二アイキャッチ
- 禁断シンフォニー
- レッドライト・グリーンライト
- コトノハガマタ
- センリツ特急
- 諸行無常とキミとボク
BonSim ── 信じる音が、熱になる ──
ISSA(G)、瑠維(Vo / G)、Koujin(Ds)、えーじ(B)の4人からなるBonSim。2024年1月の結成以来、東京を中心に活動を続け、結成当初から着実にその名を広げてきた4ピースロックバンドだ。20:00、渋谷Star Loungeにて彼らのライブがスタートした。

1曲目“足枷と共に”が始まり、まず耳を奪ったのは、瑠維の歌声だ。歪みを帯びた声色には鋭さがありながら、高音に差しかかると驚くほど綺麗に抜けていく。力強く押し出すだけではなく、どこか目の前の誰かに語りかけるようなニュアンスを持った歌声。その繊細さが、楽器隊の鳴らすロックサウンドの中に独特の余白を生み出していた。
「パキフェス、まだまだいけますか」。瑠維の呼びかけから、2曲目“いつかはさ、”へ。ここで目を奪われたのが、ISSAとえーじの対照的な演奏スタイルだった。ISSAは一音一音を丁寧に紡ぐように繊細な音を鳴らす一方、えーじは頭を大きく振りながら、身体全体を使って大胆に演奏する。ステージのどこを見ればいいのかと思わず突っ込みたくなるほど、それぞれの個性が強烈だ。その違いが面白い。
“フランシュウ”へと続く中で、楽曲の空気をシャキッと切り替える瞬間と、感情を一気に解放する瞬間のメリハリが際立っていく。序盤に感じた繊細さを残しながら、4人の演奏は徐々に前へと迫ってくる。それに釣られていくように、気づけばフロアはどんどん人で埋まり、歓声も大きくなっていった。
MCでは、瑠維が「こんな暑い中、もっと暑いライブハウスに来てくれて」と感謝を伝える。その言葉を合図にするように、こちらももっと熱くしてやろうという気持ちになり、また一段と空気が変わった。

4曲目は“インフェリオリティ”。他人と自分を比較し、「自分なんか」と卑下してしまう心を描いた楽曲だ。「変わろうとせずに逃げてばかりな意気地無しだ」と、自分自身へ向けて厳しい言葉を投げかける。それは決して綺麗なだけの感情ではない。誰かと比べて落ち込み、自分を追い込んでいるのもまた自分自身なのだと、痛いところまで突きつけてくる。
そんな歌を、瑠維はフロアへ真っ直ぐに届けていく。内側に向けられた感情が、ライブでは観客の目の前へと開かれていく。続く“Igniter”では自然とクラップが巻き起こり、彼らに手を伸ばしたら届いてしまうんじゃないかと思うほど気づくと音が近くにあるように感じた。
「ラスト、かかってこいよ」クールな煽りとともに、最後の“試煉”へ。終盤、ISSAのソロを前に、瑠維が「ISSA、いけんのか」と声をかける。するとISSAは真っ直ぐに瑠維を見て笑いながら胸を叩く。「任せろ」と言わんばかりの仕草だった。

そして始まったギターソロに一気に目を奪われた。それまで一音ずつ丁寧に音を置いていたISSAが、ここでは一転、ステージの視線をさらっていく。ギターが鳴った瞬間、空気が一気にそちらへ引っ張られるようだった。その一瞬を見て、この日のステージを少しだけ理解できた気がした。さっき胸を叩いた「任せろ」が、言葉ではなく音になった瞬間だった。
思えば、この日のBonSimには、4人が同じ方向を向いていることをわざわざ確かめるような瞬間が何度もあったように感じる。瑠維の歌が楽器隊の音を切り裂き、ISSAのギターが楽曲の輪郭を描き、えーじのベースが身体ごとフロアを揺らす。そして “インフェリオリティ”で歌われた「自分を信じれなくてどうすんだ」という言葉は、そんな4人の姿を見たあとでは、少し違った意味を持ったように感じた。自分の音を信じること。それは、ただ一人で強くあろうとすることではない。自分とは違う音を鳴らす誰かに、次の瞬間を預けることでもあるのかもしれない。最後の“試煉”まで、BonSimはそれぞれの音を鳴らし続けた。その違いがぶつかり合いながら、6曲の中で何度も一つの流れをつくっていく。4人がそれぞれの場所で鳴らした音は、誰かに受け取られるたびに次の音へと変わっていき、その連なりこそが、この日のBonSimだった。
セットリスト
- 足枷と共に
- いつかはさ、
- フランシュウ
- インフェリオリティ
- Igniter
- 試煉
Blue rose paradigm ── 対抗心とリスペクトを、そのまま鳴らして ──
「始めるぞ、パキフェス」。Vo.祐がそう声を上げると、その言葉に勢いを与えるようにGt.つる、Ba.りつきもお立ち台へと立つ。まるで〈やってやるぞ〉とでもこちらに宣戦布告しているかのようだ。そしてBlue rose paradigmを象徴する一曲“走馬灯”が始まった。
Vo.祐の「パキフェス最後、そんなんでいいの?」とフロアを煽る一言が、会場のボルテージを一気に押し上げていく。祐が「もう一段階上げるぞ」と言い放つと、その勢いを決して途切れさせることなく、今度はドラムがフロアを突き動かしていき、疾走感に満ちた繋ぎの先、気づけば2曲目“街路にて”が始まっていた。

続く“Stay blue”では、先ほどまでの熱狂とはまた異なる表情を見せる。どこか風が吹き抜けていくような切なさ。そして、これから始まる夏を思わせるような眩しさ。その音の中には、ただ感情を届けるだけではない、不思議な「想いの伝染」があった。気づけば、こちらの心までその音楽に奪われている。メンバーそれぞれの音がしっかりと寄り添いながら、一つの景色を作り上げていく。彼らのライブから伝わってくるのは、ひしひしと胸に迫るような感情というより、気づけばこちらが彼らを信頼し、どこまでもついていきたくなっているような感覚だ。そんな、めちゃくちゃ頼れる味方のような存在感が、彼らの音にはあった。
そして“凡才につき”が始まると、会場は再びBlue rose paradigmというバンドが作り出す世界へと引き込まれていく。フロアを見れば、そこには楽しそうに音楽へ身を委ねる人たちの姿があった。彼らのパフォーマンスから伝わってくるのは、ただ自分たちの音楽を一方的に届けるだけではない。「目の前にいるあなたたちと、この時間を作りたい」という意思だ。何より、彼らはしっかりとこちらを見ている。その姿勢からは、ファンを大切にしていることが自然と伝わってくる。ステージに立つ彼らとフロアにいる観客。その間に境界線を作るのではなく、同じ空間を、同じ熱量で楽しもうとしているようだった。
MCでは「全部俺たちが持っていくぞ」と、このあとステージに立つパキルカへの対抗心を覗かせながらも、「これが革命を起こすバンド、Blue rose paradigmだ」と宣言。
その言葉に続くように、“静寂を抜けて”、“終焉讃歌”へ。最後の“終焉讃歌”を前に、祐は「パキルカのために高速でやります」と告げた。自分たちが全部持っていくと宣言するほどの対抗心を燃やしながら、それでも最後には、このイベントの主催者であり、このあとステージに立つパキルカのために全力で道を作る。だからこそ、その言葉が妙に彼ららしく感じられた。
楽曲は本当に高速だった。息つく間もなく駆け抜けていく演奏。その背後から差し込む光は、どこか暗闇の中に浮かぶ希望のようにも見える。負けたくない。全部持っていきたい。でも、このイベントを最高のものにしたいという気持ちも、きっと同じだけある。対抗心とリスペクト。一見すると相反する二つの感情を、彼らはそのままステージの上で鳴らしていた。

「俺たちこんなやってんのに、みんなもっとこいよ」。そんな言葉さえも、彼ららしい。完璧に格好つけるだけではない。悔しさも、負けたくなさも、もっと来てほしいという欲望も、そのままステージの上でさらけ出す。その人間らしさがあるからこそ、観ている側もまた、彼らの音楽に心を掴まれてしまうのだろう。革命を起こすと叫ぶバンドは多い。けれど、目の前の観客に「もっとこいよ」と本気で叫びながら、その瞬間のすべてを持っていこうとする彼らだからこそ、Blue rose paradigmの革命を、もう少し見ていたいと思ってしまった。
セットリスト
- 走馬灯
- 街路にて
- Stay blue
- 凡才につき
- 静寂を抜けて
- 終焉讃歌
パキルカ ── 魂をぶつけ合う場所で ──
Blue Rose paradigmのステージが終わると、渋谷Star LoungeからShibuya Milkywayへ一気に走り出す。1Fから3Fへと階段を駆け上がり、扉を開ける。そこには、すでに多くの観客が集まっていた。21:30、本日の大トリ、そして主催を務めるパキルカのライブが始まる。SEとともにメンバーが登場し、Vo.まじぇらんが拳を上に掲げる。その瞬間、音がピタリと止まった。一気に広がる緊張感。次に鳴る音を、観客全員が待ち構えているような空気が生まれる。オープニングナンバーは“毒林檎”。
一曲目から、パキルカらしさが全開だ。少し拗らせた女の子の感情や、可愛さの裏側にある毒気のようなものを、彼女たちはあくまでポップに鳴らしていく。その独特の世界観こそ、パキルカの魅力そのものなのだろう。
まじぇらんの声もまた、その世界観を形作る重要な要素だ。可愛らしさを持ちながら、どこか奥行きを感じさせる歌声。その声が耳に届くたび、心を揺さぶられると同時に、身体まで自然と跳ねてしまう。

これこそが、彼女たちの掲げる『パキる』という感覚なのかもしれない。続く“MISSION”、そして近年リリースされた“ポーカーフェイスできない”と、次々に楽曲を繰り出していく。赤と青のライトに照らされたフロアは、可愛くて、強くて、ポップ。それぞれの色が混ざり合い、パキルカの世界をさらに濃く浮かび上がらせていた。
一方、MCに入ると空気は一変し、「お前ら終電大丈夫かよ!」その呼びかけに観客が「イエーイ!」と返すと、「いや、イエーイは意味わかんない」とメンバーが反応し、そのやり取りに思わず笑いが起こる。そしてBa.りくが「2026年始まってますけど……」と話し始めれば、「それ8月で??」とメンバー間でツッコミが飛び交う。ステージ上ではあれほど強烈な音を鳴らしていた彼女たちが、MCでは無邪気にわちゃわちゃしていて、そのギャップもまた、パキルカのライブの面白さだ。何が起こるのか分からないからこそ、目が離せない。さらにりくは、「何を頑張ってるかと言われたら、何を頑張っているかわからないけど、ということは全部頑張っているんですね!」と笑顔で言い放つ。あまりにも明るく、あまりにも真っ直ぐな言葉で、難しいことを言っているわけではないのに、なぜか少し前向きになれる。そんなほっこりした空気感の中、まじぇらんがライブハウスという場所について語り始めた。「ライブハウスっていう場所が、数ある娯楽の中で唯一叫べる娯楽だと思っていて……」そして「私たちは魂をぶつけてんの!!!」と声を上げた。
その言葉を聞いた瞬間、こちらも魂をぶつけなければ、と思わされる。観客と演者が互いに魂をぶつけ合うことで生まれる空間。それこそが、ライブハウスという場所だけが持つ特権なのかもしれない。パキルカは、この日あらためてそのことを教えてくれた。
その言葉の直後に始まった“アイドレイン”。浮遊感のある音像の中を、力強く、そして目まぐるしいほどの早口で駆け抜けていくまじぇらんの声が、頭の中を支配していく。
どこか1990年代のポップスを思わせる懐かしさを帯びながらも、サウンドそのものはあくまで現代的だ。過去の音楽をそのままなぞるのではなく、懐かしい響きを現在の感性で組み替えているような音楽。その絶妙なバランスが、パキルカにしかない存在感を生み出している。そして“アイドレイン”から“酔いどれ”へ。

ここでは楽曲同士をただ繋ぐのではなく、クラブミュージックのようなセルフリミックスで大胆に展開していく。何が起きたのか理解するより先に、身体が反応してしまうような感覚だ。「なんだ、このリミックスは」思わずそう突っ込みたくなるほど、フロアの空気を一気に持っていく。さらに“酔いどれ”では、まじぇらんが観客のもとへダイブ。観客の上に乗った状態でも、歌声は崩れない。楽しませることだけに振り切っているように見えて、そこには確かな歌唱力とステージングの強さにもはや狂気すら感じてしまう。
その後にはロボットダンスまで披露し、Gt.しゅんから「お前そんな動きできるの?」とツッコミが飛ぶ。気がつけば、ライブも終盤へ。
キラーナンバー“えなじ~ぽっぷ”、“海鮮カーニバル”が始まると、フロアの熱量はもはやカンスト寸前だ。
“海鮮カーニバル”ではサークルが巻き起こり、ステージもフロアも関係なく、その場にいる全員が全力で楽しんでいる。最後に感謝を伝え、メンバーがステージから姿を消す。しかし、すぐさまアンコールが起こる。応えて始まったのは、ダンスナンバー“あふれてもいい”。最後の最後まで、観客に『パキる』を体感させてステージを締めくくった。
そして、この日のパキルカを見て何より強く感じたのは、彼女たちの「愛される力」だった。この日、2会場を跨いで開催されたパキフェスには、多くの出演者と観客が集まった。それは単に主催者だから人が集まった、というだけではないように思う。

パキルカ自身が出演者を愛し、フロアにいる人たちを愛し、そしてその姿勢がスタッフを含めた周囲にも伝わっている。だからこそ、出演者同士が交わり、観客が集まり、ひとつのフェスとして成立している。ステージ上では、可愛くて、強くて、少し毒があって、何をするか分からない。けれどステージを降りれば、人を楽しませることに真っ直ぐで、周囲から愛されている。そのすべてが混ざり合って生まれるものこそ、パキルカの『パキる』なのかもしれない。そして、彼女たちがそんな場所を作るからこそ、そこに集まった演者たちもまた、魂をぶつけて演奏をしていたのだろう。演者が魂をぶつけ、観客がそれを受け止め、またステージへと返していく。その循環が、この日のパキフェスという空間を作っていたように思う。
セットリスト
- 毒林檎
- MISSION
- ポーカーフェイスできない
- アイドレイン
- 私、
- 酔いどれ EDM selfremix
- えなじ〜ぽっぷ
- 海鮮カーニバル
- あふれてもいい?

PHOTO: フジ・ヘンドリックス、タナカミサ TEXT: 津田夢花









