らくがき音楽論 VOL.2:aiko

©︎琉栞

車内で「ボーイフレンド」を流していると、父に「お前、aikoなんて聴くのか」と驚いた顔をされた。

驚いたのは、むしろ私の方だった。

父の言い方は、「そんな昔の曲を聴くのか」というような響きだった。しかし私にとって「ボーイフレンド」は、昔の曲という感覚がまったくなかった。今でも街中やSNSで耳にするし、つい最近の曲だと思っていたのである。

気になって調べてみると、発売は2000年。なんと私が生まれる前の曲だった。

その事実に一番驚かされた。

“思わず歌の主人公に声をかけたくなってしまう”

約25年以上前に発表された曲を、生まれる前の世代が自然に口ずさんでいる。それは決して当たり前のことではない。

aiko は1998年にメジャーデビューして以来、およそ28年にわたって第一線で楽曲を発表し続けている。人が生まれて成人し、社会人として働くことにも慣れるほどの年月だ。その間ずっと愛され続けているという事実だけでも、彼女のすごさが分かる。

さて、ここからは私が好きなaikoの曲について話したい。

aikoといえば「カブトムシ」や「ボーイフレンド」を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、私が初めて覚えた曲はそのどちらでもなく、「もっと」だった。

この曲はドラマ『ダメな私に恋してください』の主題歌で、毎週聴いているうちに、気づけばカラオケで歌えるほど覚えていた。

私が「もっと」を好きな理由は、何より歌詞である。

冒頭は「嫌いになればいい 僕のことなんて忘れて」という一節から始まる。

切なすぎないだろうか。

「忘れられるわけないし、本当は忘れられたいなんて思っていないでしょう」と、思わず歌の主人公に声をかけたくなってしまう。

私が生まれる前の曲が、今の私の心にも届いている

さらに印象的なのが、

「枯れて行く季節に花があって ずっと鮮やかで立っているから 摘んで僕だけのものにしたくて ちぎった所から黒くなって」

という歌詞だ。

私はこれを、人の独占欲を描いた歌詞だと受け取った。

aikoの好きなところは、人の少し醜い感情を、美しい言葉へと変えてしまうところだ。

嫉妬や執着、独占欲。本来なら誰にも見せたくないような感情なのに、aikoの歌になると不思議と優しく、美しく響く。そして、自分も同じような気持ちになったことがあると気づいた時、「こんな感情を抱いてしまうのは私だけじゃない」と少しだけ救われる。

aikoはファンから、人柄の良さを語られることが多い。

もちろん、歌詞は創作であり、作品と作者を単純に結びつけることはできない。それでも、人の心をここまで繊細に描けるのは、人をよく見て、人の気持ちを大切にしている人だからなのではないかと思う。

だからこそ、28年もの間、多くの人の心に寄り添う歌を届け続けられるのだろう。

私が生まれる前の曲が、今の私の心にも届いている。

きっとこれから先も、aikoの歌は世代を越えて歌い継がれていくのだと思う。

ILLUSTRATION & TEXT: 琉栞

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