
『DECO*27は5人いる』。SNSで見たこの言葉に、私は思わず深く頷きながらいいねを押した。
DECO*27 は、VOCALOIDなどの音声合成ソフトを用いて楽曲制作を行う“ボカロP”の一人である。ボカロ文化に触れてきた人なら、一度は彼の曲を耳にしたことがあるだろう。日本には多くのボカロPが存在し、たとえば Kenshi Yonezu も、かつては「ハチ」という名義で活動していた。また、Ado の代表曲『うっせぇわ』を制作したのも、ボカロPの syudou である。
VOCALOIDの魅力は、人間の声では難しい表現まで可能にする自由度の高さにある。高音や早口のフレーズも自在で、その独特な表現力がボカロ文化を広げてきた。
さて、ここからは私が感じるDECO*27の魅力について話したい。
繰り返しが生む、抜け出せない中毒性
まず印象的なのが、何度も聴きたくなる中毒性のあるテンポ感だ。彼の楽曲には、つい口に出したくなるようなフレーズが多い。たとえば『独占欲』の「バカな バカな バカな バカな君はすでにお仕舞い ドンマイマイ」という歌詞。私が初めてこの曲を聴いたのは小学校高学年の頃だったが、「ドンマイマイ」という言葉が妙に頭に残り、つい日常でも使いたくなったのを覚えている。
この“繰り返し”は、DECO*27の楽曲を特徴づける大きな要素だと思う。YouTubeで再生回数1億回を突破した『モニタリング』でも、「ビクンビクン震えてさ」「普通普通恥ずかしい?」「グスングスン凹んでさ」といったように、同じ言葉を重ねる表現が多く使われている。ただ単語を繰り返しているだけなのに、不思議と耳に残り、気づけばまた聴きたくなってしまう。
こうした特徴的な言葉選びやメロディには、いわゆる“DECO*27節”のようなものがある。イラストレーターに絵柄があるように、彼の音楽にも「この人の曲だ」と分かる個性があるのだ。
楽曲同士が呼び合う、シリーズという仕掛け
また、DECO*27の楽曲には“シリーズ性”が多いことも魅力の一つである。
代表的なのが『愛言葉』シリーズだ。現在までに4作品発表されており、歌詞には過去曲のフレーズや表現が数多く引用されている。昔から追っているファンほど、「あの曲の歌詞だ」と気づける瞬間があり、そのたびに懐かしさや感動を味わえる。
さらに、『ゴーストルール』と『ヒバナ』の関係も印象的だ。一見すると別々の楽曲だが、『ヒバナ』を聴くと『ゴーストルール』へのアンサーソングのように感じられる。実際にDECO*27本人も、『「ヒバナ」は、もともとは「ゴーストルールⅡ」として作った曲ですね。仮タイトルもそのまま「ゴーストルールⅡ」で、「あの曲を聴いてくれてありがとう」という気持ちを込めた曲でした。』(https://realsound.jp/2019/05/post-360254_3.html/amp )』と語っている。
また、代表曲『弱虫モンブラン』は公開10周年を記念して『弱虫モンブラン (Relocated)』が発表された。長年楽曲を聴いてきたファンにとっては、まさに“ご褒美”のような出来事だった。
近年の楽曲『モニタリング』にも面白い仕掛けがある。後に公開された『モニタリング (Best Friend Remix)』では、最初の楽曲で“ストーカーのように見えていた女の子”が、実は友人として心配して訪ねてきていた、という別視点の物語として描かれている。同じ楽曲をベースにしながら、解釈が大きく変わる構成に驚かされた。
こうしたシリーズ楽曲や過去曲との繋がりこそが、DECO*27の人気を支えている理由の一つではないだろうか。
新参者もベテランも、それぞれの入口がある
昔からのファンは、新曲の中に過去曲の要素を見つけて楽しめる。一方で、新しく聴き始めた人は、新曲をきっかけに過去の楽曲へ興味を持つ。シリーズを辿るうちに、自然とDECO*27の世界観に引き込まれていくのだ。
一度ハマると、もっと深く知りたくなる。
DECO*27とは、そういう音楽家なのである。

ILLUSTRATION & TEXT: 琉栞






