[響き合うコーヒーと音楽の世界]第2回:イルガチェフェ

毎回一つのコーヒー銘柄にスポットを当て、その魅力とともに、そのコーヒーに合う、あるいはそのコーヒーからインスパイアされた音楽を10曲ご紹介するこのコラム。コーヒーを淹れる時間、そして音楽に身を委ねる時間。どちらも私たちの日常に、ささやかながらも確かな喜びをもたらしてくれます。このコラムが、皆さんのコーヒータイムや音楽鑑賞の時間をより豊かなものにする一助となれば幸いです。


さて、第二回となる今回、選んだコーヒーは、その華やかな香りで多くの人々を魅了する「イルガチェフェ」です。

イルガチェフェは、コーヒーの起源とされるエチオピアの南部、シダモ地方のさらに限られた地域で栽培される特別なコーヒーです。豊かな高地、適度な降雨量、そして肥沃な土壌といった、コーヒー栽培に理想的な環境が、イルガチェフェ独特の繊細でフローラルな風味を育みます。

イルガチェフェの多くは「水洗式(ウォッシュド)」と呼ばれる精製方法で処理されます。これは、コーヒーチェリーの果肉を除去した後、豆を水に浸して発酵させ、残りの粘液質を取り除き、乾燥させるという方法です。この丁寧な工程を経ることで、豆本来のクリーンな味わいと、透明感のある華やかな香りが際立ちます。

カップに口を近づけると、ジャスミンやベルガモット、あるいは紅茶のような上品な香りがふわりと広がります。口に含むと、滑らかな口当たりとともに、柑橘系の爽やかな酸味と、フローラルな甘みが優しく広がります。後味はすっきりとしながらも、長く続く繊細な香りの余韻が楽しめます。ブラックでその個性をじっくりと味わうのはもちろん、少量のミルクとも相性が良く、その風味を損なうことなく楽しむことができます。

イルガチェフェにそっと寄り添う10の音楽

イルガチェフェの持つ、明るく、そして透明感のある華やかな香りは、軽やかで心地よいメロディや、自然の息吹を感じさせるような音楽と見事に調和します。今回は、イルガチェフェの持つ「フローラル」「シトラス」「透明感」といったキーワードを軸に、さまざまなジャンルから10曲を選んでみました。

Claude Debussy「Clair de Lune」
ドビュッシーの「月の光」は、イルガチェフェの持つ繊細で透明感のある美しさと共鳴します。ピアノの優しい旋律は、イルガチェフェを口にしたときの、優しく包み込まれるような感覚と似ています。

The Beatles「Here Comes the Sun」
ビートルズのこの曲の持つ明るさと希望に満ちた雰囲気は、イルガチェフェの爽やかな酸味と、口の中に広がる喜びを表現しているかのようです。晴れた日の朝に、イルガチェフェとともに聴きたい一曲です。

Johann Pachelbel「Canon in D Major」
パッヘルベルの「カノン」は、その流れるような美しい旋律が、イルガチェフェの持つ滑らかな口当たりと、透明感のある味わいを連想させます。穏やかな午後のひとときに、心を落ち着かせてくれるでしょう。

Enya「Watermark」
エンヤの神秘的で透明感のある歌声は、イルガチェフェの持つピュアなイメージと重なります。自然の音を取り込んだようなサウンドは、イルガチェフェが育まれたエチオピアの豊かな自然を思い起こさせます。

Yann Tiersen「La valse d’Amélie」
映画『アメリ』のテーマ曲は、軽快で遊び心のあるメロディが、イルガチェフェの持つ明るさや、ほんのりとした甘さを引き立てます。午後のティータイムに、イルガチェフェとともに楽しみたい一曲です。

Louis Armstrong「What a Wonderful World」
「マンデリン」の回に続き、再びルイ・アームストロングのこの曲を選びました。イルガチェフェの持つ、世界を優しく見つめるような透明感のある味わいは、この曲の持つ普遍的な温かさと共鳴します。

Simon & Garfunkel「The Sound of Silence [Acoustic Version]」
この楽曲は、そのシンプルで繊細な音色が、イルガチェフェの持つクリーンな味わいを際立たせます。静かな夜に、じっくりと味わいたい組み合わせです。

Mulatu Astatke「Kasleflut Hulu」
イルガチェフェの故郷、エチオピアのジャズは、独特の旋律とリズムが、この地の風土や文化を感じさせてくれます。イルガチェフェを飲みながら、そのルーツに思いを馳せるのも素敵な時間です。

Yiruma「River Flows in You」
イルマのピアノ曲は、その叙情的で美しい旋律が、イルガチェフェの持つ繊細な香りと味わいを引き立てます。心静かにコーヒーと音楽に向き合いたい時に選びたい一曲です。

Sting「Fields of Gold」
スティングの優しい歌声と、アコースティックギターの音色は、イルガチェフェの持つ穏やかさと、自然の恵みを感じさせる風味と調和します。夕暮れ時に、ゆっくりと楽しみたい組み合わせです。

イルガチェフェと音楽が奏でる清らかな時間

イルガチェフェの持つ、透明感あふれる華やかな風味は、さまざまなジャンルの音楽と心地よく響き合います。今回選んだ10曲は、イルガチェフェの持つ明るさ、繊細さ、そして自然を感じさせる要素を意識してみました。

ぜひ、淹れたてのイルガチェフェを片手に、このプレイリストを聴いてみてください。口の中に広がるフローラルな香りと、音楽の奏でる心地よい旋律が、日々の喧騒から離れ、清らかな時間へと誘ってくれるはずです。

リトル・パウ:音楽が生活の中心にあるライター。日々の暮らしの中で、音楽をより豊かにしてくれる素敵なものとの出会いを大切にしています。コーヒー、ウイスキー、そして猫が好き。これらは私の創作活動に欠かせないインスピレーションの源です。心に響く音色とともに、皆さんの日常に彩りを添える情報をお届けできたら幸いです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!