
トルコ・イスタンブール出身、現在はスコットランド・グラスゴーを拠点に活動する作曲家/ソングライター、Isik Kural(イシク・クラル)が、2026年10月30日にリリースするニュー・アルバム『Motorcycles and Cherry Wind』から、最後の先行シングル「Many Only Manolyas」をミュージック・ビデオとともに公開した。映像を手がけたのはイタリア人映像作家のDebora Maité。子守唄のように柔らかなメロディと、記憶や幻想が交錯する映像によって、Kuralならではの詩的な世界が描き出されている。アルバムは米国のレーベル〈RVNG Intl.〉から発売され、日本では〈PLANCHA〉よりボーナス・トラック2曲を追加したCDもリリースされる。
子守唄のようなメロディに、Danny Brownから古代ギリシャの詩までが溶け合う
新たに公開された「Many Only Manolyas」は、繰り返されるギターのフレーズと温かな木管楽器の響きが重なり合う、牧歌的で軽やかなアンビエント・ポップだ。
柔らかなメロディがゆっくりと漂うサウンドには、どこか幼い頃に聴いた子守唄を思わせる親密さが宿っている。一方で、その音楽的な着想源は驚くほど幅広い。
ヒップホップ・アーティストDanny Brownの跳ねるようなリズム感、ブラジル音楽の巨匠João Gilbertoが1973年に発表したセルフタイトル作、通称「ホワイト・アルバム」の親密な空気感、さらには古代ギリシャの女性詩人サッポーの詩まで。時代も地域も異なる表現が、Kuralの繊細な感性を通じてひとつの楽曲へと結びついている。
同時公開されたミュージック・ビデオは、イタリア人映像監督Debora Maitéが監督・編集を担当。自然観察の記録とベッドタイム・ストーリーを組み合わせたような映像を通じて、現実と空想、記憶と想像の境界を行き来する。
Maitéはこの作品を「自然観察のフィールドガイドであり、同時にベッドタイム・ストーリーでもある」と表現。半ば忘れられた神話のような遊び心を交えながら、人間が自然界を観察し、記録し、理解しようとする衝動を映像化している。
マラケシュの街角から古代遺跡へ。旅の記憶を音楽に変えた新作
10月30日にリリースされる『Motorcycles and Cherry Wind』は、Kuralにとって通算4作目となるフルアルバム。
その着想の原点は、2022年に訪れたモロッコ・マラケシュでの体験にある。街を行き交う人々のざわめきや、土地に漂う匂い、光、風景。Kuralが関心を寄せたのは、旅先の出来事を正確に記録することではなく、その瞬間に感じた感覚を音として残すことだった。
アルバムには、イスタンブールの乗合バス「ドルムシュ」で録音した環境音や、古代リュキア地方で泳いだ後の記憶、スコットランドのブリッジ・オブ・アランで採集した鳥のさえずりなど、さまざまな土地で蓄積された音の断片が織り込まれている。
そうしたフィールド・レコーディングに、ピアノ、ギター、木管楽器、弦楽器などの繊細なアレンジが重なり、フォーク、アンビエント、実験音楽の境界を行き交う独自のサウンドスケープを形成している。
本作にはブラジル、アルゼンチン、イタリア、北マケドニア、スペイン、イングランド、ドイツ、トルコなどにルーツを持つ9人の音楽家が参加。異なる文化的背景を持つ演奏家たちの音が、Kuralの拠点であるグラスゴーでひとつの作品へと結実した。
フィールド・レコーディングとフォークが交差する、Isik Kuralの音楽世界
Isik Kuralは、10代の頃にナイロン弦ギターを手に音楽制作を開始。日常の中で偶然耳にした会話や言葉を歌詞に取り入れるなど、早くから独自の作曲スタイルを育んできた。
その後、マイアミ大学で音楽を学び、ニューヨークでの生活を経てグラスゴーへ移住。グラスゴー大学ではサウンド・デザインとオーディオヴィジュアル・プラクティスの修士課程を修了している。
2019年にファースト・アルバム『As Flurries』を発表し、2022年にはRVNG Intl.からセカンド・アルバム『in february』をリリース。偶然生まれた音のループや環境音、親密な歌声、文学作品からの引用などを組み合わせた独創的な音楽性で注目を集めた。
2023年にはインストゥルメンタルEP『peaches』、2024年にはサード・アルバム『Moon in Gemini』を発表。後者では、それまでの実験的なサウンドデザインを発展させながら、より歌や声を前面に押し出した表現へと進化を遂げている。
今回の『Motorcycles and Cherry Wind』では、そうした音楽的探究をさらに広げ、旅の記憶や民間伝承、古代の風景といったモチーフを通じて、時間や場所を超えた音の物語を紡ぎ出している。
過去の記憶と、まだ見ぬ風景をつなぐ12の音楽
『Motorcycles and Cherry Wind』に収められた楽曲は、いずれも具体的な場所や体験に着想を得ながら、聴き手の想像力によって異なる風景を浮かび上がらせる。
鳥の声や街の喧騒、古い旋律の断片。それらは単なる効果音や装飾ではなく、楽曲を形作る重要な要素として機能している。
過去に触れた音を現在の感覚で再構築し、個人的な記憶を誰もが入り込める音楽へと変えていく。そのアプローチは、現代のアンビエントやエクスペリメンタル・フォークが持つ可能性を改めて感じさせるものだ。
日本盤CDには、オリジナルの12曲に加え、「Phaselis to Olympos」「Waiting for the Night Sky Train」の2曲をボーナス・トラックとして収録。解説、歌詞、対訳も付属予定となっている。
日常のささやかな音に耳を澄ませ、忘れかけていた記憶を呼び起こす。Isik Kuralの新作は、そんな静かな音楽体験を届けてくれる一枚となりそうだ。

RELEASE INFORMATION
Isik Kural – Many Only Manolyas
- フォーマット:デジタル・シングル
- レーベル:RVNG Intl. / PLANCHA
- 配信・試聴:https://orcd.co/y23jmyn

ALBUM INFORMATION
Isik Kural – Motorcycles and Cherry Wind
- 発売日:2026年10月30日
- レーベル:RVNG Intl. / PLANCHA
- フォーマット:CD / Digital
- 品番:ARTPL-268
- 国内盤CD価格:2,200円+税
- 国内盤仕様:ボーナス・トラック2曲収録、解説・歌詞・対訳付き予定
TRACKLIST
- Olives
- Iki Kadikoy
- Motorcycles and Cherry Wind
- Many Only Manolyas
- Altinoluk
- A Single Bee On a Meadow
- Vanilla Custard
- Winter Sun
- And a Petaled Side of a Road
- Under the Canopy
- Eliyana
- Eliyana ve Sonra Ay
- Phaselis to Olympos(日本盤ボーナス・トラック)
- Waiting for the Night Sky Train(日本盤ボーナス・トラック)
