サイバーパンクとソーラーパンクが交差する未来のダンスフロア ── Julien Testu、新作アルバム『16』で描くハウスミュージックの新境地

フランスのエレクトロニック・ミュージックを思わせるメロディアスな感性と、サイバーパンクの未来的な世界観。そこにアシッド・ハウスの刺激的なグルーヴが加わったら、どんな音楽が生まれるのだろうか。Julien Testuが2026年10月1日にリリースしたニューアルバム『16』は、そんな異なる美学の交差点を探求する意欲作だ。全14曲、約63分にわたる本作は、同年2月に発表された前作『15』をさらに発展させた作品。メロディック・ハウスを軸に、レトロ・シンセウェイヴ、アシッド・ハウス、さらにはネオクラシカルまでを横断し、エレクトロニック・ミュージックの多様な可能性を描き出している。

アシッド・ハウスとサイバーパンクが融合する、電子音楽の未来像

『16』の中心にあるのは、ハウスミュージックのグルーヴと、印象的なメロディを組み合わせたメロディック・ハウスのアプローチだ。

なかでも「Musicall」「LLAknup」「Allbum」といった楽曲では、アシッド・ハウスの要素が前面に押し出され、アルバムに鋭い電子的な質感を与えている。

一方、「Meaning of Cyber」に象徴されるのは、サイバーパンクやレトロ・シンセウェイヴの美学。未来都市を連想させる電子音と、どこか懐かしさを感じさせるシンセサイザーの響きが共存し、過去に想像された未来を現代のダンスミュージックとして再構築している。

こうしたサウンドの背景にあるのは、単なるジャンルの融合だけではない。テクノロジーが支配する都市の冷たさと、電子音楽が持つ人間的な高揚感。その対照的な感覚をひとつの作品に共存させようとする試みが、本作の大きな特徴となっている。

「Frutiger Aero」が描く、もうひとつの未来

『16』を興味深い作品にしているのが、サイバーパンク的な世界観と対照をなす、明るく有機的なサウンドの存在だ。

「Digitropical」「On Veut Delà-Au」「Re Bel Vie」では、温かみのある豊かな音色が取り入れられ、アルバム全体に柔らかな表情を与えている。

さらに「Frutigall」「Liminal Holiday」では、2000年代のデジタルデザインを象徴する美学「Frutiger Aero(フルティガー・エアロ)」を思わせる世界観を展開する。

Frutiger Aeroとは、透明感のあるガラスの質感、鮮やかな青空や水、自然とテクノロジーが調和する未来像などを特徴とするデザイン美学。近年、インターネット文化の中で再評価されている表現スタイルのひとつだ。

Julien Testuは、こうした明るく楽観的な未来のイメージを、サイバーパンクの暗く無機質な世界観と対比させる。

冷たいネオンが照らす未来都市と、自然とテクノロジーが共存するユートピア。相反するふたつの未来像を音楽の中で行き来する構成は、『16』の独特な魅力と言えるだろう。

ネオクラシカルからフレンチ・タッチまで。14曲に宿る緻密な構築美

ジャンルを横断する一方で、本作には細部まで計算された構成上の特徴もある。

そのひとつが、すべての収録曲の演奏時間が「4分00秒」「5分00秒」「6分00秒」といった、秒数の端数を持たない長さに設定されていることだ。

偶然とは思えないこの徹底した時間設計は、作品全体に通底する精密さを象徴している。ダンスミュージックが持つ反復性や規則性を、楽曲の構造そのものにまで反映させたアプローチとも捉えられる。

また、アルバム6曲目の「13C」は、ネオクラシカルの要素を取り入れた楽曲。ハウスやシンセウェイヴとは異なる音楽的なアプローチを通じて、Julien Testuのメロディへのこだわりを浮かび上がらせている。

こうした多彩な音楽性を貫くキーワードが「フレンチ・タッチ」だ。

フレンチ・ハウスの系譜に通じる洗練されたメロディ感覚と、電子音楽ならではの実験性。『16』では、その精神を特定のスタイルに限定することなく、さまざまなジャンルへと拡張している。

前作『15』からわずか8か月。さらに進化した「バージョン2.0」

2026年2月1日にリリースされた前作『15』から、約8か月という短い期間で届けられた『16』。その関係性について、リリース資料では本作を『15』の「バージョン2.0」と位置づけている。

前作で提示した音楽的な方向性を引き継ぎながら、より複雑な技術的アプローチと、緻密に構築されたメロディを追求。サウンドの振れ幅もさらに大きくなり、アルバム全体を通じて多様な音楽的表現が展開されている。

アシッド・ハウスの刺激、シンセウェイヴのノスタルジー、ネオクラシカルの叙情性、そしてFrutiger Aeroが象徴する楽観的な未来像。それぞれ異なる方向を向いた要素を、メロディック・ハウスという共通言語によって結びつけたのが『16』だ。

過去の電子音楽が思い描いてきた未来と、現代のデジタルカルチャーが再発見した未来。その両方を行き来しながら、Julien Testuはダンスミュージックの新たな風景を描こうとしている。

『16』は、単なるジャンルの寄せ集めではなく、異なる時代の未来観をひとつのサウンドスケープへと接続する作品だ。そこには、電子音楽が持つ想像力の豊かさと、まだ見ぬ世界への好奇心が息づいている。

RELEASE INFORMATION

Julien Testu – 『16』

  • リリース日:2026年10月1日
  • 収録曲数:全14曲
  • 収録時間:約63分
  • ジャンル:Melodic House / Acid House / Synthwave / Electronic

アーティスト公式リンク

SoundCloud:https://soundcloud.com/julientestu

YouTube:https://www.youtube.com/@julientestu

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