天国へ生きたまま連れていけ ── Horse Lords、実験音楽の新たな到達点『Demand to Be Taken to Heaven Alive!』を発表

米ボルチモア発のエクスペリメンタル・ロック・カルテット、Horse Lordsが、ニュー・アルバム『Demand to Be Taken to Heaven Alive!』を6月12日にリリースする。その発売を目前に控え、最後の先行シングルとなるタイトル・トラック「Demand to Be Taken to Heaven Alive!」がミュージックビデオとともに公開された。

理性を揺さぶり、身体を解放するタイトル曲

アルバムを象徴するタイトル曲は、アルトサックス、ヴォイス、ギター、エレクトロニクスが重層的に絡み合いながら、強靭なバックビートの上で展開される圧巻の一曲だ。

作曲家Arnold Dreyblattとの共同制作から生まれたアイデアを起点に、周波数変調合成やクウェートの伝統的なハンドドラム「ミルワス」のリズムを取り込みながら、知的でありながら本能的なグルーヴを生み出している。複雑な構造を持ちながらも、その音楽は驚くほどフィジカルで、聴き手の身体を自然と動かしてしまう。

光と色彩が踊る映像作品

同時公開されたミュージックビデオは、アーティストのDan Conradによる光のインスタレーション作品「Chromaccord」を中心に制作された。

1970年代に開発されたというこの視覚楽器は、色彩をリアルタイムで変化させながら音楽と共演するための装置。今回の映像ではLED技術によって再構築され、楽曲の展開に合わせて色彩が呼吸するように変化していく。音楽と光が相互作用するその映像は、Horse Lordsのサウンド世界を視覚的に拡張する作品となっている。

ユートピアと現実の狭間を旅するアルバム

全12曲で構成される『Demand to Be Taken to Heaven Alive!』は、単なる楽曲集ではない。各楽曲が複雑に結びつき、断片が別の楽曲へと変換され、再び現れることで、一つの巨大な構造体を形成している。

アルバムには「First Galactic Utopia」「Second Galactic Utopia」「A City Yet To Come」といったタイトルが並び、理想郷や変容への希求が繰り返し語られる。一方で、「After the Last Sky」ではパレスチナの詩人Mahmoud Darwishの作品から着想を得るなど、現実世界の複雑さにも真正面から向き合っている。

Horse Lordsは本作について、「現状に挑戦し、聴き手に解放への道筋を示す音楽を作りたい」と語る。その姿勢は、政治や社会を直接語るのではなく、音楽そのものを通じて新たな視点を獲得させる試みとして表れている。

実験音楽とロックの境界を越え続ける存在

2010年にボルチモアで結成されたHorse Lordsは、ルネサンス期の対位法、ジャスト・イントネーション、ミニマリズム、ポリリズム、即興演奏といった多様な要素を独自の方法論で結びつけてきた。

そのサウンドは一見すると難解に思えるかもしれない。しかし彼らの音楽が特異なのは、極めて高度な構造を持ちながらも、ダンスミュージックにも通じる強烈な身体性を失わないことにある。

本作では初めて本格的にヴォーカルを導入し、これまで以上に開かれた表現へと踏み出した。知性と恍惚、秩序と自由、現実と理想。その境界線を揺るがしながら進化を続けるHorse Lordsにとって、『Demand to Be Taken to Heaven Alive!』は新たな代表作となるだろう。

聴くたびに景色が変わり、理解したと思った瞬間に再び謎が深まる。そんな稀有な体験をもたらすアルバムが、まもなくその全貌を現す。

Artist: Horse Lords
Title: Demand to Be Taken to Heaven Alive!

Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-257
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.06.12
Price(CD): 2,200 yen + tax

※解説:野田努 (ele-king)

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