未来は“共鳴”から立ち上がる ── MUTEK Forum 2026が描く「Symbiotic Frequencies」

デジタル・クリエイティビティの最前線を横断するプラットフォーム、MUTEK Forumが2026年もモントリオールに帰還する。今年のテーマは「Symbiotic Frequencies(共生する周波数)」。音楽、AI、XR、エコロジー、そして身体性 ── あらゆる領域が交差する現在において、“共鳴”そのものを再定義する3日間が幕を開ける。

境界が溶ける時代のインターフェース

2026年のフォーラムは、単なるカンファレンスではない。アーティスト、研究者、エンジニア、キュレーターが集い、テクノロジーと文化の関係性を“実験”する場だ。

今年は会場を新たに、市内の文化拠点であるパフォーミングアーツ施設へと拡張。さらに、クリエイターと国際的なプレイヤーを結びつける「MUTEK Market」も大幅にスケールアップし、1対1のマッチメイキングを軸とした実践的なネットワーキングが強化される。

AI神話を解体する ── 知性とは誰のものか

プログラムの核のひとつが、「知性」をめぐる再考だ。

アーティスト/研究者のMindy Seuは、インターネットの“性的起源”をテーマにした講義型パフォーマンスを展開。さらに、メディアプラットフォームNew Modelsは、アルゴリズムと“ヴァイブ”が支配する新たな情報環境を読み解く。

また、アーティストZach Blasは、AIと宗教性の関係に切り込み、シリコンバレー的テクノロジー観に潜む無意識を暴く。

ここでは、AIは単なる技術ではなく、“信仰”や“神話”として解体される対象となる。

ストーリーを書き換える、先住的視点

もうひとつの重要な軸が、物語と記憶の再構築だ。

モントリオール拠点のアーティストCaroline Monnetは、アナログとデジタルのあいだで失われるもの/残るものを探求。さらに映像作家Tracy Rectorは、ARを用いたプロジェクトで美術史の語りを再編する。

既存の歴史や制度に埋め込まれたナラティブを問い直すことで、“未来の文化”の輪郭が浮かび上がる。

サウンドシステムは身体で聴く哲学へ

音響文化もまた、大きな焦点となる。

サウンドエンジニア/プロデューサーのFait Pomsは、スピーカー設計を通じてマージナルな声を拡張する実践を共有。さらにアーティストTati au Mielは、振動や電磁波を含む“身体的リスニング”を体験させるワークショップを展開する。

ここでの音は、単なる聴覚情報ではない。触覚や空間、コミュニティと結びついた“身体的な出来事”として扱われる。

創作のプロセスを解体する

フォーラムは完成品ではなく、“過程”にも光を当てる。

アーティスト主導のワークショップやマスタークラスでは、制作手法や思考プロセスが開示されるほか、未発表作品を共有するセッションも実施。さらに音楽産業におけるAIやサステナビリティといった課題にも踏み込む。

つまりここは、未来を語る場ではなく、未来を“作る現場”なのだ。

フェスティバルとの共振、拡張するエコシステム

同時期に開催される音楽プログラムでは、Jeff MillsやMatthew Herbertをはじめ、世界各地の先鋭的アーティストが集結。

フォーラムとフェスティバルが連動することで、思考と体験がシームレスに接続される構造が生まれる。


「Symbiotic Frequencies」が示すのは、もはや個別の領域では語れない時代の姿だ。
テクノロジー、身体、社会、そして音。

それらが絡み合う“周波数”の中で、MUTEKは今年もまた、新しい現実のプロトタイプを提示していく。

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