[響き合うコーヒーと音楽の世界]第22回:モカハラー

こんにちは、リトル・パウです。今回、私が皆様をご案内するのは、コーヒー発祥の地エチオピアが誇る「モカハラー」の世界です。

「モカ」の名を冠するコーヒーの中で、イエメンのモカマタリと並び称されるのが、エチオピア東部のハラー地方で育まれるこの豆です。古来から行われてきた非水洗式(ナチュラル)精製により、その風味は非常に個性的で野性的です。厳しい乾燥地帯で育つため、豆の持つ甘みとアロマがギュッと凝縮されています。

モカハラーの最大の魅力は、その豊かでワイルドなアロマと、ドライフルーツのような甘みです。

カップに注ぐと、ベリーやワイン、そしてチョコレートのような複雑で強烈な香りが立ち上ります。一口飲むと、どっしりとしたコクと、他の豆にはない乾燥した果実(干しぶどうやブルーベリー)のような強い甘酸っぱさが口の中に広がります。酸味は華やかというよりは熟成されたような風味を帯び、長く残る余韻は、まるで大地が持つ力強いエナジーを感じさせてくれます。その味わいは、まさに「野生」と「熟成」を兼ね備えた、個性的な一杯と言えるでしょう。

モカハラーに寄り添う10の音楽

モカハラーが持つ、野性的なコク、ドライフルーツのような熟成した甘さ、そして異国情緒あふれる雰囲気にインスパイアされた10曲を選んでみました。これらの楽曲が、この個性的な一杯をさらに引き立ててくれるはずです。

Stereolab「French Disko」
ノイジーでありながら、フレンチポップの持つ洗練されたメロディラインが同居するこの楽曲は、モカハラーの持つ野性的でありながら、熟成されたフルーツのようなエレガントな甘さのコントラストを表現しています。知的なグルーヴに乗せて風味の多層性を楽しむことができるでしょう。

Frédéric Chopin「Prelude in E Minor, Op. 28, No. 4」
短調の旋律が奏でる優美でどこか憂いを帯びたピアノの響きは、モカハラーの持つ、熟成された酸味と、その奥に潜む深いコクに共鳴します。クラシック音楽の持つ緻密な美しさが、コーヒーの複雑な構造を際立たせてくれます。

The Magnetic Fields「The Book of Love」
アコースティックで静かに語りかけるようなメロディと、知的でウィットに富んだ歌詞は、モカハラーの飲む人を包み込むような深いコクと、静謐な雰囲気に調和します。派手さはないものの、深く心に響く上質な時間をコーヒーと共に過ごせるでしょう。

Neil Young「Harvest Moon」
優しく爪弾かれるギターの音色と、素朴で温かいメロディは、モカハラーが育まれた大地の恵みと、コーヒーの持つ深いカカオのような甘さを表現しています。穏やかな夜長に、心を癒す一杯に寄り添い、深い安らぎを与えてくれるでしょう。

Stacey Kent「The Changing Lights」
まるで清流のような透明感のあるクリアな歌声と、流れるようなジャズボッサのリズムは、モカハラーの持つドライフルーツの甘さと、優雅で洗練された風味に完璧に調和します。熟成されたコーヒーの味わいを、より軽やかに、心地よく楽しませてくれるでしょう。

Hammock「Breathturn
幾重にも重ねられたギターの音が作り出す、荘厳で美しいアンビエントサウンドスケープは、エチオピアの広大な風景、そしてモカハラーの持つ神秘的で野性的な味わいを完璧に表現しています。耳を澄ませて飲むことで、コーヒーの持つ複雑なアロマがより高められるのを感じるでしょう。

Yann Tiersen「La Valse D’Amélie」
アコーディオンやピアノが奏でる優しく、どこかノスタルジックなワルツのメロディは、モカハラーの持つ深いコクと、飲む人に安らぎを与える温かさに共鳴します。異国情緒を感じるコーヒータイムに、心温まる親密な時間を与えてくれるでしょう。

DJ Shadow「Midnight in a Perfect World」
内省的でメロウなビートと、静かに重ねられるサンプリングのレイヤーは、モカハラーの持つ、野生的でありながら、その奥底に潜む複雑なコクと深みを表現しています。夜の静かなコーヒータイムに、思索的な時間と、都会的な洗練を与えてくれるでしょう。

Nils Frahm「Says」
ミニマルで静謐なピアノの響きと、エレクトロニクスが作り出す静かな高揚感は、モカハラーの繊細な風味を邪魔することなく、むしろ際立たせてくれます。優雅で、無駄のないシンプルさが、この個性的なコーヒーの本質と深く重なります。

Michael Bublé「Feeling Good」
力強くも洗練されたマイケル・ブーブレの歌声と、ビッグバンドジャズの華やかなアレンジは、モカハラーの持つドライフルーツの甘さと、飲む人を優しく包み込むような幸福感に調和します。コーヒーを飲み終えた後の、穏やかでポジティブな余韻を楽しませてくれる、大人のためのエンディングトラックです。

モカハラーと音楽が紡ぐ、野生の刻

モカハラーの持つ、野性的で熟成された風味は、深く情熱的で洗練された音楽と心地よく響き合います。今回選んだ10曲は、このコーヒーが持つ、飲む人に「個性」と「発見」をもたらす魅力を意識してみました。

ぜひ、今日丁寧に淹れたモカハラーを片手に、このプレイリストを聴いてみてください。芳醇な香りが立ち上るカップから一口味わうごとに、音楽の力強い旋律があなたの五感を刺激し、日々の活力を与え、心地よい高揚感へとあなたを引き込んでくれるでしょう。

リトル・パウ:音楽が生活の中心にあるライター。日々の暮らしの中で、音楽をより豊かにしてくれる素敵なものとの出会いを大切にしています。コーヒー、ウイスキー、そして猫が好き。これらは私の創作活動に欠かせないインスピレーションの源です。心に響く音色とともに、皆さんの日常に彩りを添える情報をお届けできたら幸いです。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!