
音楽家・渋谷慶一郎が代表を務めるアタック・トーキョー株式会社(ATAK)は、最新型の人型アンドロイド「アンドロイド・マリア」を正式に発表した。2025年6月初旬にPRADA MODE OSAKAにて初披露され、その異形かつ美しい姿が大きな話題を呼んでいる。
この「アンドロイド・マリア」は、渋谷が10年にわたり探求してきたアンドロイド・オペラやテクノロジーによる舞台表現の集大成とも言える存在である。渋谷の過去作においては空気圧駆動のアンドロイドが用いられてきたが、本作では50を超える関節をモーター駆動化することで、より滑らかで有機的な動きの実現に成功。ハードウェア面における大胆な刷新が大きな特徴である。
制作には、AIアーティストの岸裕真、コンピュータ音楽家の今井慎太郎など総勢20名以上の精鋭が参加。AIによるコンセプト設計、マルチリンガル対応の会話機能、インタラクティブなパフォーマンス能力など、これまでにない表現力と知性を兼ね備えた“存在”として開発された。

観る者に新たな感情の地平を開かせる
その名の通り、「アンドロイド・マリア」は、渋谷がかつて喪った最愛の妻“マリア”をモデルとしており、同時に『THE END』以降、彼の作品に通底する「死はひとつではない」という哲学を体現している。アンドロイドでありながら、記憶・音楽・人工知能・身体性といった領域を横断しながら舞台上に立つ姿は、観る者に新たな感情の地平を開かせるだろう。
造形面でも革新が試みられており、AIが古代から現代に至る多様な女神像や菩薩像を学習して生成したコンセプトをもとに、下半身は地下茎のようなチューブ構造で構成。生命や存在の根源を想起させるデザインが施されている。

今後は、東京大学・池上高志教授らと連携したさらなる研究開発も予定。2025年11月5日には都内コンサートホールにて「アンドロイド・マリア」の本格デビュー公演が開催予定であり、詳細は今夏発表される見込みである。
さらに2027年には、渋谷の新作舞台作品にてヨーロッパ初出演が決定。英国ロイヤル・バレエ団のサー・ウェイン・マクレガーが演出を手がけ、建築家・妹島和世が舞台美術を担うという、夢のコラボレーションも進行中である。