J-DIGSが蘇らせる日本ロックの秘宝 ── 伝説的5タイトルがアナログ再発

日本コロムビアが誇るカタログ資産を再発見し、世界に届けるプロジェクト「J-DIGS reissues」から、国内ロック史に残る伝説的アルバム5タイトルがアナログ・リイシューされる。どれもが日本の音楽シーンに深い足跡を残しながらも、これまで一部のファンの間で“カルト”として語られてきた作品群である。

今回ラインナップされたのは、ハードロックの夜明けを告げる歴史的名盤から、異国情緒と土着性が交錯するユニークなカントリー・ロック、そしてスピリチュアルな音楽絵巻に至るまで、いずれも一筋縄ではいかない個性派揃い。すべての作品には新規ライナーノーツ(日英併記)が付属し、瀬川洋、山内テツ、石間ヒデキの3タイトルは久保田麻琴による最新リマスタリングが施されている。また、ブルース・クリエイション『悪魔と11人の子供達』は、クリア・ディープ・ブルー・ヴァイナルでの特別仕様だ。

各タイトルの内容を紹介しよう。

■ ブルース・クリエイション『悪魔と11人の子供達』(1971)

ブラック・サバスやレッド・ツェッペリンの影響を濃厚に感じさせる、重く唸るようなギターサウンドで、日本におけるハードロックの幕開けを告げたセカンド・アルバム。竹田和夫率いるブルース・クリエイションが生み出した本作は、英語の歌詞でありながら、日本的な訛りが醸すサイケデリックな空気感が唯一無二で、今もなお海外ロック・ファンから熱烈に支持されている。

👉 仕様:クリア・ディープ・ブルー・ヴァイナル/ゲートフォールド・ジャケット/解説:小川真一

■ 瀬川洋『ピエロ』(1972)+ボーナストラック

GS(グループ・サウンズ)ブーム終焉後の混沌の中、日本語によるカントリー・ロック/サザン・ロックを目指した瀬川洋の孤高のソロ作。石間ヒデキ(フラワー・トラヴェリン・バンド)、山内テツ(サムライ)、大野克夫(PYG)ら、当時の精鋭が多数参加し、まさに“幻の名盤”と呼ぶにふさわしい仕上がりである。シングル曲「君がいた白い部屋」を追加収録し、再評価の機運が高まる中でのリマスター再発。

👉 仕様:ボーナストラック1曲収録/リマスタリング:久保田麻琴/解説:小川真一

■ 山内テツ『TETSU』(1972)

英バンド・Free在籍中に一時帰国し、録音されたファースト・ソロ作。グルーヴィーなベース、切れ味鋭いギター、Eleanor Barooshianの妖艶なヴォーカル──日本と英国のロック感覚が交差する極上の1枚である。ファンク・ロックからメロウなバラードまで幅広い楽曲が揃い、山内テツの多彩な音楽性が感じられる好盤。

👉 仕様:リマスタリング:久保田麻琴/解説:小川真一

■ 石間ヒデキ『One Day』(1973)

フラワー・トラヴェリン・バンド解散直後、ギタリスト石間ヒデキが放った唯一のソロ作。サイケデリック・ロックとアシッド・フォーク、そして内省的なSSW的感性が溶け合う孤高のアルバムである。後年、シタール奏者としても知られる石間の音世界の原点ともいえる作品で、ギターが描き出す浮遊感は今聴いても色褪せない。

👉 仕様:リマスタリング:久保田麻琴/解説:小川真一

■ 玉木宏樹『存在の詩』(1980)

シンセサイザーと多重ヴォーカルを駆使して描かれる、サイケデリックかつスピリチュアルな音の絵巻。クラシックや現代音楽にも通じる構成美と、独自の浮遊感をたたえた本作は、日本ロックにおける実験性の極致ともいえるだろう。ジャンルの枠を超えた音楽的冒険を求めるリスナーにこそ聴いてほしい1枚である。

👉 仕様:ゲートフォールド・ジャケット/解説付き(日英併記)

本シリーズは、いずれも11月1日より、日本コロムビアのNIPPONOPHONEレーベルよりリリース。なお、「J-DIGS reissues」からは、同日発売で和ジャズの名盤6タイトルもリリースされる予定。詳細は特設サイトにて確認できる。

🔗 J-DIGS reissues 公式サイト


音楽史に埋もれた“宝物”が、時を超えてアナログで蘇る。ロックを深く愛する者にとって、この再発は単なるノスタルジーではない。むしろ、音楽の可能性がどれほど自由であるかを改めて思い出させてくれる、貴重な体験となるはずである。

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