
トルコを代表するポップ・アイコン、ハンデ・イェネルが、自身のファッション・アーカイブを循環型のファッション・プロジェクトへと変えた。アムステルダムを拠点とする「STAR Gene」は、彼女の個人アーカイブから選んだ衣装を、生きたコレクションとして世に送り出す試みだ。ファッション、音楽、記憶、サーキュラー・ファッションをひとつにつなぐこのプロジェクトは、ヨーロッパのファッション層へ届き始めている。
「新しくなくても、今っぽくあれる」
「何かが新しくなければ現在性を持てないとは思わない。ときには、すでに抱えている物語と、新しい物語の一部になれる可能性があるからこそ、その一着が一段と意味を持つことがある」。イェネルはそう語る。彼女にとってファッションは、変容でもある。すでにあるものを再解釈するほうが、絶え間なく新しいものを消費するよりずっとエキサイティングだと言う。
ステージで、ミュージック・ビデオで、キャリアを決定づけた場面で身にまとってきた衣装。25年以上にわたる活動の中でそうした衣装は積み重なり、彼女のワードローブはトルコのポップ・カルチャーを記録する個人アーカイブになった。STAR Geneは、それらを仕舞い込んだままにせず、新しい物語の一部にする。
アーカイブから、循環へ
イェネルは長年、ファッションを自らのアーティスティックなアイデンティティの延長として用いてきた。絶えず姿を変えるスタイルは、アルバムごと、パフォーマンスごと、ビジュアルの時代ごとに寄り添ってきた。STAR Geneはそのアーカイブから選ばれた作品を、再び流通の輪に戻す。
プロジェクトが重きを置くのは、再利用、長く使い続けること、再解釈だ。絶えず買い替え、消費し続けるファッションとは違うアプローチであり、欧州のファッション業界で高まる「意識的な消費」をめぐる議論とも響き合っている。
「あらゆるものが驚くほどの速さで消費される時代に、ファッションもそのサイクルの一部になっています。何かが忘れ去られるのではなく、旅を続けられるという考え方が好きです。かつて私の物語の一部だった服が、誰かの物語の一部になる。その感情的な連続性は、私にとってとても特別なものです」とイェネルは語る。
一着の価値は、いつ作られたかでは決まらない
アムステルダムで立ち上がったSTAR Geneは、イェネルのファッション・アーカイブを新たな国際的な文脈に置く。選ばれた一着一着は固有の歴史と物語を保ったまま、新しい持ち主のもとで第二の人生を始める機会を与えられる。服の価値を決めるのは、いつ作られたかではなく、その服が持つアイデンティティ、長く愛される力、そして再解釈の可能性だ。
それは、イェネル自身のスタイル観とも重なっている。「私にとってスタイルとは、一番新しいものを着ることではありませんでした。大切なのは、どう変容させるか、どう自分のものにするか、そしてそこに込める姿勢です。私たちは、服との関係をもう一度見つめ直す必要があると思います」。
「ファッションは変わるし、人も変わるし、私も変わる。でも、過去のものがすべて消えなければならないわけではない。ときに変容とは、何かに新しい文脈を与え、その物語を続けさせることなのだと思います」と、彼女は締めくくっている。

ハンデ・イェネルとは
25年以上のキャリアを持つハンデ・イェネルは、トルコを代表するポップ・アーティストのひとり。音楽、イメージ、ビジュアル・アイデンティティを絶えず刷新し続けることで知られ、実験的で個性的なファッションへのアプローチでも評価を得てきた。
STAR Geneとは
STAR Geneは、ハンデ・イェネルの個人的なファッション・アーカイブから選んだ作品を軸にした、アムステルダム発のファッション・プロジェクト。ファッション、音楽、記憶、個性を結びつけ、既存の服を「アーカイブとして仕舞われる」のではなく「新しい物語の一部」にする機会を与える。再利用、長く使い続けること、ストーリーテリングを中心に据え、ファッションとその過去、そして一着ごとの次の人生との間に、より意識的な関係を築くことを目指している。
