「いい子になれ」 ── 誘拐された青年を待ち受ける狂気の再教育。映画『HEEL/ヒール』、戦慄の本予告が解禁

『聖なる犯罪者』でアカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされたポーランドの鬼才、ヤン・コマサ監督の最新作『HEEL/ヒール』が、2026年11月27日(金)より全国公開される。これに先駆け、異様な家族による監禁と再教育の実態を映し出した本予告が解禁された。ドラッグや暴力に明け暮れる19歳の青年が誘拐され、謎めいた一家によって「いい子」になるための躾を強いられる本作。スティーヴン・グレアム、アンドレア・ライズボロー、アンソン・ブーンら実力派俳優が集結し、善悪の境界や愛と支配の関係を揺さぶる、挑発的な心理スリラーが誕生した。

地下室で青年を「飼育」する家族。常軌を逸した再教育が始まる

物語の主人公は、ドラッグ、パーティー、暴力に明け暮れる19歳の青年トミー(アンソン・ブーン)。

ある夜、仲間たちと飲み騒いだ帰り道で何者かに誘拐された彼は、人里離れた屋敷の地下室で目を覚ます。そこでは犬のように首輪をはめられ、鎖につながれていた。

屋敷に暮らしているのは、穏やかな物腰の父クリス(スティーヴン・グレアム)、心に深い傷を抱える母キャスリン(アンドレア・ライズボロー)、そして従順な幼い息子ジョナサン(キット・ラクセン)の3人。

一見すると平穏な家庭を築いているように見える彼らだが、その地下室では、トミーを「いい子」に更生させるための奇妙な教育が行われていた。

罰と褒美を巧みに使い分け、反抗的な青年を少しずつ従わせようとする一家。果たして彼らの目的は何なのか。そして、トミーはこの異常な状況から抜け出すことができるのか。

「悪い子だ」 ── 優しい言葉の裏に潜む狂気を捉えた本予告

今回公開された本予告は、鎖につながれたトミーに対し、クリスが彼の過去の破壊行動を記録した動画を見せる場面から始まる。

「脱帽だよ」「何の罰も受けずによく生きて来られたな」

穏やかな口調でトミーの過去を責めるクリス。しかし、その態度の裏には、相手を完全に支配しようとする冷酷な意志が隠されている。

「ここから出たら、ぶっ潰すぞ」

激しく抵抗し、力任せに鎖を引きちぎろうとするトミー。だが、クリスは動じることなく「トミーは今反抗期」と語りかける。まるで手のかかる子どもをなだめるかのような態度が、かえって不気味さを際立たせる。

やがて、トミーは「僕がやった事を謝りたい」「もうしないよ」と口にするようになり、クリスも「いい子だ」と応じる。

しかし、それは本当の反省なのか。それとも監禁生活から逃れるための演技なのか。

予告編は、青年の心理が徐々に変化していく様子とともに、家族という親密な関係が持つ恐ろしい一面を浮かび上がらせている。

TikTok時代の『時計じかけのオレンジ』。善悪の境界を問い直す衝撃作

本作を手がけたヤン・コマサ監督は、2019年の『聖なる犯罪者』で国際的な評価を獲得。宗教や社会制度、人間の倫理を鋭く描き出してきた映画作家だ。

今回の『HEEL/ヒール』では、若者の暴力性と、それを矯正しようとする大人たちの支配欲を対峙させ、現代社会における「正しさ」の危うさを浮き彫りにする。

その設定は、スタンリー・キューブリック監督の『時計じかけのオレンジ』を想起させるもの。暴力的な青年を強制的に更生させようとする構図を通じて、人間の自由意志や倫理観に切り込んでいく。

さらに本作では、SNS時代の若者文化や、他者を評価し、正しい方向へ導こうとする現代社会の風潮も背景に置かれている。

加害者と被害者、教育と洗脳、愛情と支配。その境界が曖昧になっていくなかで、観客自身も「本当に悪いのは誰なのか」という問いに向き合うことになる。

スティーヴン・グレアムら実力派が集結。巨匠たちが製作に参加

異様な家族の父クリスを演じるのは、Netflixシリーズ『アドレセンス』でも注目を集めたスティーヴン・グレアム。優しさと冷酷さを同時に感じさせる人物像を体現する。

母キャスリン役には、『To Leslie トゥ・レスリー』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされたアンドレア・ライズボロー。誘拐された青年トミー役には、『1917 命をかけた伝令』のアンソン・ブーンが起用された。

さらに製作には、ポーランド映画界の巨匠イエジー・スコリモフスキと、『ラストエンペラー』など数々の作品を世に送り出してきた名プロデューサー、ジェレミー・トーマスが参加。

本作は第50回トロント国際映画祭にも正式出品されている。

監禁された青年と、彼を更生させようとする家族。やがてその奇妙な共同生活は、加害者と被害者という関係を超え、いびつな「家族」の形へと変化していく。

人は他者の意志によって変えられるのか。そして、正しさを押しつける行為は、どこから暴力へと変わるのか。

『HEEL/ヒール』は、そんな不穏な問いを観客に突きつける心理スリラーだ。

MOVIE INFORMATION

『HEEL/ヒール』

2026年11月27日(金)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー

監督: ヤン・コマサ

出演: スティーヴン・グレアム、アンドレア・ライズボロー、アンソン・ブーン、キット・ラクセン

製作: ジェレミー・トーマス、イエジー・スコリモフスキ

作品情報:

  • 原題:Good Boy
  • 製作年:2025年
  • 製作国:ポーランド・イギリス
  • 上映時間:110分
  • 言語:英語
  • 映倫区分:PG12
  • 日本語字幕:橋本裕充
  • 提供・宣伝:SUNDAE
  • 配給:スターキャットアルバトロス・フィルム

公式SNS

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