
世界的ヒット「Breaking Me」で知られるドイツ系クロアチア人DJ/プロデューサーのTopicが、新たなモードへと踏み出した。ロンドン発の新鋭プロジェクトcarteblancheを迎えたニューシングル「Lucky Ones」をUniversal Musicよりリリース。近年取り組んできたアフロ・インフルエンスのサウンドから一転、インディーポップとダンスミュージックを横断する“インディートロニック”へ。夏の終わりの切なさと解放感を閉じ込めた、Topicの原点回帰にして新章を告げる一曲だ。
バンドのために書いた曲が、ダンスミュージックへと変貌する
「Lucky Ones」の面白さは、その成り立ちにある。
楽曲は最初からダンス・トラックとして制作されたわけではない。Topicとcarteblancheはまず、クラブで鳴らすことを意識せず、まるで“バンドの曲”を作るように楽曲を書き上げた。その後、Topicがダンスミュージックとしてプロダクションを施すことで、現在の姿へと変化していったという。
だからこそ、ビートの奥にはインディーポップらしいソングライティングの感触がしっかりと残されている。温かくキャッチーなフックを軸にしながら、広がりのあるシンセサウンドが風景を描いていく。そのスケール感はEmpire of the Sunにも通じるもので、ストレートなダンスポップとは少し違う、サイケデリックで開放的な空気を漂わせている。
「Melancholic Dance Music」 ── Topicが自らの原点へ戻る
Topic自身は今回の楽曲について、「少し自分のルーツに戻ったような感覚がある」と語っている。かつて彼のサウンドは“Melancholic Dance Music”と呼ばれていた。感情的で、ときにはメランコリックな歌詞。しかし、その背後には常に身体を前へと押し出すビートが存在する。その対比こそが、Topicというプロデューサーの個性だった。
2019年、A7Sを迎えた「Breaking Me」が世界的ヒットとなり、累計ストリーミングは60億回を突破。その後もHUGEL、Daecolmとの「I Adore You」をはじめ、アフロ・ハウスやラテンの感覚を取り込んだ作品を展開してきた。
しかし「Lucky Ones」で彼が向かったのは、さらに別の方向だ。近年強く惹かれているというインディーポップの感覚と、自身がもともと持っていたメランコリックなダンスミュージックのDNA。そのふたつを接続することで、“昔のTopic”へ単純に戻るのではなく、現在までの経験を経由した新しいサウンドを生み出している。
「どこにも行かなくていい」という夏の幸福
そして「Lucky Ones」の中心にあるのは、意外なほどささやかな感情だ。
友人や愛する人とどこかへ逃げ出す。予定もない。誰かに何かを証明する必要もない。ただ、その瞬間を一緒に過ごしているだけで満たされている。
carteblancheは、この曲でそんな“no pressure”の感覚を表現したかったという。
楽曲を書いていた当時、彼ら自身もまもなく休暇へ出かけるところだった。その浮き足立った気分や、日常から解放される直前の空気が、自然と曲のムードに入り込んだのだろう。
タイトルの「Lucky Ones=幸運な人たち」も象徴的だ。巨大な成功やドラマチックな出来事ではなく、「いま、この人たちと一緒にいられる」という小さな幸福。その感覚が、軽やかなビートとノスタルジックなメロディのなかを流れていく。
夏が終わりへ向かう8月後半というリリース時期も、この曲にはよく似合う。季節を巻き戻すことはできない。それでも「Lucky Ones」を聴いている数分間だけは、夏の夕暮れを少しだけ引き延ばせるような気がする。
新プロジェクトcarteblancheが持ち込んだ“左側”の感覚
今回Topicとタッグを組んだcarteblancheは、ロンドンを拠点とするJoshua GrimmettとTancrede Rouffによって2025年に始動したインディーダンス・プロジェクト。Joshua GrimmettはGoodboysのメンバーとして、MEDUZAとの「Piece Of Your Heart」や「Lose Control」などに参加。一方のTancrede Rouffもソングライター/プロデューサーとして、ODESZA、Portugal. The Man、Zerbらに関わってきた。
つまり、ポップソングの強度とエレクトロニック・ミュージックの構築力、その双方を知る2人だ。彼らは2025年、Alex Wann、Notre Dameとのコラボレーション「The City」でプロジェクトを始動。その後もインディーとクラブの境界線を探り続けている。
そんなcarteblancheが加わったことで、「Lucky Ones」は王道のダンスポップからわずかに軌道を外している。より温かく、よりワイドスクリーンで、そして少しだけ“レフトフィールド”。その絶妙な違和感こそが、この曲を単なるサマーアンセムでは終わらせない。
Topicの“これまで”と“これから”が交差する一曲
Topicは2024年、自身のレーベル兼パーティ・シリーズ〈WILD KID〉を立ち上げ、より自由な創作へと舵を切った。そして2026年には、SARRAとの「TIK TAK」、Fatboy Slim「Right Here, Right Now」の公式リワーク、Becky Gとの「Sorry Papi」、Shimza、A7Sとの「Missing You」など、精力的なリリースを続けている。
その流れのなかでも「Lucky Ones」は、少し特殊な位置にある。
アフロ、ラテン、クラブミュージックへと拡張してきた近年のTopicと、かつて“Melancholic Dance Music”と呼ばれた彼の原点。そして、いま新たに惹かれているインディーポップ。そのすべてが一曲のなかで静かに交差しているからだ。
幸福なのに、どこか切ない。踊れるのに、胸の奥には余韻が残る。
夏が永遠には続かないことを知っているからこそ、その瞬間は美しい。「Lucky Ones」はそんな感情をダンスミュージックへと変換した、夏の終わりのための小さなアンセムだ。

Artists: Topic, carteblanche
Title: Lucky Ones
Label: Universal Music
Release date: August 21, 2026
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