現実とシミュレーションの狭間で鳴る“電子の神話” ── Discovery Zone、新作ALから「Arp Angels」公開

ベルリンを拠点に活動するマルチメディア・アーティスト、Discovery ZoneことJJ Weihlが、ニューアルバム『Library Copy Do Not Remove』よりセカンド・シングル「Arp Angels」をリリース。映像作家Mark DorfとのコラボレーションによるMVも公開され、現実とデジタルの境界を揺さぶる壮大な世界観が姿を現した。

さらに6月には、スペシャルゲストにdip in the poolを迎えた初来日公演も決定。東京・下北沢SPREADで、その立体的な音響空間を体験できる。

“デジタルの天使”が舞い降りる瞬間

「Arp Angels」は、不穏な緊張感と神秘性をまといながら幕を開ける。低音のうねりの上を滑空するシンセサイザーは、まるで形を持たないサイバー存在の羽ばたきのようだ。

そのサウンドは、単なるエレクトロニック・ミュージックではない。天上的でありながら人工的、神聖でありながら不気味 ── そんな二重性を孕みながら、楽曲は“デジタル時代のスピリチュアリティ”を描き出していく。

音は多層的に折り重なり、天へと上昇しながら同時にコンピューター化された地層へ沈み込む。その感覚は、コードによって描かれた羽の軌跡を追いかけているかのようでもある。

建築、身体、カメラ ── 崩壊する境界線

MVを手がけたMark Dorfは、前作「Dusk」に続いてDiscovery Zoneのヴィジュアル世界を拡張する存在だ。

「Dusk」がシミュレーション空間を滑空する視点だったのに対し、「Arp Angels」では手持ちカメラによる身体感覚が強調される。だがそこにあるのは、現実の論理が徐々に失われていく世界。

注目すべきは、映像内のすべてのアニメーションが手作業で制作され、AI生成ツールを使わず構築されていることだ。情報が自動生成され続ける時代において、“世界を作る行為”そのものへの執着とクラフト精神が宿っている。

プラネタリウムから生まれた音楽宇宙

5月15日にRVNG Intl.よりリリースされるアルバム『Library Copy Do Not Remove』は、ベルリンのZeiss-Groß Planetariumのために構想された空間音響作品を起点としている。

49台のスピーカーによるアンビソニックス環境を前提に制作された本作は、通常のステレオ的発想ではなく、“あらゆる方向から音が立ち上がる”感覚を追求。自然、神話、情報、宇宙論、ポストヒューマン感覚が複雑に交差する、極めてコンセプチュアルなアルバムだ。

Jorge Luis BorgesやJohannes Keplerらの思想にも触発されながら、本作は「現実とは何か」「知覚は世界をどう形成するのか」という問いを投げかける。

テクノロジーの中に“自然”を見出す音楽

JJ Weihlの表現がユニークなのは、自然とテクノロジーを対立項として扱わない点にある。彼女の世界では、電子音もまた“自然現象”の延長線上に存在している。

デジタル空間に漂うヴォイス、電子化された環境音、螺旋状に反復するメロディ。それらは無機質な未来像ではなく、むしろ新しい生命感覚へと接続されていく。

『Library Copy Do Not Remove』は、AI時代以降のアンビエント/ポップの新しい座標軸なのかもしれない。

下北沢で実現する初来日公演

そして6月16日には、東京・下北沢SPREADで待望の初来日公演を開催。スペシャルゲストとして登場するdip in the poolとの共演は、世代や地域を超えた“夢幻的ポップ”の邂逅となりそうだ。

現実と仮想、肉体とデータ、その境界が曖昧になっていく現在。Discovery Zoneの音楽は、その揺らぎそのものを、美しく可視化している。

イベント詳細ページ:
https://www.artuniongroup.co.jp/plancha/top/discovery-zone-japan-tour-2026/

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