静寂に触れた光、その臨界 ── Abul Mogard × Rafael Anton Irisarriが描く新章『Where Light Pauses in the Silence of the Sun』

音は、ここまで“静かに巨大”になれるのか。
ドローン/アンビエントの最深部を更新し続けるAbul MogardとRafael Anton Irisarriによるコラボレーション第2章『Where Light Pauses in the Silence of the Sun』が、6月26日にリリースされる。日本盤はPLANCHAより、ボーナストラックを追加した独自CD仕様での展開も決定している。

ベルリンで生成された“場の音楽”

本作の原型は、2025年春、ベルリンのMorphine Raumで行われた3日間のレジデンシーにある。観客が演奏者を取り囲む特殊な配置の中、毎夜変容するパフォーマンスがマルチトラックで記録された。

ロータリースピーカー、モジュラーシンセ、ボウドギターという最小限の装置から生まれるのは、単なる演奏ではなく“空間そのものが鳴る”体験。音は点ではなく、場として立ち上がっていく。

即興と再構築、その往復運動

録音素材はその後、ローマとニューヨークで再構築される。ここで行われたのは編集ではなく、“時間の彫刻”に近いプロセスだ。

モチーフは極限まで引き延ばされ、リズムは溶解し、音の断片は漂流する。さらにMartina BertoniのチェロとAndrea Burelliのヴァイオリン/ヴォイスが加わることで、音像は有機的な呼吸を獲得。すべてはレイヤーと削ぎ落としの反復によって、一つの巨大な流れへと統合されていく。

静止と運動が共存するサウンドスケープ

先行公開された「In the Eastern Wild」は、ほぼ無音に近い状態から立ち上がり、やがて低周波の質量をまとった音塊へと変貌する。回転するレスリースピーカーが内部に揺らぎを生み、静止しているのに動いているという逆説的な感覚を生む。

アルバムの核心「In a Quiet Radiance」では、緩やかなギターの反復の上に、弦と声がゆっくりと浮上。時間が停止したかのような光の静寂が広がり、感情は臨界点へと到達する。

音が“個”を超える瞬間

本作において興味深いのは、作者性の境界が溶けていくプロセスだ。Irisarri自身が語るように、「どこからが自分で、どこからが相手なのか分からなくなる」瞬間が訪れる。

それはもはやコラボレーションではなく、一つの“音響システム”が自律的に動き始める状態。即興と構築、個と集合、そのあいだにある緊張が、この作品に特異な深度を与えている。

静寂の中で形を持つ音楽

カバーアートを手がけたMarja de Sanctisは、前作に登場した彫刻を“焼成後”の状態として再提示。未完成から完成へ、瞬間から持続へ――その変化は本作の制作プロセスと強く共鳴している。

『Where Light Pauses in the Silence of the Sun』は、音楽でありながら、時間や記憶そのものに触れる体験でもある。

極限まで削ぎ落とされた静寂と、圧倒的な音の質量。その両極を内包しながら、この作品はゆっくりと、しかし確実に聴き手の内側へ侵入してくる。

Artist: Abul Mogard & Rafael Anton Irisarri
Title: Where Light Pauses in the Silence of the Sun

Label: PLANCHA / Black Knoll Editions
Cat#: ARTPL-262
Format: CD / Digital
Release Date: 2026.06.26
Price(CD): 2,200 yen + tax

※日本独自CD化
※ボーナス・トラック1曲収録
※解説付き予定

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