
ブラジル音楽とジャズの歴史を横断してきた“生ける伝説”と、現代の創造性を牽引するプロデューサーが出会った。
アイアート・モレイラとヒカルド・バセラールによる共同制作アルバム『Maracanós』が、2026年4月24日、JASMIN MUSICより配信リリースされた。
マラカスと“私たち”が結ぶ音の共同体
タイトル『Maracanós』は、ブラジル先住民の楽器“マラカス”と、ポルトガル語で“私たち”を意味する「nós」を掛け合わせた造語。
その名の通り本作は、個ではなく“共鳴”によって生まれた音楽だ。ピアノ、パーカッションを軸に、弦楽、電子音響、即興演奏が溶け合い、ジャンルの境界を軽やかに越えていく。
スタジオから生まれた幸福なセッション
レコーディングはブラジル・フォルタレーザのジャスミン・スタジオにて実施。ドキュメンタリー制作の過程で芽生えた創作意欲が、そのままアルバムへと結実した。
バセラールが語るように、本作は「幸福な時間の連続」から生まれた作品だ。一方でモレイラにとっても、歌声を含めた新たな表現に踏み込む刺激的な体験となった。
フローラ・プリムが添える“もうひとつの時間”
本作には、ジャズ・ヴォーカルの象徴的存在であり、モレイラの長年のパートナーでもあるフローラ・プリムが特別参加。
収録曲「Voo da Tarde」で聴けるその声は、単なるゲストを超え、作品に時間の深みを与える重要な要素となっている。
即興と構築、そのあいだにある音楽
『Maracanós』の核にあるのは「自由」と「実験精神」だ。アコースティック楽器とシンセサイザー、緻密なアレンジと即興的な応答 ── それらがせめぎ合いながら、立体的な音像を構築していく。
弦楽アレンジにはブラジル音楽アカデミー会員のリドゥイーノ・ピトンベイラが参加し、クラシカルな要素も取り込みながら、より奥行きのあるサウンドへと拡張されている。
伝説と現在が交差する場所
モレイラはこれまで、マイルス・デイヴィスやチック・コリアをはじめとする数多の巨匠と共演し、ジャズ〜フュージョンの進化に大きく貢献してきた存在だ。
その歩みを支えてきたのは一貫して「創造の自由」。本作でもその精神は揺らぐことなく、むしろ現代的なサウンドデザインの中で再定義されている。
音楽と映像が交差する、もうひとつの物語
本作の背景には、監督ジョン・トブ・アズライによるドキュメンタリー映画の存在がある。現在制作中のこの作品は、モレイラとプリムの創造性と人生に迫る内容となる予定だ。
アルバム『Maracanós』は、その映画と呼応するかのように、音楽そのものを“記録”であり“現在進行形の物語”として提示する。
商業性を越えた、没入のための音楽
均質化が進む現代の音楽シーンにおいて、本作は明確に異なる立ち位置を取る。ヒットを狙うのではなく、音に没入するための設計。
それはどこか原始的で、同時に未来的でもある。『Maracanós』は、音楽が本来持っていた“自由な衝動”を、静かに、しかし力強く呼び覚ます一枚と言えよう。

タイトル: Maracanós(マラカノス)
- Pé no Chão(ペ・ノ・シャン) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:パーカッション
ヒカルド・バセラール:アコースティック・ピアノ、キーボード、パーカッション、ボーカル
オト・ジュニオール:パーカッション
ネリオ・コスタ:ウッドベース
パンティコ・ロシャ:ドラムス
マルシオ・レゼンデ:フルート
ルイーザ・デ・カストロ:ヴァイオリンI
トマス・ソアレス:ヴァイオリンII
ダニエル・アルブケルケ:ヴィオラ
ダニエル・シルヴァ:チェロ
リドゥイーノ・ピトンベイラ:弦楽編曲(カリメラ弦楽四重奏団) - Mestre Novo da Guiné(メストレ・ノーヴォ・ダ・ギネー) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール / ルイス・リマ・ヴェルデ)
アイアート・モレイラ:パーカッション
ヒカルド・バセラール:ヴォイス、アコースティック・ピアノ、フェンダー・ローズ、ハモンドオルガン、パーカッション、キーボード、エレキギター、サンプル、モジュラー・シンセサイザー
オト・ジュニオール:パーカッション
ネリオ・コスタ:エレキベース
パンティコ・ロシャ:ドラムス
マルシオ・レゼンデ:テナーサックス、ソプラノサックス
ステニオ・ゴンサルヴェス:エレキギター
マリア・バセラール:ボーカル
サラ・バセラール:コーラス編曲、ボーカル
エリエル・フェレイラ:ボーカル - Bumbo Meu Boi(ブンボ・メウ・ボイ) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:ドラムス
ヒカルド・バセラール:アコースティック・ピアノ、キーボード
ネリオ・コスタ:ウッドベース
マルシオ・レゼンデ:アルトサックス、テナーサックス、フルート
ステニオ・ゴンサルヴェス:エレキギター
アレックス・レイス:ハンドクラップ(拍手) - Voo da Tarde(ヴォー・ダ・タルジ) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:パーカッション
ヒカルド・バセラール:アコースティック・ピアノ、キーボード、モジュラー・シンセサイザー、パーカッション、エレキギター、サンプル、ボーカル
フローラ・プリム:ボーカル
オト・ジュニオール:パーカッション
ネリオ・コスタ:ウッドベース
マルシオ・レゼンデ:アルトサックス、フルート - Maracanós(マラカノス) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:パーカッション
ヒカルド・バセラール:アコースティック・ピアノ、キーボード、ボーカル
オト・ジュニオール:パーカッション
ネリオ・コスタ:ウッドベース
パンティコ・ロシャ:ドラムス
マルシオ・レゼンデ:フルート
ルイーザ・デ・カストロ:ヴァイオリンI
トマス・ソアレス:ヴァイオリンII
ダニエル・アルブケルケ:ヴィオラ
ダニエル・シルヴァ:チェロ
リドゥイーノ・ピトンベイラ:弦楽編曲(カリメラ弦楽四重奏団) - Submersivos(スブメルシーヴォス) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:パーカッション
ヒカルド・バセラール:アコースティック・ピアノ、キーボード、サンプル、モジュラー・シンセサイザー、パーカッション、ホイッスル、オカリナ
ネリオ・コスタ:ウッドベース
パンティコ・ロシャ:ドラムス
マルシオ・レゼンデ:フルート
ステニオ・ゴンサルヴェス:アコースティック・ギター、12弦アコースティック・ギター - 3 Minutos de Paz(トレス・ミヌートス・デ・パス) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:ヴォイス、パーカッション
ヒカルド・バセラール:アコースティック・ピアノ、キーボード、サンプル、モジュラー・シンセサイザー - Pau Rolou(パウ・ロロウ) (作曲:アイアート・モレイラ / ヒカルド・バセラール)
アイアート・モレイラ:ヴォイス、パーカッション、ビリンバウ
ヒカルド・バセラール:ヴォイス、パーカッション、ダルシマー、ピーファノ(横笛)、ハンドドラム
オト・ジュニオール:パーカッション
ステニオ・ゴンサルヴェス:スライド・リゾネーター・ギター、12弦アコースティック・ギター
レコーディング: アレックス・レイス、メルク・ディアス(2024年11月、ブラジル・セアラ州フォルタレザ、ジャスミン・スタジオ)
レコーディング・アシスタント: エリエル・フェレイラ
追加レコーディング: 「Voo da Tarde」のフローラ・プリムのボーカル、およびカリメラ弦楽四重奏団の演奏/リカルド・ディアス(2025年、リオデジャネイロ、ヴィゾム・スタジオ)
ミキシング: ルイス・オルサーノ、アレックス・レイス、ヒカルド・バセラール(ジャスミン・スタジオ)
マスタリング: カルロス・フレイタス
写真: マリア・バセラール
オリジナル絵画: フェルナンド・フランサ
ジャケット&グラフィックデザイン: MZK
プロデュース: ヒカルド・バセラール
謝辞:マノエラ、マリア&サラ・バセラール、フローラ・プリム、ルシアーナ・バルビーノ、オト・ジュニオール、ジョム・トブ・アズライ、カルロス・デ・アンドラーデに感謝申し上げます。
本アルバムは、プラットフォームで(https://ffm.to/marcanos)配信されます。
