
オランダと南アフリカにルーツを持つシンガーソングライター、Joya MooiがニューEP『All The Things』をリリースした。嫉妬、喪失、そして母性 ── 一言では括れない感情の揺らぎを、繊細かつ多層的に描き出す本作は、彼女にとって最もパーソナルでありながら、同時に普遍性を帯びた作品となっている。
“他者”から“自分”へ――視点のシフトが生んだ深度
前作『Open Hearts』では、社会の中で語られにくい他者の物語に光を当てていたJoya Mooi。しかし今作では、その視線を内側へと大きく転換。自身の経験や感情の機微にフォーカスすることで、より生々しく、よりリアルな表現へと踏み込んでいる。
それは単なる自己告白ではなく、個人の物語がリスナーの記憶と静かに共鳴していくような構造を持っている。
手放すことの静かな美しさ ── タイトルトラック
EPの中心となる「All The Things」は、友情の終わりというテーマを扱いながらも、対立ではなく“手放す過程”にフォーカスした楽曲だ。
南アフリカのアーティストEasy Freakによるミニマルで抑制の効いたプロダクションと、内省的なリリックが溶け合い、感情の余韻を丁寧にすくい取る。サウンド面ではソウルやオルタナティブR&Bを基軸にしながら、彼女のルーツがもたらすグローバルなニュアンスが自然に滲む。
嫉妬、母性、喪失 ── 矛盾を抱えたまま進む
収録曲はそれぞれ異なる感情の断面を切り取る。「Technicolour」では他者との比較から生まれる嫉妬の複雑さ、「Pay Day」では母になることを前にした心境の変化と、物質的価値を超えた拠り所の模索が描かれる。
さらに、「Only Water」は飛込選手グレッグ・ローガニスの人生にインスパイアされ、逃避と再生を象徴的に表現。Lookalike」では、記憶の断片がふと重なる瞬間を通して、喪失との向き合い方を静かに提示する。
これらの楽曲は独立しながらも有機的に結びつき、矛盾や脆さを抱えたまま前へ進む人間の姿を浮かび上がらせる。
揺らぎそのものを肯定する音楽
『All The Things』は、明確な答えを提示する作品ではない。むしろ、曖昧さや不安定さをそのまま受け入れることの価値を示している。
感情は常に変化し続けるものだという前提のもと、Joya Mooiはその“揺らぎ”自体を音楽として提示する。
結果として本作は、リスナーそれぞれの内面に静かに寄り添いながら、個人的な体験を普遍的な共感へと昇華させる、稀有なリスニング体験となっている。

アーティスト:Joya Mooi
タイトル:All The Things
ジャンル: R&B, Pop
情報解禁日:2026年4月24日(金)0:00AM
配信開始日&オンエア解禁日:2026年4月24日(金)
発売元・レーベル:SWEET SOUL RECORDS
