二つの月が重なるとき、音は“内側”へ沈んでいく ── エミリーA. スプレイグ、新作EP『Double Moon』発表

インディー・フォークとアンビエントの境界を静かに横断してきた音楽家、エミリーA. スプレイグが、新作EP『Double Moon』を2026年5月29日にリリースする。拠点レーベルは実験性と美意識で知られるRVNG Intl.。あわせて、タイトル・トラック「Double Moon」が先行公開され、その繊細な音響世界の一端が明らかになった。

精神と現実、その“あわい”に浮かぶサウンド

「Double Moon」が描くのは、精神的な風景と現実の輪郭が同時に存在する領域だ。反復するモジュラー・シンセのパターンと、淡く広がる音のレイヤーが重なり合い、聴き手をゆっくりと没入へと導いていく。

その音像はどこか儀式的でありながら、極めて身体的でもある。直感的に構築されたサウンドが、言葉では捉えきれない感覚の地層へと触れてくる。

Floristとソロ、その両極をつなぐ現在地

エミリーA. スプレイグは、バンドFloristの中心人物として広く知られる一方、ソロではモジュラー・シンセを軸にしたアンビエント作品を継続的に発表してきた。

フォーク的な親密さと、環境音楽的な広がり。その両極を往復する中で培われた表現が、本作ではより滑らかに接続されている。2025年の『Cloud Time』を経て到達した、ひとつの転換点とも言えるだろう。

音が“像”を結ぶ、きわめて視覚的なコンポジション

タイトル曲「Double Moon」は、まるで夜の空に引き伸ばされた光のように、ゆっくりとした軌跡を描く楽曲だ。音は断片として現れては消え、やがてひとつの弧を形成する。霜のようにきらめく質感、柔らかく波打つ旋律 ── そのすべてが連なり、視覚的とも言える音響体験を生み出す。

バック・ヴォーカルにはV Haddadが参加し、透明感のあるレイヤーを加えている。

フィジカルならではの“もうひとつの側面”

本作はデジタル配信に加え、7インチ・アナログでもリリースされる。フィジカル版には、エクスクルーシヴ楽曲「Dusk (How to Fly)」と、オーストラリアのプロデューサーAndrasによるダブ・ヴァージョンを収録。

ひとつの楽曲が別の角度から再構築されることで、『Double Moon』という作品はさらに多層的な広がりを見せる。

没入のその先へ

音楽はここで、単なる“聴くもの”から、“浸るもの”へと変わる。エミリーA. スプレイグが描き出すのは、明確な物語ではなく、感覚そのものの流れだ。

『Double Moon』は、意識の輪郭をやわらかく揺らしながら、聴き手を静かな深層へと連れていく。二つの月が重なるその瞬間、音は確かに、現実と夢の境界を溶かしていく。

Artist: Emily A. Sprague
Title: Double Moon (EP)

Label: RVNG Intl. / PLANCHA (JP Digital)
Format: 7″ / Digital
Release Date: 2026.05.29

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