
ニューヨーク・ブルックリンを拠点に活動するコンポーザー/プロデューサー/パペッティア、トリスタン・アレンが、ニュー・アルバム『Osni the Flare』から第2弾シングル「Act III: Rite」をミュージックビデオと共に公開した。アルバムは3月27日、RVNG Intl.よりリリース予定。音、物語、そして人形劇的身体性が交錯する、神話的三部作の第2章がいよいよ姿を現す。
人が神へと変わる瞬間を描く、音による創世神話
『Osni the Flare』は、“火”の発見を契機に一人の人間が神へと変容していく過程を描いた、壮大な創世神話である。4年にわたる制作期間の中で、言葉を持たないヴォーカル、オルガン、オカリナ、無数のトイ楽器、そして緻密なサウンドデザインが組み合わされ、全4幕構成の物語として展開。炎と時間の起源をめぐる音響的叙事詩は、美しさと影、そして物悲しい熾火の残響のあいだを揺れ動きながら、聴き手を幻想的な領域へと誘う。
「Act III: Rite」 ── 儀式から幻視へ、回転する光の楽曲
今回公開された「Act III: Rite」は、低くループするベース主導の旋律を軸に、渦を巻くように進行する楽曲。路上で拾われたポンプオルガンとハルモニウムが基盤を成し、その送風機構はオートマトンのエンジンのような唸りを生み出す。圧縮され搾り出されるような響きは、やがて穏やかで啓示的なきらめきへと転調。地に足のついた儀式として始まった音楽は、次第に輪郭を失い、空虚で幽玄なヴィジョンへと変貌していく。ひび割れ始めた世界に火が灯るように、“召喚”としての音が立ち上がる瞬間だ。
Artist: Tristan Allen
Title: Act III: Rite
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Format: Digital Single
Buy / Listen: https://orcd.co/q1kw6ro

パペット・バレエの身体性を刻む映像
映像は、前作『Tin Iso and the Dawn』でも協働したTravis HoodとRoss Mayfieldが再び担当。ニューヨークの実験的劇場La MaMaで初演されたAllenの新作「パペット・バレエ」のパフォーマンスをフィーチャーし、音楽と人形劇が交差する独自の世界観を視覚的にも拡張している。人形に命を吹き込む行為そのものが、音楽における“真実の嘘”の実践として提示される。
幼年の記憶、日本との接点、そして操り人形へ
ニューヨーク州サラトガ・スプリングス生まれのアレンは、幼少期に家族の日本滞在にまつわる記憶を持つ。バークリー音楽大学でピアノを学び、ライブ・エレクトロニクス集団の共同設立やメタル・バンドでのツアー経験を経て、2018年にブルックリンへ移住。Craigslistの募集をきっかけに操り人形の訓練を受け、名門劇場のパフォーマーとして活動するに至った。アコースティック楽器の作曲、電子的アレンジ、そして人形劇 ── それらが結びつくことで、アレン独自の総合的な創作実践が確立されていく。
庭から冥界へ ── Osniの神話的旅路
アルバムは、庭で目覚めリンゴを摘む主人公Osniの物語を追う。冬の寒さから木を守るため旅に出た彼は、導き手ルーンをドラゴンに飲み込まれ、その腹の中で熾火を見つける。木に捧げられた熾火は炎の誕生をもたらすが、やがて海の神Isoの洪水によって庭は水没。死後、Osniは影の世界へ入り、火の神「Osni the Flare」へと変容する。本作は神々の俯瞰ではなく、最初の“人間”の感触を宿した物語として構築されている点が印象的だ。
音響細部の執拗な構築 ── 幻想世界が“鳴る”ために
レコーディングの大半は、ブルックリンの自宅アパートでコンデンサー・マイク1本を用いて行われた。トイ・ピアノ、フルート、オカリナ、ハルモニウム、ミュージックボックス、壊れかけたサンプラーなど、多様な音源を一音ずつ丁寧に収録し再構成。ピアノの鍵盤を爪で弾くクリック音から炎の音を生成するなど、極小の断片を積み重ねる手法が、巨大な神話世界の音像を形作っていく。言葉を排したヴォーカル旋律は、聴き手自身が物語の主人公であり続けるための装置として機能する。
音楽・人形・光が結晶する総合芸術として
ピアノの再録音やミックス、そして精巧なロッド・パペットの制作に至るまで、多くの協働者が参加。LED照明システムや舞台装置の細部に至るまで緻密に設計され、音楽、舞台美術、パフォーマンスがひとつの統合された世界として立ち上がる。アレンが目指すのは「人が演奏している音」ではなく、「幻想世界そのものが鳴っているような音楽」。その理想は、『Osni the Flare』において驚くほどの統一感で結実している。
「Act III: Rite」は、その巨大な神話のただ中に開かれた一つの儀式的断面だ。火の起源と神話の起源を同時に描き出すこのプロジェクトは、聴覚と視覚、そして身体の記憶を横断しながら、現代のポップ/実験音楽の領域に新たな入口を提示している。

Artist: Tristan Allen
Title: Osni the Flare
Label: PLANCHA / RVNG Intl.
Cat#: ARTPL-251 (CD)
Format: CD / Digital
※日本独自CD化
※解説付き予定
Release Date: 2025.03.27
Price(CD): 2,200 yen + tax
