Mobb Deep、“終わりなき遺産”を刻む最後の章──伝説的ヒップホップデュオがラストアルバム『INFINITE』をリリース

2025年10月13日

プラチナセールスを誇る伝説のヒップホップデュオ、Mobb Deep（モブ・ディープ）が2025年10月10日、Mass Appeal Recordsからニューアルバム『Infinite』（終わりなきもの）をリリースした。
米Pitchforkが「2025年史上最高のラッパー」として選出した彼らにとって、本作は創設メンバーProdigy（プロディジー）の逝去後、初のフルアルバムにしてラストアルバム。Mobb Deepとしての最終章がここに刻まれる。

Prodigyの遺志とHavocの現在が交錯する、魂の再構築

本作では、故Prodigyの未発表ヴォーカルをHavoc（ハヴォック）が再構築。
緻密なプロダクションと重層的なサウンドデザインで、クラシックなニューヨークの荒々しさと内省的なソウルを融合させた。
『The Infamous』から30年、前作『Blood Money』から17年を経て生まれた『Infinite』は、Mobb Deepの文化的遺産を再定義する壮大なオマージュであり、時を越えて続く“二人の物語”の延長線上にある。

「Prodigyのヴァースを選ぶとき、まるで乞うような気持ちだった。俺にとって彼以上のMCはいない。彼の相棒でいられたことに感謝している」 ― Havoc

リード曲「Down For You」

リードシングル「Down For You」（feat. Nas, Jorja Smith）は、アルバム全体のトーンを決定づける楽曲。
Havocの幽玄なサウンドスケープに、Jorja SmithのソウルフルなコーラスとNasの硬質なヴァースが絡み合う。
Jorjaの歌う「It hurts me to keep you in my heart. If being in love is my downfall, then I’ll be down for you.（あなたを心に抱くことが痛みになる。もし愛することが私の破滅なら、それでもあなたのために堕ちるわ）」というラインが象徴するように、楽曲は愛と喪失、再生の狭間で揺れる。

「Mobb DeepとJorja Smithの組み合わせなんて誰も予想しなかっただろう。でも俺は意外なことをやるのが好きだ。彼女はすぐにこの曲を気に入ってくれて、完璧に歌い上げてくれた。彼女の声が曲にまったく新しい感情の層を加えてくれた」 ― Havoc

盟友たちと次世代が交錯する構成

本作には、Nas、Raekwon、Ghostface Killah、Big Noydといった“Queensbridgeファミリー”が再結集。
さらに、Jorja SmithやH.E.R.といった次世代のアーティストも参加し、Mobb Deepが築いてきたハードコアなサウンドの系譜と新たな感性が交わる。
プロデュースはHavocとThe Alchemist。冷徹なビートと有機的なサンプルワークが絡み合い、Mobb Deep特有の“陰影”がアルバム全体を支配している。

映像で描く“癒しと再生”

Hidji World（ヒジ・ワールド）監督による「Down For You」MVは、楽曲の情緒を映像化。
Havoc、Nas、Jorja Smithのパフォーマンスと、若い看護師が患者たちの涙を集め、それが庭を潤す象徴的なシーンが交互に展開される。
痛みが癒しへ、喪失が再生へと転化していくプロセスを詩的に描いた作品だ。

Mobb Deepが築いた“ニューヨークの原点”

Mobb Deepは、クイーンズブリッジ出身のHavocとProdigyによる2人組。
1995年の名盤『The Infamous』でゴールドディスクを獲得し、「Shook Ones (Part II)」はイーストコースト・ラップを象徴するアンセムとして知られる。
1999年の『Murda Muzik』では「Quiet Storm」がヒットし、Billboard 200で最高3位を記録。
その後も数々のゴールド／プラチナディスクを獲得し、ニューヨーク・ヒップホップの礎を築いた。

“Legend Has It”キャンペーンの一環として

『Infinite』は、Mass Appealによる“Legend Has It”キャンペーン第4弾としてリリース。
Slick Rick、Raekwon、Ghostface Killah、Big L、De La Soul、そしてNas/DJ Premierらと並び、ヒップホップの伝説的存在としてMobb Deepの軌跡を祝う企画の一部となっている。