
“音楽で得られた感動は永遠のもの”。そんな確信とともに、高橋幸宏が自らのルーツを語り尽くした一冊が、河出文庫から再登場する。タイトルは『僕の私的音楽史 心に訊く音楽、心に効く音楽』。発売は2025年8月6日。文庫化にあたり、構成者・天辰保文による新たな書き下ろしと、鈴木慶一による文庫解説が追加収録され、内容は大幅に増補された。
原本は、2012年にPHP新書から刊行された『心に訊く音楽、心に効く音楽』。今では古書市場でも入手困難となっていたが、再編集により再び読者の手に届くことになった。構成を担当したのは、長年の友人で音楽評論家の天辰保文。写真やジャケットもすべて掲載された決定版といえる一冊だ。

内容紹介|ポップと人生が交差する、音楽家による音楽ガイド
本書は、幼少期に出会った映画音楽やビートルズ、プロコル・ハルム、バカラック、ニール・ヤングらへの愛着から、YMO「ライディーン」の制作秘話、ソロ作『Saravah!』誕生の裏側、そして晩年に至るまでの創作と思索を、本人の語り口で丁寧に描き出す“音楽の人生記”だ。
YMOの坂本龍一、細野晴臣、さらにはスティーヴ・ジャンセン、鈴木慶一、ユーミン、トノバンなど、彼と関わりの深いアーティストたちとの交差点も本書のハイライト。YMOに至る伏線や、ソロ、ビートニクス、スケッチ・ショウ、METAFIVEといったプロジェクトに込めた思いも綴られている。
章構成は全6章。音楽と同様に、言葉のリズムにもこだわりが感じられる構成となっており、読み進めるほどに“聴きたくなる”読書体験ができる。
貴重なエピソードと最後のステージ
カバー写真は、2018年6月、英ブライトンのレコード店で撮影された一枚。その数日前、ロンドン・バービカンホールで開催された細野晴臣のライブに、高橋が客席から呼ばれ、坂本龍一、小山田圭吾とともにYMOの「Absolute Ego Dance」を演奏。このセッションが、3人揃った最後のステージとなった。
新録コンテンツも充実|天辰保文と鈴木慶一の寄稿
文庫化に際し、新たに収録された天辰保文による書き下ろしは9,000字超。2012年から2022年までの高橋の音楽活動を、間近で見守ってきた天辰ならではの視点で振り返る。一方、鈴木慶一による解説では、詞作への評価や、高橋が持っていた“ポップへの感性”を独自の言葉で紐解いている。
「彼は直接には褒めてくれなかったけど、詞を評価してくれていたのがうれしかった」と鈴木は回想しながら、その繊細さとユーモア、そしてボーカリストとしての魅力に迫る。
書籍情報

- 書名:僕の私的音楽史 心に訊く音楽、心に効く音楽(河出文庫)
- 著者:高橋幸宏
- 発売日:2025年8月6日
- 仕様:文庫判/216頁
- 定価:990円(税込)
- ISBN:978-4-309-42209-1
- 出版社:河出書房新社(東京都新宿区)
- カバーデザイン:小野英作
- カバー写真:高橋喜代美
- 文庫編集:君塚太、荒木重光
- 書誌URL:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309422091/
著者略歴|高橋幸宏(1952–2023)
東京生まれ。サディスティック・ミカ・バンド、YMO、THE BEATNIKS、pupa、METAFIVEなど、常にシーンの先端を走り続けた音楽家。78年に坂本龍一、細野晴臣とともにYMOを結成し、世界的な影響を与えた。83年に散開後もソロ活動を継続し、21枚のオリジナル・アルバムを発表。ドラマー/ボーカリストとしてだけでなく、作詞・作曲・プロデュース、そしてファッションの分野でも活躍。2023年没。
“ポップとは何か”という問いに、高橋幸宏は生涯をかけて答え続けた。文庫化されたこの一冊は、その集大成でもあり、音楽家として、リスナーとしての誠実な軌跡を、未来の読者にも届けるための証でもある。音楽を愛するすべての人に薦めたい、極めて個人的で普遍的な「私的音楽史」だ。