
2025年4月21日、渋谷FOWSにてOrganic Callがワンマンライブ〈OVERLAP〉を開催した。チケット代は無料というリポスト企画の一環として行われたこの公演は、まさにバンドとオーディエンスの「重なり」をテーマにしたような夜だった。
オープニングアクト:ENEMY FLECKが描いた影と光
19時、ライブの幕開けを飾ったのはENEMY FLECK。20分という限られた時間ながら、濃密なエネルギーを空間に充満させた。ギターロックを基調としたシンプルで実直なサウンドと、時折見せる感情のうねりが観客の心をじわじわと掴んでいく。ライブハウスというよりは劇場的な没入感があり、この夜がただの無料企画で終わらないことを予感させるステージだった。

Organic Callの「重なり」が織りなす90分
19時40分、照明が落とされ、jizueの「blink」をSEに静かに始まったOrganic Callのステージ。初っ端の「茜色、空に灯す」から、彼らの音楽が“まっすぐなノリ”を持ちながらも、どこか内省的な情緒を含んでいることが伝わってくる。
「コンビニエンスミュージック」ではダンスビートがフロアを揺らし、「眠れない夜には」ではキラキラとしたサウンドが青春の一瞬を閉じ込める。

中盤の「Night Forever」からASIAN KUNG-FU GENERATIONの「ソラニン」カバー、そして「味方」へと続く流れでは、オーディエンスと音がゆったりと溶け合い、感情が大きな波のように揺らめく。バンドの音像はただ激しいだけでなく、緻密に構成されていて、心の深い場所にまで届いてくる。

アンセムとしての「アワーソング」、そして静かな幕引き
本編終盤、「さよならユートピア」「愛おしき日々たちへ」といった楽曲が重ねられ、会場のボルテージは最高潮に。そして「アワーソング」では、バンドとオーディエンスのコーラスが一体となり、ライブタイトル「OVERLAP」の意味を最も象徴する時間となった。
この日はヒラタがライブ終演後に渋谷XXIにて、集まったファンに向けおよそ20分間の弾き語りを披露。「祈りの唄」や「彗星のよう」など4曲を歌い上げ、この夜にもうひとつの物語を添えた。

音楽が重ねるもの
この日、FOWSとXXIという2つの場所で展開されたOrganic Callのライブは、単なる音楽イベントではなかった。ファンとの関係性、自らのキャリア、そして音と言葉 ── それらすべてが「重なり合って」初めて成立する、かけがえのない時間だった。
この夜が、多くの人にとって“価値ある記憶”として残り続けることは間違いない。


photo:武井 https://x.com/_yuuukiii13?s=21