
声を失った時間は、彼女から音楽を奪うことはできなかった。むしろ、その沈黙の中で生まれた音楽は、以前にも増して深く、美しく響くようになった。アンビエントとフォークの境界を漂い、繊細な音の風景を描き続けるシカゴの音楽家、Gia Margaret(ジア・マーガレット)が、最新アルバム『Singing』を携えて2026年12月に来日する。東京、神戸、京都、福岡の4都市を巡る待望の単独ジャパンツアー。東京公演には、彼女と深い音楽的共鳴を感じさせる青葉市子がスペシャルゲストとして出演する。歌うことの喜び、沈黙が教えてくれた音楽の可能性、そして声が再び響き始めた奇跡。そのすべてを体感する、特別な冬の夜がやってくる。
沈黙を越えて、もう一度「歌う」ということ
2018年のデビューアルバム『There’s Always Glimmer』で、親密な歌声とアコースティックな温もり、電子音楽の繊細なテクスチャーを融合させ、独自の音楽世界を提示したGia Margaret。その音楽には、誰かの部屋にそっと入り込んだような静けさと、言葉にできない感情をすくい取るような優しさが宿っていた。
しかし、その後、彼女は声帯の不調によって数年間にわたり歌うことが困難になる。シンガーソングライターにとって、自分の声を自由に使えなくなること。それは表現の根幹を揺るがす出来事だったに違いない。それでも、彼女は音楽を作ることをやめなかった。
2020年の『Mia Gargaret』、2023年の『Romantic Piano』では、歌声に代わってピアノや電子音、環境音が感情を語り始めた。メロディはより抽象的になり、音と音の間にある余白が、かつて言葉に託していたものを伝えるようになった。
そして2026年4月、Jagjaguwarから発表された最新アルバム『Singing』で、彼女は再び自分の声と向き合う。
2018年以来となるヴォーカル・アルバムは、単なる原点回帰ではない。歌えなかった年月に培われたアンビエントの感覚、音響への深い探究、そしてソングライターとしての表現が結びついた、新たな出発点だ。
かつて当たり前だった「歌う」という行為が、長い沈黙を経て、まったく異なる意味を帯びる。『Singing』というシンプルなタイトルには、そんな彼女の歩みが凝縮されているように思える。
青葉市子との共鳴 ── 東京・淀橋教会で生まれる特別な一夜
今回のジャパンツアーで、とりわけ注目したいのが12月8日(火)の東京公演だ。
会場となるのは、東京・淀橋教会 インマヌエル礼拝堂。そしてスペシャルゲストとして出演するのは、日本を代表する音楽家のひとり、青葉市子である。
興味深いのは、Gia Margaretの最新作『Singing』に「Ambient for Ichiko」という楽曲が収録されていることだ。
青葉市子の名を冠したこの曲の存在は、両者の音楽的なつながりを象徴するものとして、今回の共演をいっそう特別なものにしている。
クラシックギターと幻想的な歌声を軸に、独自の詩的世界を築いてきた青葉市子。2025年にはアルバム『Luminescent Creatures』を発表し、世界80都市以上を巡る大規模なツアーを展開。ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールやシドニー・オペラハウスといった名門会場にも、その音楽を響かせてきた。
一方のGia Margaretも、フォーク、アンビエント、電子音楽を横断しながら、静けさの中に豊かな感情を見出してきた音楽家だ。
ふたりの音楽には、いくつもの共通点がある。
声を単なるメロディの運び手ではなく、ひとつの音響として扱うこと。余白や沈黙に意味を与えること。そして、音楽を通して聴き手の内面に広大な風景を生み出すこと。
東京公演では、それぞれがソロ・パフォーマンスを披露する。礼拝堂という空間の響きの中で、ふたりの音楽はどのような表情を見せるのだろうか。
それは、音量や派手な演出によってではなく、一音の余韻や小さな息遣いによって深い感動が生まれる、そんな一夜になるかもしれない。

音楽が呼吸する場所へ ── 4都市を巡る冬のジャパンツアー
昨年の初来日では、音楽イベント〈EACH STORY〉への出演や単独公演が話題を呼んだGia Margaret。今回のツアーは、その反響を受けて実現する待望の再来日公演となる。
12月8日の東京公演を皮切りに、9日は神戸朝日ホール、10日は京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ、11日は福岡・あいれふホールへ。4日間で4都市を巡り、すべての公演でGia Margaret自身によるソロ・パフォーマンスが予定されている。
最新作『Singing』の楽曲が、レコーディング作品とは異なる生身の響きとして立ち上がる今回のツアー。歌声と楽器、電子音と静寂が、その場の空気と混ざり合う瞬間は、きっと特別なものになるだろう。
Gia Margaretの音楽を聴いていると、音楽とは必ずしも何かを強く主張するためのものではないのだと気づかされる。
ときには、誰かの孤独にそっと寄り添うこと。失われたものの輪郭を静かになぞること。そして、言葉にならない感情を、そのままの形で受け止めること。
歌えなかった時間を経て、再び歌い始めた彼女の音楽には、そんな力がある。
冬の静けさの中で耳を澄ませたい。声を取り戻した音楽家が、いま何を歌おうとしているのかを。

GIA MARGARET JAPAN TOUR 2026 公演情報
東京公演
- 日程:2026年12月8日(火)
- 会場:淀橋教会 インマヌエル礼拝堂
- 開場 18:00/開演 19:00
- 前売:8,000円/当日:9,000円
- 出演:Gia Margaret
- スペシャルゲスト:青葉市子
神戸公演
- 日程:2026年12月9日(水)
- 会場:神戸朝日ホール
- 出演:Gia Margaret
京都公演
- 日程:2026年12月10日(木)
- 会場:京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ
- 出演:Gia Margaret
福岡公演
- 日程:2026年12月11日(金)
- 会場:あいれふホール
- 出演:Gia Margaret
※神戸・京都・福岡公演の開演時間、料金などの詳細は後日発表。
チケット発売:2026年10月15日(木)予定
公演詳細・チケット購入:
https://www.giamargaretjapantour.com/
企画・主催:EACH STORY
関西公演制作:COW AND MOUSE
福岡公演制作:TAPES PRODUCTION
