
ナチスの怪物は、本当に怪物だったのか。それとも、私たちと何ひとつ変わらない人間だったのか ──
第二次世界大戦後、ナチス・ドイツの戦争犯罪を裁いた歴史的なニュルンベルク裁判。その舞台裏で繰り広げられた、ナチス最高幹部と米軍精神科医による危険な心理戦を描く映画『ニュルンベルク裁判』が、2027年1月15日(金)に全国公開される。ラッセル・クロウ、ラミ・マレック、マイケル・シャノンという実力派俳優たちが集結した本作から、緊迫のシーン写真14点が解禁。ジェームズ・ヴァンダービルト監督が語る映画化への思いとともに、人間の内側に潜む「悪」の正体に迫る。
怪物の心を覗き込む ── ナチス最高幹部と精神科医、危険すぎる対話
1945年、第二次世界大戦が終結へと向かうなか、ナチス・ドイツの最高幹部のひとり、ヘルマン・ゲーリングが連合軍に降伏した。アドルフ・ヒトラーの後継者とも目されていたゲーリングは、ナチス政権の中枢に君臨した人物。その男を裁くため、米国のロバート・H・ジャクソン最高裁判事は、戦争犯罪を国際社会の法によって裁く前例のない法廷の実現に奔走する。
こうして歴史に刻まれることになるのが、ニュルンベルク裁判だ。しかし、その巨大な歴史的事件の裏側では、もうひとつの戦いが進行していた。
米軍精神科医ダグラス・ケリーに与えられた任務は、裁判を控えたナチス幹部たちの精神状態を鑑定すること。彼はゲーリングと向き合い、その人格と心理を探ろうとする。だが、相手は単純な「悪人」という言葉では片づけられない人物だった。
圧倒的なカリスマ性、巧みな話術、そして他者を翻弄する狡猾さ。ゲーリングは、精神科医であるケリーをも心理的な駆け引きへと引きずり込んでいく。やがてケリーは、恐るべき可能性に直面する。
想像を絶する残虐行為を実行する人間は、必ずしも異常な精神の持ち主とは限らないのではないか。むしろ、ごく普通の人間が、ある条件のもとでは途方もない悪を成し得るのではないか。本作が突きつけるのは、過去の独裁者を断罪するだけでは終わらない、私たち自身にも向けられた問いなのである。


ラッセル・クロウとラミ・マレック ── 視線ひとつで火花を散らす心理戦
今回解禁されたシーン写真は、そんな本作の緊張感を鮮烈に伝えている。
ラッセル・クロウ演じるゲーリングと、ラミ・マレック演じるケリー。さらにレオ・ウッドール演じるドイツ語通訳ハウイー・トリーストが加わり、三者の思惑が交錯する場面では、わずかな表情や視線の動きからも張り詰めた空気が漂う。
とりわけ興味深いのが、精神鑑定の一場面だ。
ケリーは、インクの染みが何に見えるかを尋ねるロールシャッハテストを通じて、ゲーリングの内面に迫ろうとする。だが、相手の心理を読み解こうとする行為は、同時に自分自身の価値観を試されることにもつながっていく。
法廷の被告人席で悠然と構えるゲーリングの姿も印象的だ。裁かれる立場にありながら、なお周囲を支配しようとするかのような存在感。その不気味な落ち着きは、彼が単なる歴史上の記号ではなく、複雑な人格を持った人間であることを際立たせる。
一方、マイケル・シャノン演じるジャクソン判事は、ナチスの犯罪を法によって裁くという重大な使命を背負う。ケリーとの激しい議論を通じて浮かび上がるのは、正義を実現することの困難さと、歴史的な裁判を成立させるための葛藤だ。
『グラディエーター』のラッセル・クロウ、『ボヘミアン・ラプソディ』のラミ・マレック、そして『ノクターナル・アニマルズ』のマイケル・シャノン。
それぞれに強烈な個性を持つ俳優たちの競演が、歴史劇にとどまらない濃密な人間ドラマを生み出している。


なぜ今、ニュルンベルク裁判なのか ── 監督が語る「歴史を忘れること」の危うさ
監督を務めるのは、『ゾディアック』や『アメイジング・スパイダーマン』の脚本で知られるジェームズ・ヴァンダービルト。
原作は、ジャック・エル=ハイによるノンフィクション『ナチスと精神分析官』(KADOKAWA刊)。ヴァンダービルト監督は、この物語に出会った瞬間、映画化への強い可能性を感じたという。
監督がとりわけ興味を抱いたのは、ニュルンベルク裁判の背後に存在した精神医学的な側面だった。戦争犯罪という巨大な歴史的事件を、ひとりの精神科医とナチス幹部との対話から描く。その視点は、善と悪を単純に二分する従来の歴史劇とは異なるアプローチを可能にする。
だが、監督がこの作品を手がけた理由は、それだけではない。彼の祖父母は第二次世界大戦を経験した世代だった。監督自身は、その時代の出来事を、当事者の記憶が息づく「生きた歴史」として聞きながら育ったという。
しかし、自分の子どもたちに第二次世界大戦について語ろうとすると、そこには大きな隔たりがあることに気づかされた。子どもたちにとって、その戦争はすでに遠い過去の出来事なのだ。時代が移り変わり、戦争を直接知る人々が少なくなっていくなかで、かつての現実は歴史の教科書に記された出来事へと変わっていく。
そして、歴史が単なる知識になったとき、そこにあった人間の葛藤や倫理的な問題までが見失われてしまう危険がある。
ヴァンダービルト監督が描こうとしたのは、過去の事件を再現することだけではない。なぜ人間は残虐な行為に加担するのか。権力や思想は、個人の良心をどこまで変えてしまうのか。そして、同じ過ちを繰り返さないために、私たちは何を記憶し続けなければならないのか。
その問いを、現代の観客に改めて投げかけることこそが、本作の重要なテーマとなっている。


善と悪の境界線は、どこにあるのか
本作の恐ろしさは、ナチスの残虐性を描くことだけにあるのではない。むしろ、そうした行為を可能にした人間の心理が、私たちの日常と完全に切り離されたものではないかもしれないという、不穏な問いにある。悪を「怪物」の仕業として理解することは、ある意味では容易だ。怪物は自分たちとは違う。だから、自分たちが同じことをするはずはない。
しかし、もしその前提が崩れたらどうなるだろう。知性があり、魅力的で、家族を愛し、時にはユーモアさえ見せる人間が、同時に恐るべき犯罪に関与していたとしたら。その矛盾を前にしたとき、私たちは人間という存在をどのように理解すればよいのか。
『ニュルンベルク裁判』は、歴史上の巨悪と向き合う精神科医の姿を通して、そんな根源的な問題へと踏み込んでいく。
法廷で裁かれるのはナチスの戦争犯罪だ。しかし、スクリーンの向こう側から観客に問いかけられるのは、人間の善悪を分ける境界線そのものなのである。第二次世界大戦の終結から80年以上が経過した今、この物語は決して過去だけのものではない。
歴史を知ることは、かつて起きた出来事を記憶するだけではなく、現在を生きる自分自身の内側を見つめ直すことでもある。怪物とは何か。そして、人間とは何か。その答えを簡単には与えてくれないところにこそ、この心理サスペンスの真の恐ろしさがある。


映画『ニュルンベルク裁判』作品情報
2027年1月15日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開
- 監督:ジェームズ・ヴァンダービルト
- 脚本:ジェームズ・ヴァンダービルト、ジャック・エル=ハイ
- 原作:ジャック・エル=ハイ『ナチスと精神分析官』(KADOKAWA刊)
- 出演:ラッセル・クロウ、ラミ・マレック、レオ・ウッドール、リチャード・E・グラント、マイケル・シャノン
- 原題:Nuremberg
- 製作:2025年/アメリカ・ハンガリー
- 上映時間:148分
- 言語:英語・ドイツ語
- 映倫区分:G
- 配給:カルチュア・パブリッシャーズ
公式サイト:https://www.culture-pub.jp/nuremberg-movie/
公式X:@nuremberg_movie
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