
2025年7月4日。ブルックリンの空に花火が上がるたびに、街の犬たちが遠吠えで応えていた。独立記念日の祝祭の中、メイ・シモネスは一人で家に残り、ギターを弾いていた。その孤独は不快ではなかった。犬の遠吠えは助けを求める声ではなく、互いの存在を確かめ合う挨拶のように聞こえた。翌朝、タイトル曲「Howl」の原型が生まれていた。ブルックリンを拠点に活動する日系アメリカ人のギタリスト/シンガーソングライター、メイ・シモネスが、ヴァーヴ/インタースコープ移籍第1弾アルバム『Howl』を2027年1月15日にリリースすることを発表した。
ジャズとボサノヴァとグランジが、ひとつの宇宙に溶け込む
メイの音楽で際立つのは、ジャズ、ボサノヴァ、サンバ、マス・ロックといった要素が別ジャンルとして並置されるのではなく、最初からひとつの世界として存在していることだ。英語と日本語を一曲の中で行き来するバイリンガルなソングライティングも同様で、「その方が自分らしい」という感覚から自然に生まれている。
The New York Timesは「卓越した技術で複数の文化を自在に横断する音楽」と評し、NPR Musicは「これまでに聴いたことのないもの」と称賛。Stereogum、Rolling Stone、The FADERでも”Artist You Need to Know”として紹介されてきたその評価が、今回のヴァーヴ移籍という形で次のステージへと進む。
困難な記憶と、束の間の喜びと、日常の重みを持つ瞬間
2025年のデビューアルバム『Animaru』が自立と愛を祝う作品だったとすれば、『Howl』はその先へ踏み込む。困難な記憶、思いがけない感情を持つ日常の何気ない一瞬 ── 「劇的な転機だけが音楽になるのではなく、日常の中で世界から受け取ったものに、最も自然な言葉で応えていく」というメイのスタンスが、12曲(日本盤はボーナストラック含む13曲)に凝縮されている。
「音楽を作ることはときどき、宇宙に向かって遠吠えをするような感覚になります。でも同時に、音楽は近くにいる人とも遠くにいる人とも私をつないでくれる。この音楽は私自身の”遠吠え”です」 ── メイの言葉がそのまま、このアルバムの核になっている。
「昼はコンビニ店員、夜はギターに取り憑かれた狼男」
「Howl」のMVは東京で撮影され、長年のコラボレーター・新保拓人が監督を務めた。メイが持ち込んだコンセプトは「昼はコンビニ店員、夜はギターに取り憑かれた狼男」 ── そのビジョンを新保が完璧に映像化した。東京の街並みとその奇妙でロマンティックなキャラクターの対比が、楽曲の持つ孤独と解放の両面を鮮やかに映し出す。
ブルース・スプリングスティーンとデヴィッド・ボウイが録音したスタジオで
録音はマンハッタンの歴史的スタジオ、Power Stationで行われた。ブルース・スプリングスティーン、デヴィッド・ボウイ、トニー・ベネットが重要なセッションを行ってきたこの空間で、メイのギターと歌声を軸に、ヴィオラ(ノア・レオン)、ヴァイオリン(クラウディウス・アグリッパ)、ベース(ノーム・タンザー)、ドラム(ランサム・マカファティ)がアンサンブルを形成した。重層的でありながら親密 ── その矛盾する感触がアルバム全体に流れている。
バークリー音楽大学でギターを学び、ジョン・コルトレーンとジョアン・ジルベルトを愛するメイにとって、ヴァーヴとの契約はひとつの原点回帰でもある。FUJI ROCK FESTIVAL ’25 RED MARQUEEに出演し大盛況、翌年の国内6都市ツアーは全公演ソールドアウト ── その勢いは、2027年2月から始まる過去最大規模の北米ツアーへと続いていく。

メイ・シモネス AL『Howl』
2027年1月15日リリース Verve/Interscope
日本盤ボーナストラック「Okinawa Song」収録
