らくがき音楽論 VOL.3:コレサワ

コレサワはシンガーソングライターである。ライブの時以外、メディアでは顔出しをしておらず、MVやCDのジャケット写真、アーティスト写真など、彼女の代わりに姿を見せているのは「れ子ちゃん」というくまのキャラクターだ。

顔を出さずに活動しているのに、なぜかコレサワという人がどんな人なのかは曲を聴いているとなんとなく分かる気がする。恋愛のちょっと面倒くさいところや、誰にも言いたくないような感情まで歌にしてしまうからだ。

彼女の魅力は、なんと言っても「その時ちょうど聴きたい恋愛ソング」を出しているところだと思う。

コレサワは、“その全部”を歌ってくれる

恋は楽しいことばかりじゃない。

片思いをしている時、両思いになった時、恋人と喧嘩した時、嫉妬した時、振られた時。全部同じ「恋愛」なのに、その時々で感情は全然違う。

嬉しい時には嬉しい曲が聴きたいし、失恋した時には思いっきり失恋の曲を聴きたい。逆に、恋人にちょっとイライラしている時には「分かるよ」と一緒に怒ってほしい時もある。

恋愛って、喜怒哀楽が忙しい。

そしてコレサワは、その全部を歌ってくれる。

だから「今の私が聴きたいのはこれ!」という曲が見つかるのだと思う。

そんなコレサワの楽曲の中で、私が好きなのが「元彼女の皆様へ」だ。

「もっと自信持っていいんじゃない?」

「元彼女の皆様へ」は、彼氏の元彼女に向けて歌っている曲である……と言ってしまえばそれまでなのだが、私はこの曲を、自分自身が自信を持って恋愛するための曲だと思っている。

20歳を過ぎると、その人の初めての恋人になることは少ない。自分だって過去に恋愛をしているし、相手だってそうだ。お互い何もかも初めて、なんてことの方が珍しい。前に付き合っていた人がいる。それは当たり前のことなのだ。なのに、なぜかその「前の人」に怯えてしまう。

前の彼女の方が可愛かったらどうしよう。
前の彼女の方が彼のことを分かっていたらどうしよう。
前の彼女との思い出の方が大切だったらどうしよう。

考え始めると止まらない。別に比べる必要なんてないと分かっているのに、勝手に比べて勝手に自信をなくしてしまう。恋愛って、こういうところが面倒くさい。

でも、そんな時に「元彼女の皆様へ」を聴くと、「もっと自信持っていいんじゃない?」と言われているような気持ちになる。過去の人と自分は違う。

前の彼女には前の彼女の良さがあって、自分には自分の良さがある。そもそも、過去の恋愛と今の恋愛は別のものだ。
なんて、頭では分かっている。分かっているけど、やっぱり気になる。

だからこそ、このくらい強気に恋愛できたらいいなと思う。「私の方が好きに決まってる」くらいの気持ちでいられたら、もっと恋愛を楽しめるのかもしれない。

恋愛のそばにいる音楽家なのだ

コレサワの好きなところは、こういう人のちょっと醜い感情も、隠さずに歌ってくれるところだ。

恋愛の曲というと、好きな人と一緒にいられて幸せ、というような綺麗な部分を思い浮かべることも多い。でも実際の恋愛は、嫉妬もするし、不安にもなるし、時には相手を独占したくもなる。そんな感情を「そんなこと思っちゃダメ」と否定するのではなく、「分かるよ」と歌ってくれる。だからコレサワの曲は、恋愛をしている人に刺さるのだと思う。

コレサワはこれからも、恋愛をする人たちのその時々の感情に寄り添う曲を出していくのだろう。片思いをしている人にも、恋人がいる人にも、失恋した人にも。その時の自分にちょうどいい曲を見つけられる。そしてきっと、また恋をしたら聴きたくなる。

コレサワは、そんな恋愛のそばにいる音楽家なのだと思う。

ILLUSTRATION & TEXT: 琉栞

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!