
〈歪んだ協奏 vol.1〉は、もしかしたら今の彼らだからこそ、この形で成⽴したのかもしれない。6⽉1⽇(⽉)、吉祥寺Rock Joint GBにて、東京を中⼼に活動している4ピースボーイズバンド、メルサージと三五正(さんごしょう)による共催企画〈歪んだ協奏 vol.1〉が開催された。ゲストに後輩バンドであるBonsim(ボンシミット)も出演し、同時代を⾛るメンバー全員20歳前後の若⼿3組のバンドが、⼀夜限りのステージを作り上げた。互いを知り、互いを意識しながら⾛り続ける3組が、それぞれの⾳をぶつけ合った夜だった。
Bonsim ── なぜ彼らの⾳楽は、⽴ち⽌まることなく⾛り続けるのか
19:00、始まりの⾳を鳴らしたのはるい(Vo)、ISSA(G)、えーじ(B)、こうじん(Ds)の4人からなるBonsim。るいの「最初から⾶ばすぞ」という掛け声とともにライブがスタートする。
彼らのライブを⾒ていて感じたのは、その圧倒的な推進⼒だ。⾳楽そのものが前へ前へと進んでいく。まるで何かと競争しているかのような切迫感すらあり、その勢いに観客も⾃然と引き込まれていく。

「インフェリオリティ」「⾜枷と共に」では、フロアの熱気も⼀気に⾼まった。Bonsimは感情をそのまま⾳に変換することがうまい。だからこそ演奏から放たれる感情がダイレクトに伝わってくる。
続く“⾔ノ葉にのせて”では、そんな彼らの別の表情も⾒せてくれた。特にISSAのギターは印象的で、イントロが鳴った瞬間に空気が変わる。⾳の⾊が⾒えるような繊細さがあり、その⼀⾳⼀⾳から強いこだわりも感じられた。気づけば観客もまた、彼らの⾳楽へ深く感情移⼊していた。

MCではるいが⾃分たちが今⽇やって欲しいものを「俺たちに求めているのは、ただ俺たちに俺たちもライブをして欲しいんだと思います」と語っていた。「歪んだ協奏vol.1」の幕開けが彼らの⾳楽だったのはきっと必然だろう。Bonsimの⾳楽は、⽴ち⽌まることを知らない。まるで何かを追いかけ、何かから逃れるように⾛り続けている。その姿はどこか競⾛しているようにも思えた。そしてその勢いが、この⽇の始まりに⽕をつけた。

最後に彼らが演奏したのは「試煉」。ここまで前へ前へと⾛り続けてきた彼らの⾳楽は、最後までその勢いを失わない。〈歪んだ協奏vol.1〉の幕開けを担った彼らは、その熱量ごと次のバンドへと繋いでいった。彼らが⾛り出した⾳楽は、やがてこの夜全体を前へ進めていたのだろう。
Photo by ミサ
■Bonsim Set List
1.インフェリオリティ
2.⾜枷と共に
3.フランシュウ
4.⾔ノ葉にのせて
5.⾺⿅らしく
6.追憶、狼煙。
7.Igniter
8.試煉
メルサージ ── 04世代4⼈が⽣み出す、圧倒的な熱量の正体とは
SEとともに登場した、ながい(Vo)、るい(G)、いち(B)、くに(Ds)の4⼈。この⽇のために⽤意されたそのSEからは、このライブにかける彼らの強い思いが伝わってくる。メンバーが姿を現すと、フロアは期待と⾼揚感に包まれた。

1曲⽬「ノイズ」が始まると、膨⼤な熱がステージから放たれる。メルサージのライブを語る上で⽋かせないのが、この圧倒的な熱量だろう。膨⼤なエネルギーが⼀気に押し寄せ、観客を飲み込んでいく。
続く「衝動」では、その熱量がさらに加速する。鋭く鳴り響くサウンドとステージから放たれるエネルギーを浴びながら、メルサージの魅⼒はその若さゆえの鋭さにもあるのだと感じた。今だからこそ⽣み出せる衝動や熱量が、確かにそこには存在していた。しかし、その尖り⽅は決して独りよがりなものではない。るいのギターはメルサージの熱量の先頭を⾛るように鳴り響き、いちは前に出る場⾯と⽀える場⾯を的確に⾏き来する。くにはどっしりと構えながら全員を⽀え、その⼟台を作っていた。



そんな3⼈がいるからこそ、Vo.ながいの歌声は真っ直ぐに響くのだろう。感情をむき出しにしながらもどこか優しさを感じさせるその声には、叫びにも似た切実さがあった。しかしそれはながい⼀⼈が作り出しているものではない。るいのギター、いちのベース、くにのドラム。そのどれが⽋けても、あの歌声はあの形では届かなかっただろう。
「光れ、⼀番眩しく照らせ」 ── メルサージが4⼈で歌う理由
そして Vo.ながいが「僕の始まりの曲」と語り始まった「狼煙」。そして、その後に続く「隣」「⻘の亡霊」「不完全燃焼」と、楽曲が重なるたびに、メルサージがここまで歩んできた時間が少しずつ浮かび上がってくるようだった。どこか痛い。けれど切実だ。そしてポジティブへと⾳によって観客によって変換されていく。MCではながいが、「最近、⾳楽と離れた⽣活を送ってみたけど、⾜りないなと思った。⾳楽が⽋かせないものなんだなって。メルサージをやってきたからそう思えた」と語る。その⾔葉は、この⽇のライブそのものを表しているようだった。彼にとって⾳楽が⽋かせないものになった理由は、⾳楽そのものではなくメルサージだったのだろう。だからこそ彼らの⾳楽からは、上⼿くなりたいとか有名になりたいだけではない、もっと根源的な熱量が伝わってくる。

最後に披露された「NOVA」では、その思いが⼀つの形となって表れていた。曲が始まる頃には、ながいの声に確かな疲労が⾒え始めていた。しかし、それを⽀えるようにメンバー全員で“光れ、⼀番眩しく照らせ”と歌う。その姿は、メルサージというバンドの在り⽅そのものだった。個々が鋭く尖りながらも、全員が同じ⽅向を向いているからこそ⽣まれる⾳。その⼀体感こそが、観客の⼼を打つのだろう。

■メルサージ Set List
- ノイズ
- 衝動
- バンドマン
- モノダンス
- 狼煙
- 隣
- ⻘の亡霊
- 不完全燃焼
- NOVA
三五正 ── なぜ彼らの叫びは苦しいはずなのに希望に聞こえるのか
「三五正、始めます」。その宣⾔とともに始まった「S S」。新井傑(B)のソロから彼らの⾳に⼀気に惹きつけられる。彼らの⾳楽を表すなら、 “叫び”という⾔葉が近いのかもしれない。それは怒りや悲しみだけではなく、若さそのものの叫びだ。そして何より、彼らはその叫びを⼼から楽しんでいるように⾒える。だからこそ観ているこちらまで⾃然と明るい気持ちになるのだろう。

「綻びだす電灯」「嗚咽(仮)」と演奏が続く中で印象的だったのは、その⾳の重みだった。ウスイカズマから紡がれる⾔葉は、彼らが抱える⽣きづらさや葛藤も⾒えてくる。三五正は、それを隠すことなく⾳にして叫んでみせる。しかし、不思議と苦しさだけは感じない。
だからだろうか。ステージの上の4⼈は実に楽しそうだった。フロアへ向かって歌うウスイカズマの背中を囲むように、新井傑と徳留隆太朗(G)が向き合いながら⾳を鳴らし、その中⼼にはふぬ(Ds)の⼒強いビートがある。その光景はどこか印象的だった。フロアへ向かって叫ぶウスイの背中を、3⼈が⾳で押し続けているように⾒えたのだ。 彼らは誰かを無理に引っ張ろうとはしない。ただ誰よりも楽しそうに、誰よりも本気で⾳楽を鳴らしている。その姿はまるで少し先を⾛る背中のようだった。だからこそ観客もまた、その⾳楽について⾏きたくなるのだろう。気づけばフロア全体が、彼らの熱に呼応するように熱を帯びていた。



憧れも焦燥も抱えながら、それでも前へ進むために
最後の曲が始まる前、ウスイは三五正の楽曲についてこう語った。「⾃分たちの曲は後ろ向きなものが多い。でもそういった負の感情を噛み締めて、養分にして、取り込んで、進んでいけたら、いいなと」。その⾔葉を聞いて、三五正の⾳楽がなぜあれほど⼒強く響くのか少し分かった気がした。彼らは負の感情から⽬を背けない。⽣きづらさも葛藤も、そのまま⾳楽に変えていく。しかし、それは⽴ち⽌まるためではなく、前へ進むための叫びなのだろう。
そして始まった「なるようになるままに」。“また嫉妬ばっか、あいつのようになりたくて”“今はまだ夢の旅路途中で 思い出してくれ 今 いやまた何処かで” ── 同じ世代を⾛るBonsim、メルサージ、の⾳楽を聴いた後だからこそ、その歌詞は強く胸に
響く。互いの⾳楽を知り、互いの成⻑を⾒てきたからこそ⽣まれる憧れや焦燥。その感情は決して綺麗なものだけではない。それでも彼らは⾳楽を鳴らし続ける。だからこそ、この歌詞はこの曲は⼆組へのエールであり、感謝であり、そして⾃分たち⾃⾝への宣⾔のようにも聞こえた。

■三五正 Set List
- SS
- 綻び出す電灯
- 嗚咽(仮)
- HERO
- 東京郊外
- 損
- なるようになるままに
「年⽼いて物忘れが増えても、この景⾊を思い出したい」
三五正は、アンコールでメルサージの「バンドマン」をカバーした。演奏が始まると、ウスイはメルサージとBonsimのメンバーを呼び込む。次々とステージに現れる出演者たち。その光景は、この⽇の⼤団円は、特別なものだった。彼らが⾒ている景⾊は、どのようなものなのだろう。
「年⽼いて物忘れが増えても、この景⾊を思い出したい」
その歌詞を全⼒で歌う彼らを⾒ながら、そんなことを考えていた。ふとフロアへ⽬を向ける。拳を突き上げながら⾶び跳ねる⼈。満⾯の笑顔でステージを⾒つめる⼈。涙をこらえながら歌声に⽿を傾ける⼈。それぞれが違う思いを抱えながら、ライブハウスにいる誰もが同じ時間を共有している。その共有された時間は、まさにこのライブのタイトルから今⽇⼀⽇の伏線回収のようだった。しかし、この⼤団円は終わりではない。彼らが次の景⾊へ向かうための通過点なのだ。“彼らがこれからどんな景⾊を⾒せてくれるのか”、そんな期待を抱かせる⼀夜だった。
Photo by Shin

