
コロンビア出身でベルリンを拠点に活動する実験音楽家ルクレシア・ダルト が、ニューアルバム『A Danger to Ourselves』を9月5日に〈RVNG Intl.〉よりリリースする。共同プロデューサーにデヴィッド・シルヴィアン を迎え、フアナ・モリーナやカミラ・マンドーキら豪華ゲストも参加した本作から、最後の先行シングル「no death no danger」がミュージックビデオとともに公開された。
幽玄な夜を刻む「no death no danger」
「no death no danger」は、ダルトが語りかけるように歌うヴァースと、エリアナ・ジョイによるコーラスが交差する楽曲である。盟友アレックス・ラザロのパーカッションとサイラス・キャンベルのベースが生み出すグルーヴに支えられ、オーヴァードライブされたスライドギターと幽玄な叫びが渦を巻く。アメリカ南西部の暗い夜を音で描いたかのような、濃密なサウンドスケープが展開されている。
楽曲はジャン・コクトーの映画『オルフェウス』やメデューサの神話から着想を得ており、「自分のイメージの背後にあるポータルを越える緊張感」を表現。「涙は落ちない ── それは上昇する」という逆説的な感覚がテーマに据えられている。トニー・ロウが監督したMVでは、ダルトとラザロが抽象的なパフォーマンスを披露し、リズミカルな映像とゴーストのような編集が曲世界を補強している。
『¡Ay!』に続く新たな傑作
前作『¡Ay!』(2022)は英『The Wire』年間ベスト1位に選出され、MUSIC MAGAZINE誌でも高く評価された。続く本作『A Danger to Ourselves』は、ツアー中の生活や新たな人間関係から生まれた断片的なテキストを音楽へと結晶化させた作品である。ラザロによるダイナミックなドラムループを基盤に、重層的なヴォーカルと緻密なプロダクションが折り重なり、詩的かつ親密なサウンドが構築されている。
アルバムにはシルヴィアンが共同プロデュースと楽器演奏で参加するほか、フアナ・モリーナ、カミラ・マンドーキ、エリアナ・ジョイらも参加。タイトル曲「cosa rara」ではシルヴィアンとの共作が実現し、人生の儚さと愛の揺らぎを象徴する一曲となっている。

リリース情報
Lucrecia Dalt『A Danger to Ourselves』
- 発売日:2025年9月5日
- レーベル:PLANCHA / RVNG Intl.
- 形態:CD / Digital
- 日本盤:ボーナストラック2曲収録、解説(野田努/ele-king)、歌詞・対訳付き
- 価格:2,200円+税
先行シングル
「no death no danger」配信中
🎧 配信リンク
デヴィッド・シルヴィアンをはじめ多彩なゲストを迎えた『A Danger to Ourselves』は、ルクレシア・ダルトのこれまでの探究を集約しつつ、新たな出発点を告げるアルバムである。感情と音の深淵を行き来するこの作品は、エクスペリメンタル・ポップの地平をさらに切り拓くことになるだろう。