
現代アンビエント〜エクスペリメンタル・シーンの中核を担うアーティスト M. Sage(マシュー・セイジ) が、9月26日に名門〈RVNG Intl.〉よりリリースするニュー・アルバム『Tender / Wading』から先行シングル「Wading the Plain」を公開した。クラリネットとピアノが高い草むらを切り裂くように響く本楽曲は、本人曰く「ポスト・インターネット時代の住人のための牧歌的アンセム」であり、アルバムのハイライトとなる1曲である。
自然と家庭生活から生まれた音楽
M. Sageはアメリカ・コロラドを拠点とするミュージシャン/インターメディア・アーティストであり、即興アンビエント・ジャズ・カルテット Fuubutsushi(風物詩) のメンバーとしても活動する。新作『Tender / Wading』は、シカゴでの10年間を経て故郷に戻り、家族と共に数エーカーの荒地を耕作する生活から生まれた作品である。
前作『Paradise Crick』(2023)に見られた人工的な音世界とは対照的に、本作は自然と共に暮らす日常、家庭生活の変化、土地との関わりを通して紡がれている。ピアノとクラリネットを軸に、ギター、モジュラーシンセ、パーカッション、フィールド・レコーディングが折り重なり、生命力と静謐さを併せ持つ音楽を描き出す。
「Wading the Plain」と映像作品
今回公開された「Wading the Plain」のMVは、M. Sage自身が監督。本人は「これは光をスコップ代わりに用いた発掘作業のようなもの」と語り、オブジェクト指向存在論(object-oriented ontology)を基盤に、物と物との関係性を映像詩として描いた。
映像と音楽を横断するSageのアプローチは、単なる楽曲にとどまらず、哲学的な問いかけを内包するインターメディア作品となっている。
アルバム『Tender / Wading』について
『Tender / Wading』は日本盤CDとしてもリリースされ、ボーナストラック3曲を収録予定。1910年製のアップライトピアノから生まれた楽曲群は、牧歌的フォーク・コスミッシェや瞑想的なエレクトロ・アコースティック・バーン・ジャズと呼ぶべき独自の音楽世界を形成している。
本人は「草むしりをしながらヘッドフォンで聴きたい音楽を作っただけ」と語るが、そこにはパーソナルな日常の記録であると同時に、普遍的な詩情が宿っている。
リリース情報
シングル
M. Sage「Wading the Plain」
配信中(PLANCHA / RVNG Intl.)

アルバム
M. Sage『Tender / Wading』
2025年9月26日リリース(PLANCHA / RVNG Intl. / ARTPL-239)
価格:2,200円+税(CD、日本独自盤/解説付/ボーナストラック3曲収録)

自然と哲学、家庭と音楽制作が交差するM. Sageの最新作は、21世紀のアンビエント/エクスペリメンタルの到達点を示すものとなるであろう。