
1978年に100枚のみプレスされ、友人に配られたことで知られるスウェーデンの激レア盤、ロジャー・エクマン『Ångest』が、BBE Musicより2025年9月26日にリイシューされる。フォーマットは2枚組LPとデジタル配信での発売となる。
医療制度への苦悩を音楽に昇華した異色作
『Ångest』(スウェーデン語で「不安」)は、ロジャー・エクマンが自国の医療制度に対する葛藤をテーマに制作したアルバムである。ラテン、ジャズ、フォーク、ソウル、サンバ、カントリーといった多彩な要素を織り交ぜ、ストックホルムのアドルフ・フレドリクス音楽学校の生徒たちとライブ録音されたユニークな作品である。驚くべきことに、このグループはエクマンが同校で用務員をしていた際に結成されたものであり、その経緯自体が異色の物語となっている。
伝説的な初回プレスと再発の経緯
オリジナル盤は既存のジャケットを裏返し、アルバム名とアーティスト名を手作業でスタンプした自家製スリーブ仕様で流通。その中にはABBA『Arrival』の裏返しスリーブを利用したものまで存在したという。今回の再発は、エクマン本人とOpus 3共同設立者でサウンド・エンジニアのヤン=エリック・パーソンが全面協力。オリジナルのオーディオファイルを基にリマスターし、名門The Carveryで新たにカッティングが施された。
また収録曲「Motivationen Måste Vara Stor」は、今年2月にBBE Musicからリリースされたコンピレーション『Folk Funk & Trippy Troubadours Vol.3』(監修:Paul Hillery)に収録され、すでに評価を集めている。
リリース情報
アーティスト:Roger Ekman
タイトル:Ångest
レーベル:BBE Music
発売日:2025年9月26日
フォーマット:2LP/デジタル配信
Tracklist
- SIDE A: Väntan / Du Är Frisk “Det Är Bara Dina Nerver” / Besök Hos En Allmänpraktiserande Läkare / Jag Vill Veta Var Jag Står
- SIDE B: Sökandet / Motivationen Måste Vara Stor / Mina Drömmars Land / Mina Ögon Börjar Se
ジャズをベースにしながらも、フォークやソウルを横断しスウェーデンの社会的文脈を刻んだ『Ångest』。半世紀の時を経て再び世に放たれるこの作品は、北欧音楽史の隠れた金字塔として改めて光を放つであろう。