
1973年にごく少量のみプレスされ、中古市場では常に高額で取引されてきた幻のソウル・アルバム、The McCrary『Emerge』が、BBE Musicから2025年10月17日に正式リイシューされることが決定した。フォーマットはLP、CD、配信の3形態で登場する。
ゴスペルから世俗音楽へ──McCrary家の転機を刻んだ一枚
The McCrary(ザ・マクラリー)は、オハイオ州ヤングスタウン出身のファミリー・グループである。もともとゴスペルを歌っていた彼らは1970年にロサンゼルスへ移住し、世俗音楽へと舵を切る。その転機を刻んだのが、ビバリーヒルズの小さなレーベル〈Cats Eye〉から発表された本作『Emerge』であった。
内容は、ジャジーで洗練されたR&B(「Matter of Time」)から、硬質なファンク(「Kung Fu」)までを行き来し、「Be A Father To Your Son」や「People Run On Love」には、時代を超えるメッセージが込められている。ラストにはキャロル・キング「You’ve Got A Friend」のカヴァーも収録され、アルバムを温かな余韻で締めくくる。
プログレッシブ・ソウルからネオ・ソウルへ
当時“プログレッシブ・ソウル”と評された本作は、のちに“ネオ・ソウル”と呼ばれる潮流を先取りしていたと再評価されている。今回のリイシューは、マクラリー家から正式ライセンスを受け、ロンドンの名門The Carveryがリマスタリングを担当。半世紀以上の時を経て、ついに広く届けられることとなった。
オリジナル盤は中古市場で常に4桁ドルで取引されるレア盤として知られており、今回の再発はソウル/ファンク・ファン、コレクターにとって待望のニュースである。
The McCrary、その後の足跡
マクラリー家はその後も、スティーヴィー・ワンダーの「You」やチャカ・カーンによる「Any Old Sunday」のヒットで注目を集め、〈Portrait〉から『Loving Is Living』(1978)、『On The Other Side』(1979)、〈Capitol〉から『Just For You』(1980)、『All Night Music』(1982)といったアルバムを発表。スタジオ・コーラス・ユニットとしても数多くのセッションに参加し、アメリカ音楽史に確かな足跡を残した。
リリース情報
アーティスト:The McCrary
タイトル:Emerge
レーベル:BBE Music
発売日:2025年10月17日
フォーマット:LP/CD/配信
TRACKLIST
- SIDE A: Emerge / Kung Fu / If It’s Difficult / Matter of Time / People Run On Love
- SIDE B: Be A Father To Your Son / Distance, Ain’t No Problem Baby / To Be Understood / Even If The World / You’ve Got A Friend
ゴスペルの土壌から生まれ、ソウルとファンクを横断しながら未来の音楽を予見した『Emerge』。再発盤を通じて、多くのリスナーがこの“失われた名盤”と出会うことになるだろう。