[音楽と〇〇]音楽と酒でミラクルを起こす── なの小夕子、BAR天国からの挑戦

VETHELの特集企画「音楽と〇〇」は、音楽と寄り添うさまざまなサブカルチャーとの交わりを探るインタビューシリーズ。〇〇はアートやゲーム、漫画、映画、ガジェット、建築、グルメ、旅行、乗り物、スポーツ、アウトドア……など何でもあり。音楽とその界隈の関係を語っていただきます。今回のゲストは?

DTMシンガーソングライターとして活動しながら、西八王子に“オカルト”をテーマにしたバー「天国」を構えるなの小夕子。ライブやレコーディングで訪れる予定調和を超えた「音楽のミラクル」と、バーで偶然の出会いを生む「酒のミラクル」。その二つを往復しながら、彼女は自らの世界を拡張してきた。周波数を用いた音響実験、日替わりで変化するカクテル「あなたの秘密」、そして移転を控えさらに進化するBAR天国──音と酒が交差する空間で、彼女は人々を物語の登場人物へと誘う。音楽天国の建設を夢見る彼女の言葉は、私たちの身体と心を震わせる。

なの小夕子:作詞、作編曲、ビジュアル、振り付け等をセルフプロデュースで行うシンガーソングライター。ゴミ箱生まれ、押入れ育ち、
音楽で地上に天国を建設すべく奮闘中。<好き>素粒子、ヒッグス粒子、宗教学、哲学、夢、宇宙、陰謀論、人間
その独自の感性と経験から選びぬいた言葉を、美しいメロディーと囁き叫ぶ歌とラップを絶妙なバランスでグルーブさせ、リスナーの心を強く揺さぶる。
感情に強く訴えるライブは、各方面からの評価も高く、着実に熱狂的なファンを増やしている。
 

飲みすぎて気持ち悪さを通り越して“ゾーン”に入る瞬間がある

VETHEL 音楽とお酒、それぞれ“天国”のような瞬間とはどんなときですか?

なの小夕子 お酒を飲んでいるときに、飲みすぎて気持ち悪さを通り越して“ゾーン”に入る瞬間があるんです。音楽のときと同じように。ライブやレコーディングで予定調和ではない“ミラクル”が起きるときがあって、それがものすごく気持ちいい。お酒も似ています。バーで偶然10年ぶりの友人に再会したり、思いがけない人と出会えたりする。そのとき、酒が持つ“引き寄せる力”を強く感じますね。

VETHEL BAR天国の“オカルト”テーマは、音楽制作に影響していますか?

なの小夕子 実はなの小夕子の作品とは別に、周波数を用いた音楽をYouTubeで配信しています。そこから得た経験でBAR天国のBGMも特定の周波数に調律して作っています。店内で流していると、「落ち着く」とか「クセになる」と言ってくださる方が多い。店の雰囲気作りに大きな役割を果たしていると思います。どの活動でも全ては干渉し合ってる思いますよ。

天国を現実に建設する

VETHEL オリジナルカクテル「天国」「地獄」「あなたの秘密」をそれぞれ音に例えると?

なの小夕子 「天国」はサイン波のような響き。「地獄」はピンクノイズですね。混沌の中の安らぎを感じて欲しいです。
「あなたの秘密」は日によって変わります。お客様のその日の気分に合わせて作るので、常に違う物になるんです。

VETHEL 店で流れるBGMと、ご自身のDTM作品は別物ですか?

なの小夕子 基本的には違います。ただ、私の使っている音色は共通しているので、両方を聴くと「あれ、この音、なの小夕子の曲にあったかも?」と思うことはあるかもしれません。探してみてください。

VETHEL 名義“なの小夕子”として曲を作るとき、コンセプトは?

なの小夕子 アルバムごとにテーマを変えています。例えば『東京アンダーグラウンド』は、東京に生きる人々の日常や葛藤を描きました。バンドサウンドもあれば、デジタルサウンドもある。その曲、その歌詞に相応しいアレンジをしているので曲によってかなり色が違うと思います。活動の根底には「天国を現実に建設する」という思いがあります。

音楽がその場を“映画”のように変えてくれる

VETHEL 普段聴く音楽はどんなジャンルですか?

なの小夕子 ソルフェジオ、イメージ系の音楽、ローファイヒップホップ、クラシックなど。最近はDEFRICというトラックメーカーの曲を良く聴きます。正直ポップスや歌謡曲など幅広く聴きますが、パチ屋やスナックなどで耳に入って酔ったときに歌いたくなる曲をストックしているだけですね(ガハハ)。

VETHEL 「音と酒が交差する瞬間」はどんな場面ですか?

なの小夕子 バーのカウンターで誰かと飲んでいて、ふとした沈黙が訪れるとき。音楽がその場を“映画”のように変えてくれるんです。登場人物になったような感覚があって、すごく楽しい。あとは思い出の曲が突然流れた瞬間も最高ですね。

VETHEL 「酒の力で完成した音」はありますか?

なの小夕子 ありますね。シラフでは出ない発想が、お酒の勢いで生まれることがある。翌日二日酔いで聴き返すと「すごいものを作ったな」と驚くことも(ガハハ)。逆に音楽がカクテルのインスピレーションになることもあります。音の配分とお酒の配合は、どこか似ていますから。余談ですが二日酔いの時は反省分のように歌詞を良く書きます(ガハ)。

周波数は人を狂わせたり、人を良くしたりする効果があると思う

VETHEL オカルト本や都市伝説が多く置かれているBARで、お酒と一緒に語り合いたい“音楽にまつわる都市伝説”はありますか?

なの小夕子 
インストとか周波数の話が好きで……そういうのを探ってたときに『ジョン・レノンを殺した凶気の調律A=440Hz』っていう謎の本を見つけて、これが面白かったですね。周波数って本当に人を狂わせたり、人を良くしたりする効果があると思うので、私はそれを信じてます。 なので音楽で音楽天国を建設したい言ってます(ガハハ)。

VETHEL 移転後のBAR天国はどのように変わりますか?

なの小夕子 今後はDJセットも導入して、音楽好きやDJをやってみたい人が気軽に参加できる店にしたいです。元々ギターなども置いてあるのでゲリラで音楽が発生する場所にしたいです。フードも出すようになるのと、お酒の種類も増やして、より“音と酒の融合”を体験できる空間にしていきます。

VETHEL 理想の酔い方で聴きたい曲と、そのお供にしたいお酒は?

なの小夕子 『新世紀エヴァンゲリオン』旧劇場版の挿入歌「Komm, süsser Tod甘き死よ、来たれ」を少し酔った状態で聴きたいですね。人は毎日死んで生まれ変わっていると思っていて、その曲は立ち返りたい瞬間に合うんです。お酒なら、私の好きなブラックアブサンの銘柄“ペールケルマン”のロックを選びます。

なの小夕子

BAR天国

なの小夕子 イベント情報

Interview & Text : VETHEL
Photo:キャノンオーイシ

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!