究極のミニマリズム ── ピノ・パラディーノ&ブレイク・ミルズ、4年ぶりの新作『That Wasn’t A Dream』リリース

現代のポピュラー・ミュージック界において、ベースとギターという楽器の可能性を極限まで押し広げてきた2人の巨匠が帰ってきた。ベーシストのピノ・パラディーノとギタリスト/プロデューサーのブレイク・ミルズによるデュオが、8月22日に待望の第2作目『That Wasn’t A Dream』をNew Deal / Impulse! Recordsからリリースする。

音楽界の革新者たちが紡ぐ新たな化学反応

グラミー賞受賞者であるピノ・パラディーノは、ディアンジェロ、ナイン・インチ・ネイルズ、エリカ・バドゥ、ジョン・メイヤーなど錚々たるアーティストとの共演を通じて、現代ポピュラー・ミュージックにおけるベースの概念を根本から変革してきた人物である。一方のブレイク・ミルズもまたグラミー賞受賞者であり、2度のプロデューサー・オブ・ザ・イヤーにノミネートされた経歴を持つ。アラバマ・シェイクス、ボブ・ディラン、フィオナ・アップル、パフューム・ジーニアスとの共演で知られる彼は、今日最も人気の高いプロデューサー兼マルチ・インストゥルメンタリストの一人として君臨している。

2021年のデビュー作『Notes With Attachments』について、Pitchfork誌は「リード・パフォーマーなど存在しない世界を想像する、最高のコラボレーターたちのサウンド」と絶賛した。そして今作『That Wasn’t A Dream』では、2人はさらなる高みへと到達している。

空間を中心に据えた音楽的実験

今作の制作は、2018年からミルズが指揮を執る伝説的なサウンド・シティ・スタジオのスタジオAで、2ヶ月間にわたって行われた。注目すべきは、前作『Notes With Attachments』全曲で演奏し、今作のほぼ全てのトラックの仕上げを担当したサム・ゲンデルの参加である。

前作が「幾重にも重なる自発性から一体感を生み出す」ことを目指した作品だとすれば、『That Wasn’t a Dream』は「抑制を通して一貫性を見出そうとする」アプローチを取っている。パラディーノは制作過程をこう振り返る。「一部の楽曲は和声的に密度の高いアイデアから始まり、後に最も基本的な要素まで簡素化された。本当に、もし最小限の要素で何かを機能させることができれば、空間が中心となることが明らかになった」

革新的な楽器が生み出す新たなサウンド

アルバムの楽曲「What Is Wrong With You?」では、ミルズが開発した新しい楽器が重要な役割を果たしている。それは、サスティナー内蔵のフレットレス・バリトン・ギターのプロトタイプだ。ミルズは2021年に弦楽器製作者のダンカン・プライスと協力してこのギターを開発し、ジョニ・ミッチェルとのライヴ・パフォーマンスでも使用している。

「フレットレス・サスティナーは、木管楽器、金管楽器、そして擦弦楽器を合わせたようなサウンドを生み出します。コントロールしたり定義したりするのが難しい楽器なんです」とミルズは語る。この定義しがたいサウンドとミニマリズムへの遊び心あるアプローチが、約3年後に完成することになるアルバム全体の雰囲気を決定づけたのである。

破壊的でありながら美しい音楽体験

完成した『That Wasn’t A Dream』に収録された音楽は、一見親密な雰囲気から美しくも無秩序な音楽へと変化していく。じっくりと聴くほどに味わい深い音楽である。破壊的でありながら自然主義的で、意図を持って混沌を操り、その過程で常に新たな美の形を解き明かしていく。

現在、先行シングルとして「Taka」と「Contour」が配信リリースされており、その革新的なサウンドの一端を垣間見ることができる。全7曲を収録した本作は、2人の並外れたミュージシャンによる新たな意志表明となっている。

リリース情報

『That Wasn’t A Dream』

2025年8月22日リリース

New Deal / Impulse! Records

収録曲

  1. Contour
  2. I Laugh In The Mouth Of The Lion
  3. Somnambulista
  4. Taka
  5. What Is Wrong With You?
  6. Heat Sink
  7. That Was A Dream

ピノ・パラディーノ&ブレイク・ミルズ 公式サイト:

https://pinopalladinoblakemills.komi.io

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