テープループは記憶を織り直す ── BlankFor.ms、人生を刻む新作ALを日本独自CD化

インスタグラムで約10万人のフォロワーを集めるテープループの魔術師、BlankFor.msことタイラー・ギルモアが、〈Leaving Records〉よりニュー・アルバム『After The Town Was Swept Away』を9月5日にリリースする。それに先駆け、ボーナストラック2曲を追加した日本独自仕様のCD化が決定した。国内盤は〈PLANCHA〉よりリリースされる予定である。

本作は、彼の持ち味であるエレガントかつ精緻なエディット・スキルを惜しみなく注ぎ込みつつ、個人的な体験が深く反映された作品となっている。第一子の誕生と母親の死という、人生を大きく揺るがす出来事を経て制作された今作は、悲しみと希望、崩壊と再構築といった対極の感情が、繊細なビートと揺らめくループによって語られている。

アルバム制作の中核には、BlankFor.msの長年の関心であるジャズ、ハウス、ドラムンベースがある。それらの音楽的背景が、明確なスタイルというよりもむしろ情緒のレイヤーとして作品全体に滲み出ている。特にリードシングル「Formed By The Slide」は、静かに持続するオフビートのヴォーカルループに、ノイズ混じりのビートが重なり、まるで過去と対話するような深い情感を宿している。

このアルバムに収録された12曲 ── そして日本盤にはボーナストラックが2曲追加される予定 ── は、すべてがテープループによる編集と演奏によって構築されており、音そのものが「記憶の断片」であるかのように鳴り響く。その循環と劣化は、まさに人生そのもののメタファーである。

特筆すべきは、ヨガスタジオ「Kinship」での即興演奏から生まれた三部作「Kinship I〜III」であろう。このセッションでは実験音楽家CollobohやヨガインストラクターMeg Shoemakerとの共演が実現しており、音楽がコミュニティと深く結びつく形で機能している様子がうかがえる。また、ジャズドラマーのMarcus GilmoreやピアニストJason Moranなどの影響も随所に見られ、BlankFor.msが他者との交感を通じてリズムを紡いでいることがよくわかる。

テープループは、過去を保存しながらも常に更新し続ける ── その不思議な特性を体現した『After The Town Was Swept Away』は、BlankFor.msにとっての“生の記録”であると同時に、私たちリスナーにとっての“記憶の再編成装置”となるであろう。

現在、リードシングル「Formed By The Slide」が各種プラットフォームにて先行配信中。繊細に構築された音像を、ぜひ体感していただきたい。

リリース情報

アーティスト名:BlankFor.ms
アルバム名:After The Town Was Swept Away
レーベル:PLANCHA / Leaving Records
フォーマット:CD(日本独自仕様) / Digital
発売日:2025年9月5日
価格:2,200円(税別)
※ボーナストラック2曲収録予定
※解説付き予定

  1. Never Left
  2. A Fleet Of Celebrants
  3. Crail Family Post Office
  4. Kinship I
  5. To Survive The Flood
  6. Unfurled Atop The Peak
  7. Formed By The Slide
  8. Kinship II
  9. After The Town Was Swept Away
  10. Colter
  11. Ferried Across
  12. Kinship III
    +ボーナストラック2曲

関連リンク

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!