邪悪なTOPSが解き放つ、グルーヴと哀愁の未来派ポップ ──『Bury the Key』から「Annihilation」公開

カナダ・モントリオール発、インディー・ポップ/ソフト・ロック・バンドTOPSが、通算5作目となる新作アルバム『Bury the Key』を2025年8月22日にリリースする。発売に先駆けて、先行シングル第4弾となる「Annihilation」がMVとともに公開された。

この「Annihilation」は、バンドの新境地を象徴するようなグルーヴィなナンバーである。激しく刻まれるハイハット、四つ打ちのリズム、そしてきらびやかに揺れるフレーズ群が、かつての甘美なTOPS像を鮮やかに裏切る。「未来を恐れるのは簡単だけど、結局は何も終わらない。ただ自分の心を信じて進むしかない」とバンドは語る。坂本龍一やシネイド・オコナーといった文化的偉人たちの死に触発され、「Annihilation」にはYMOの「Behind The Mask」へのオマージュが織り込まれている。

アルバム『Bury the Key』は、TOPSがGhostly Internationalと契約後初のフル・アルバムであり、Jane Penny(ヴォーカル)、David Carriere(ギター)、Marta Cikojevic(キーボード)、Riley Fleck(ドラム)による現在の4人編成で制作された。テーマは、封印してきた感情、自己破壊、快楽主義、そして幸福。セルフ・プロデュースによる楽曲群は、親密な人間関係や薬物使用、終末的な不安といった個人的かつ普遍的な主題を浮き彫りにする。

過去に「甘く」「ナイーヴ」とも形容されたTOPSであるが、本作ではよりダークでエッジィなトーンに挑戦。Janeは「今回は“邪悪なTOPS”として、私たちのまわりにある現実世界を音楽で表現したかった」と語る。1970年代の税務署を思わせるスタジオでの制作風景の中で、さまざまなキャラクターが創造され、楽曲に物語性が注入されていった。

アルバムには、遊び心と切なさが交錯するアップテンポ曲「ICU2」、失われた愛と化学物質が交差するバラード「Chlorine」、Davidのハードコア愛がにじむ「Falling on my Sword」など、感情の起伏を巧みに捉えた全12曲を収録。とりわけ「Annihilation」では、Rileyがドラム主導で曲を構築し、ダンス・ビートと内省的な歌詞を融合。TOPSがこれまでにない方法で自らのサウンドを塗り替えようとしている姿が明確に浮かび上がる。

Jane Pennyのヴォーカルは、Men I TrustやClairoといった現代のアーティストたちにも通じる繊細かつ力強い表現力を持ち、聴く者の心に静かに染み入る。プロデューサーでありギタリストのDavid Carriereは、ソロ・プロジェクトでも評価されるフックメイカーとして、アルバム全体に精緻な音像を与えている。Marci名義でも活動するMarta Cikojevicのキーボードは、彩り豊かで浮遊感あるレイヤーを加え、TOPSサウンドの新たな地平を切り拓いた。

『Bury the Key』は、時代を超えて聴き継がれる普遍性と、変化を恐れぬ実験精神が同居する作品である。退廃と救済、快楽と痛み、そのすべてをグルーヴに包んで、TOPSはまた新たな扉を開けてみせた。

リリース情報

TOPS – Bury the Key
Label:PLANCHA / Ghostly International
Format:CD(解説・歌詞・対訳付き)
Cat#:ARTPL-240
Release:2025年8月22日
Price:2,200円+税(予定)

トラックリスト

  1. Stars Come After You
  2. Wheels at Night
  3. ICU2
  4. Outstanding in the Rain
  5. Annihilation
  6. Falling on my Sword
  7. Call You Back
  8. Chlorine
  9. Mean Streak
  10. Your Ride
  11. Standing at the Edge of Fire
  12. Paper House

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

  • URLをコピーしました!