2025年7月4日(金)、渋谷のFOWSで開催されるイベント〈GOLD RUSH 80’s〉 ── J-POPのルーツは全部ここにあった。80年代サウンドが刺さる理由を紐解いていこう。

〈GOLD RUSH 80’〉が「今」おもしろい理由
テーマは、その名の通り「80年代」。松田聖子、中森明菜、チェッカーズ、竹内まりや、THE ALFEE……日本の音楽史に残る数々の名曲が、令和を生きるシンガーたちの手によってステージでよみがえる。一見、懐メロイベントに思われがちだが、実際にはもっと現代的で刺激的なコンセプトが根底にある。
過去を“再現”するのではなく、未来に“アップデート”するライブ
出演するのはSNS世代で支持を集める3人のシンガー「まなこ」「maho」「KaI」。彼らは80年代の音楽を“そのままカバー”するのではなく、令和の感覚・声・センスを通して再構築していく。それを支えるバンド陣も、原田喧太・IKUO・Nosukeといった、実力・実績ともに一線級のミュージシャンばかりだ。
つまりこのイベントは、過去を再現するショーではない。“今の耳で聴ける”80sを、リアルなライブで体感できる貴重な場になる。
なぜ今、80年代が“面白い”のか
SpotifyやYouTube、TikTokの音源トレンドが示すように、80年代サウンドは今や「親世代の音楽」ではなく、10〜20代の“新鮮なカルチャー”としてリスナーの支持を集めている。その現象の背後には、明確な音楽的・文化的理由がある。
竹内まりや – プラスティック・ラブ (feat.山下達郎)
藤井風 – プラスティック・ラブ(cover)
まず、2020年代に入ってから続くシティポップ再評価の流れがある。竹内まりやや大貫妙子、山下達郎などが世界的に再評価され、それに呼応するように、現代のアーティストもサウンドやアレンジで80年代を引用しはじめた。YOASOBIやAimer、Vaundy、藤井風などの楽曲にも、昭和歌謡〜バブル期J-POPを感じさせる要素が散見される。
当時の楽曲は今と比べて構成が複雑で、コード進行やメロディラインにも意外性が多い。打ち込みが主流になる前の“人間が演奏していたJ-POP”には、計算されすぎていない揺らぎや勢いがあり、それが逆に今の耳に新鮮に映る。
チェッカーズ – 星屑のステージ
KaI cover – ショートフィルム「星屑のステージ」
松任谷由実や中森明菜、チェッカーズといったポップアイコンたちは、大衆に向けたヒット曲でありながら、音楽的には大胆な挑戦をしていた。メロウなバラードと攻めたブラスアレンジ、ドラマティックな転調やリズムチェンジ。今のトラックメイキングとは別の文法で、「曲の中に物語を持たせる」という文化が根付いていた。
だからこそ、80年代の曲は今聴いても古びない。むしろ、「こんな曲がTVで毎週流れていたのか」と驚かされることも多い。それは決して“過去の栄光”ではない。SpotifyやTikTokの世代が「新しく感じる音楽」として自然に惹かれているという事実が、80年代の音楽がいかに“枯れていない”かを物語っている。
「あの頃を知っている人」と「知らない世代」の共通言語へ
80年代の音楽に触れたことがある人にとって、このイベントは“懐かしさ”だけで終わらない。昔よく聴いていた曲が、今のシンガーやバンドによってどう鳴らされるのか。それを体験できるのは、ある意味すごく贅沢なことだ。自分の記憶にあるあのメロディが、まったく違う質感で目の前に現れる。そのギャップに驚いたり、ちょっとニヤッとしたり。音楽を通じて、時間を飛び越えるような感覚になる。
そして逆に、80年代を知らない若い世代にとっては、すべてが“新しい体験”になる。TikTokやプレイリストで何気なく聴いていたサウンドの元ネタが、ライブでリアルに鳴っている。リズムもメロディも、思ったより自由で濃くて、むしろ今っぽく聴こえるかもしれない。そうして「あ、これって昔の曲なんだ」と知った時、音楽との距離が一気に近くなる。
つまりこのイベントは、「知ってる人」にとっても「初めての人」にとっても、それぞれの楽しみ方ができる場所だ。そして何より、“同じ曲で一緒に盛り上がれる”って、実はすごいことだと思う。世代が違っても、立場が違っても、音楽っていう共通言語があればつながれる。その感覚を、〈GOLD RUSH 80〉はちゃんと体験させてくれる。

80年代を知らない世代にこそ、刺さる夜がある。
「80年代って親世代の音楽でしょ?」って思った人ほど、〈GOLD RUSH 80〉に来てみてほしい。このイベントは、ただの懐メロカバーじゃない。昭和の名曲たちが、令和を生きるシンガーたちの声とセンスによってアップデートされて、今の音として鳴り響く。
当時を知っている人には新しい“聴き直し”を。初めて出会う人には、“こんな音楽があったのか”という驚きを。世代や経験を問わず、誰でもまっさらな気持ちで楽しめるのがこの一夜。
コードやメロディにクセがあるのに、耳にすっと馴染む。テンション高めなのに、どこか人間くさくて温かい。そんな80年代の楽曲が、最強のバンドと今を生きる声で“再構築”される。
この夜をただのカバーライブと思っていたら、きっともったいない。むしろ「初めて聴くのに、懐かしい」そんな不思議な感覚を、体で味わえるライブになるはずだ。