［レポート］スヤァ伝説、始まる。 ── Suupeas 1stワンマンライブ〈SING寝具SING〉＠渋谷WWW

2025年6月12日

2025年6月8日（日）、渋谷WWWにてお昼寝系ガールズ音楽ユニット・Suupeasの記念すべき1stワンマンライブ〈SING寝具SING〜スヤァ伝説の始まり〜〉が開催された。

ボカロPによるボカロックを軸に、ふわふわ・ゆるゆるな2人の個性が炸裂する“お昼寝系”サウンド ── そんな未だ誰も定義しきれていない独自の世界観を武器に、TikTokなどで着実にファンを増やしてきた彼女たちが、ついに渋谷の地にその「伝説の始まり」を高らかに宣言した。

“いんとろだくしょんく”から爆睡モード全開

オープニングは「いんとろだくしょんくOHAYHOU＞」。朝なのか夜なのか、夢の中なのかすら曖昧な導入に、観客の表情もほんわかと緩んでいく。まるで眠りと目覚めのはざまを音で表現するようなスローテンポな立ち上がりから、「°Cりいむ°Core」では一転して、甘くてとろけるようなエレクトロポップでグルーヴが急上昇。会場のテンションは早くも高まりを見せた。

そして「あともうちょっとだけねんねさせて！」「しーぴんすりーぴん」といった、まさにSuupeasの代名詞とも言える“お昼寝モード”な楽曲たちが連続投入されると、WWWの空間全体がベッドルームに変わったような錯覚すら覚える。

睡眠と覚醒、夢と現実の交錯

中盤で披露された「睡眠地下潜（もぐ）どってん！！釈明」は、Suupeasらしいキテレツな言葉遊びと展開の妙が光るナンバー。どこまでがギャグでどこからが本気なのか、リスナーの判断を軽々と裏切るような構成は、“現実逃避系ハイテンション夢オチソング”と言えよう。

このタイミングで挟まれた「はるぽん DJ TIME」では、ゆるゆるのはずのSuupeasが一瞬だけ“攻め”の表情を見せる。一度音が止まってしまったのはご愛嬌 ── 低音の効いたビートで観客を踊らせた後、再びふわりと夢の中へ引き戻すように「君の知らない物語（Cover）」へ。アニメ・カルチャーとも接続するこの選曲は、Suupeasのルーツと未来を象徴するような存在感を放っていた。

後半の「アイム・ノット・プリンセス」では、少し早めの４つ打ちビートにひなぷの歌唱が真っ直ぐに響く。声優・プロ雀士としての顔も持つ彼女の発声は、どこかアニメ的なデフォルメを含みながら、確かにリアルな感情を伝えてくる。この曲でSuupeasは、“かわいいだけじゃない”を軽やかに体現してみせた。続く「ナイトメラ」「ヘッチャカ」と、混沌とした夢のような楽曲たちが畳みかけられ、ラストの「あうとろだくしょんくOYASUMI＞」で、物語はいったん幕を閉じる。

アンコール：ラブシックな目覚め、そして再び夢へ

鳴り止まない拍手に応えて登場したアンコールでは、「わたしのラブシック」を披露。Suupeasの中でも屈指の“切なさ成分”を持つこの曲で、彼女たちはただの“ゆるふわ”ではない、確かな物語性と情感を提示する。そして最後にもう一度「しーぴんすりーぴん」。始まりと終わりがゆるやかに循環するこのセトリ構成には、“夢の中の夢”のようなSuupeasらしさが凝縮されていた。

2人の足取りは、決して堅実ではないかもしれない。でもその不完全さこそが、Suupeasというユニットの最大の魅力だ。迷いながら、笑いながら、寝ながら、でも確実に前に進んでいく。そんな2人の姿に、観客は“絶対的幸福感”を確かに受け取ったはずだ。「スヤァ伝説」は、まだ始まったばかり。Suupeasの夢は、きっとこれからもっと大きく、そして柔らかく膨らんでいく ── (˘ω˘)ｽﾔｧ