鈴木常吉の名盤『ぜいご』が初アナログ化 ── 悲しみを見つめ続けた男の結晶、180g重量盤2LPで甦る

2006年に発表された鈴木常吉のソロアルバム『ぜいご』が、待望の初アナログ化を果たす。180g重量盤2LP仕様、完全限定生産にて2025年6月2日より発売開始される。

本作には、NETFLIXでも配信され国内外で人気を博したドラマ『深夜食堂』のオープニング曲・挿入歌「思ひで」を収録。鈴木常吉という一人の表現者が、自らの人生を丸ごと注ぎ込んだ作品として、長らく語り継がれてきた。

その音楽は、ただ「悲しい」の一言で括れるものではない。人生の裂け目から染み出すような静けさ、断絶、そして祈り。女々しさは微塵もないが、ビリー・ホリデイ『暗い日曜日』を想起させるような、魂に直接触れる凄みがある。ライナーノーツを寄せた三上寛は「これはツネさんの人生論であり、死者を弔う方法であり、自らの骨を削ぎ落とすようにして並べられた作品」と評している。

プロデュースを手がけたのは、クラリネットやサックスでも参加している中尾勘二。共演には、チューバやリコーダーを担当した関島岳郎が名を連ねる。ミニマルかつ素朴な編成で紡がれる音は、過剰な装飾を廃しながらも、情感と詩情に満ちている。

また近年では、グラミー賞常連で2023年にピューリッツァー賞音楽部門を受賞したリアノン・ギデンズが、ライブでこの「思ひで」を日本語でカバー。ビヨンセ『Cowboy Carter』にも参加した彼女がこの曲に共鳴した事実が、鈴木常吉の音楽が持つ普遍性と深みを改めて浮かび上がらせている。

鈴木常吉という人物

1954年、東京都足立区生まれ。80年代にはセメントミキサーズにボーカル/ギターとして参加し、TBS「イカ天」で注目を浴びた。1990年にはブレイヴ・コンボのカール・フィンチをプロデューサーに迎え、アルバム『笑う身体』でメジャーデビュー。その後は「つれれこ社中」やソロとして、どこかに取り残された人々の声を代弁するような音楽を静かに作り続けた。2020年逝去。死後なお、その表現はじわじわと広がり続けている。

トラックリスト

DISC1 SIDE A

  1. 疫病の神/2. アイオー夜曲/3. くぬぎ/4. アカヒゲ

DISC1 SIDE B
5. サマータイム/6. ワーリーブルース/7. 目が覚めた/8. 石

DISC2 SIDE C
9. 薮/10. ミノ君/11. 煙草のめのめ/12. 父のワルツ

DISC2 SIDE D
13. 思ひで/14. お茶碗

仕様:180g重量黒盤2LP/税込価格:6,600円
発売元:VINYL BUG/しゃぼん玉レコード
販売元:東洋化成ディストリビューション(東洋化成株式会社)


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悲しみの意味を知りたければ、このレコードを聴いてほしい。静かなる叫びが、深い夜のなかで耳を澄ませる者の心に、きっと届くだろう。

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