
2022年作『¡Ay!』が英The Wire誌年間ベスト1位を獲得、国内でも『ミュージック・マガジン』のロック部門(ヨーロッパほか)にて年間ベストに選出されるなど、国際的評価を決定づけたコロンビア出身の音楽家、ルクレシア・ダルト。その最新アルバム『A Danger to Ourselves』が、RVNG Intl.より9月5日にリリースされることが発表された。日本盤にはボーナストラックの追加収録も予定されている。
本作の共同プロデューサーとして名を連ねるのは、元JAPANのデヴィッド・シルヴィアン。1曲でのゲスト・ヴォーカル参加も果たしており、現代音楽/ポスト・ポップの文脈を超えた特異なコラボレーションが実現している。また、フアナ・モリーナやカミラ・マンドーキといったアーティストたちも参加し、ダルトのキャリアにおける集大成であり、新たな旅の始まりを告げる意欲作となっている。
先行公開されたファースト・シングル「divina」は、スタッカートのピアノ、フィンガースナップ、そしてカスケード状のギターが絡み合うサウンド・コレオグラフィー。スペイン語と英語が交錯するドゥーワップ風の異形ラブソングは、まるで割れた鏡のように意味が揺れ、反射し、流動する。ミュージック・ビデオの監督は、サウスウェスト出身の映像作家トニー・ロウ。ルクレシア自身がコンセプトを手がけ、マルチディシプリナリー・アーティストLucia Maher-Tatarとともに出演している。
『A Danger to Ourselves』は、彼女が『¡Ay!』のツアー中に綴った日記や断片的な詩をもとに制作されたという。2024年初頭から本格的に作曲が開始され、アレックス・ラザーロによるダイナミックなドラム・ループの上に、複雑に構築されたベース・ラインとダルト特有の重層的なヴォーカルが編み込まれていった。結果として完成した本作は、従来の物語性やコンセプトを排し、より内省的で感情に即した音楽として結晶している。
アルバム・タイトル『A Danger to Ourselves』は、デヴィッド・シルヴィアンの詩句「cosa rara(奇妙なもの)」から着想を得たという。人生の儚さや愛の揺らぎ、奇跡への憧れを描き出し、静かながらもスリリングな音の探求が全編を貫いている。スペイン語と英語が自在に行き交い、アコースティックな質感と電子処理、ストリングスやコラージュ的な打楽器が織りなす音響は、まさに彼女の芸術的ビジョンの最前線を体現している。
参加ミュージシャン陣にも注目だ。シルヴィアンは共同プロデューサーとして全編に関与しつつ、「a danger to ourselves」では自らヴォーカルも担当。フアナ・モリーナは「the common reader」で共作と演奏を、カミラ・マンドーキは「caes」にヴォーカルで参加。加えて、サイラス・キャンベル(ベース)、エリアナ・ジョイ(バッキング・ヴォーカル/ストリングス・アレンジ)など、国際色豊かな才能がダルトのヴィジョンを音にするために結集している。
音楽そのものに向き合い、直感と詩的本能のもとで構築された『A Danger to Ourselves』。それは、コンセプトや物語を超えた、響きの純粋な探求であり、ルクレシア・ダルトというアーティストがたどり着いた現在地である。

リリース情報:
Lucrecia Dalt『A Danger to Ourselves』
発売日:2025年9月5日
レーベル:PLANCHA / RVNG Intl.
フォーマット:CD / デジタル
品番:ARTPL-238
価格:2,200円+税
※日本盤特典:ボーナストラック収録、解説・歌詞・対訳付き
先行シングル:
Lucrecia Dalt「divina」
視聴リンク:https://orcd.co/ar7rq3r
監督:Tony Lowe
出演:Lucrecia Dalt, Lucia Maher-Tatar