2025年5月17日、土曜の午後。都会の喧騒の中にぽっかりと現れた“昭和の幻影”──渋谷XXIにて開催された縁日イベントは、あいにくの雨にもかかわらず、多くの来場者でにぎわっていた。
XXIといえば、クラブイベントやアート展示など多様なカルチャーを横断してきた渋谷のニューベニュー。そんなXXIが今回打ち出したのは、焼きそばやチョコバナナ、ミルク煎餅、そしてスマートボールや射的といった、いわば“平成以前の記憶”を辿るようなラインナップ。屋内型ながらも、屋台のテントを模した装飾や、昭和歌謡が小さく流れるスピーカーの音が、来場者をノスタルジックな世界へと誘っていた。XXIの公式では、
というメッセージが発信されており、その通り、どこか“近所の夏祭り”を思わせる気安さと空気感が、空間全体に漂っていた。焼きそばの湯気とともに立ち上るソースの香り、色とりどりのチョコバナナに群がる子どもたち（いや、子どものようにはしゃぐ大人たちと言った方が正確だろう）、そしてスマートボールに熱中する若者たち……それぞれの風景に、日常からほんの少しだけズレた“異空間”が浮かび上がる。
「クラブやライブではない、でも“今”を感じさせるイベント」として、今回の縁日は確かな手応えを感じさせ、XXIの屋内には湿度と熱気、そして笑顔が満ちていた。「雨の日でもお祭りはできる」。そう思わせてくれる、文化と遊び心に満ちた1日であった。
